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映画「花束みたいな恋をした」鑑賞記録(2021/2/8)

今日の劇場は平日であるにもかかわらず、かなり混んでいた。この作品の菅田将暉・有村架純両主演への期待が大きいことを物語っているようであった。

ただいま「引っ越し貧乏」のただ中にいる私にとっても、身銭を切った甲斐があったと思わせてくれた。以前「私をくいとめて」を観に行った際の予告編からして、おおまかなストーリーの予想はついていたのだが、やはりそれだけで満足するのは損である。まだ観ていないという方は劇場に足を運んでほしい

今日は上映開始ギリギリにチケットを購入し、前から2列目の席を映画館のスタッフさんに押さえてもらった。いざ、シアターに入ってみると、なぜか隣におじさんが座っていた。「密です!」「ソーシャルディスタンス!」と叫びたくなるほど状況がつかめなかったのだが、どうやらおじさんは席を間違えていたのだろう。スッと隣の席に移っていった。上映開始前から違った意味で胸がドキドキしたのであった。

いやいや、そんなことはどうでも良い。この映画に対する感想を、つらつらと書き留めるのが本筋である。

タイトルにある通り、この物語は「恋」をテーマとしている。そして、予告編をご覧になった方にはご理解いただけると思うが、これは二人の「恋」の物語として完結する。

なぜ、結局二人は結ばれなかったのかといえば、それは、ありふれた「すれ違い」からである。二人は大学卒業直後、フリーターとなり、二人の時間を最優先にしたが、結局は就職をする。先立つものがあってこそ、二人で豊かな時間を過ごすことができると思ったからであるし、現実の厳しさを思い知ったからでもある。

でも、当初思っていたように事はうまく運ばない。山音麦(菅田将暉)は、物流会社の営業部に配属となり、日夜仕事に時間を費やし、二人で一緒に過ごす時間は二の次となった。かつての麦と八谷絹(有村架純)であれば、そんな「すれ違い」などあり得なかった楽しい時間を共有し、そうでなくとも、何をしていても、一緒にいるだけでも十分であった。でも、切なくも、人は変わっていく。本人は変わっていないと思うかもしれないが、多分それは自覚がないだけで、いろいろな理由でいつの間にか変わってしまう。

絹は、どこかでそうなることを予見していたのだろうか。彼女は二人の関係が最高潮であった頃から、自分たちの結末に対して、微かに必然性を感じていたようである。

絹はずっと思っていた。恋とは、いわば「パーティー」なのだ、と。熱狂の真っ只中にいるときには目を背けたくなるが、パーティーはいつか必ず終わる。永遠に続くパーティーなどない

ただ、わたしたちのパーティーは今最高の盛り上がりの中で始まったというだけだ。(江森康之撮影「『花束みたいな恋をした』オフィシャルフォトブック」リトルモア、2021年)

どれだけの恋が結ばれて、また散ってゆくのか。散ってゆく方がずっと多いだろう。絹は、散ってゆくことに対する覚悟を持ちつづけていたのかもしれない。逆に、麦にはそれがなかったのだろうと思う。

主語の大きなジェンダーバイアスだといわれるかもしれないが、男は夢見がちであり、楽観主義であることがままある。本当は「愛」なんて育みようがないのに、自分を飾り立て、虚勢を張る。「ただ一緒にいたい」が叶わないとわかっているのに、それができると思い込んでしまう。ああ、こうやって振り返ってみると、「恋」ってただただ切ないばかりだなあ

おセンチになりすぎないように、横道にそれよう。この作品のツッコミどころを2つ挙げてみることにしよう。

1つ目は、「学生にしては、麦の家広すぎる(豪華)だろ!」ということである(映画やドラマでは結構あるあるかもしれない)。二人は都心ではないものの、東京・飛田給駅が最寄りである。ワンルームさえ6.5万円が相場だというから、おそらくそれよりもずいぶん広い部屋に住んでいる彼らは学生にしてはかなり豪華なところにすんでいる。二人が同棲をしていた部屋については、調布駅から徒歩30分というハンディがあったが、けっこう良い間取りをしている。ああいうところに住もうと思ったらどれくらいかかるんだろうか。

2つ目は、「また出たな、古川琴音!」である。今や売れっ子女優として知られる彼女なのだから、それくらい登場頻度が高くても当たり前なのかもしれないが、それにしてもよく見かける。「女の敵は女」でいうところの「敵」の役がよく似合っており、最近は、テレビドラマでいうと、「凪のお暇」、映画でいうと「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」「蒲田前奏曲」「泣く子はいねぇが」などに出演している(これらの作品については鑑賞済)。朝ドラの「エール」にも出ていたらしい(途中で観るのをリタイアしたので、出演したシーンを実際には観ていない)。

劇場を出た後、1年ぶりくらいに入ったスターバックスで、この記事を書いている。外は寒かったが、作品の余韻に浸っていると、そんなことはどうでも良くなってしまう。

あっ、最後に。大友良英の音楽、最高だった(朝ドラ「あまちゃん」で一躍有名となった)。


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