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現代人にとって、何かしらの信仰対象はあるのではと私は思います。
勿論、文字通りの伝統宗教に帰属している方や新しいタイプの系統に通じる方もおられるでしょう。または自然主義的なアニミズムに惹かれる方、さらには伝説的、カリスマ的存在感を放つアイテム等に傾倒、挙げるとそれなりな該当対象は幾つかあるハズだと思われます。
そこで「親」を上げる方、もはや現代では少数シェアかもしれませんが、こちらも選択肢にあり得ます。
例えば、私の母にとっての信仰対象は伝統宗教ではなく、母の母、間違いなく祖母だったと今更ながら実感するのです。絶対的存在という対象に他ならない、これは信仰に置き換えても可能だと捉えられます。

今年は祖母が亡くなって13回忌の法要が営まれたらしく、静岡ということもあり静かに僅かな近親者で済ませたと聞きました。

絶えず威勢の良い母も祖母への愛に溢れ、祖母も谷崎潤一郎の『細雪』みたく4姉妹の娘の中で2番目の母には一際愛情を注いでいたと生前、よく祖母の口から聞いた事があります。そうした関係性も手伝い祖母の言う事に母は心服していたのです。

現在、齢82歳の母の良く言えば天真爛漫、逆に言えば傍若無人な性格も、祖母の生前時から基本的には変わらないにせよ、祖母が母の性格をたしなめると大人しく聴いていた姿はある意味、絵になる光景だったように思い起こされます。

私のプロレス好きのきっかけは間違いなく祖母の影響に依る処です。忘れもしない昭和54年の夏でした。小学校の夏休み時期は必ず母は私と弟を連れて静岡の実家で過ごす事をルーティンとしていました。
当時私は小学3年生、いわゆるテレビっ子でしたが、他の家庭もそうだと思うのですが、勉強を理由に自由にテレビ視聴させてもらえませんでした。

そんな折、祖母の家での団欒でワールドプロレスリングの特番が流れていました。恐らくその時の原体験が初期衝動に繋がったのだと思います。カードも鮮明に記憶しています。上田馬之助対ストロング小林でした。上田馬之助が凶器攻撃と額への噛みつきでストロング小林が大流血の試合でした。子供時分の私にはある意味、何だか分からずながらも観たくなってしまう引力を画面から感じていたのです。
そんな私の後ろで、祖母も楽しんでいました。
「こんなもの、子供に見せなさんな」と嫌悪感丸出しの母に「いいじゃない」の一言で引き下がらせる祖母に母がそれ以上何も言えないまま、結局メインイベントのタッグマッチ、アントニオ猪木・長州力組対タイガージェットシン・バッドニュースアレン組まで観てしまいました。大荒れの内容でシンが大暴れで長州が失神して担架で運ばれたり、猪木がアレンのヌンチャクで首を絞められたりと、試合結果の記憶はないのですが、かなりの強烈な印象を私に焼き付けた初プロレステレビ体験でした。
つまり、祖母はプロレス番組が大好きで孫にも許していたのでしょう。
その後私は自然と猪木ファンへと遂げていきます。

東京で映画プロデューサー業務にあった頃、実家の特定郵便局を和彦に絶対継承させなさいと強く祖母は母に指示していたと、就任後父から聞きました。
何だかんだ、私のエポックに祖母の存在が垣間見えて、母は祖母の言う通りに事を進めると…まだまだ思い起こせばいろいろあると思います。
冒頭の信仰という言葉はやや大仰ではありますが、母にとって祖母が絶対的な存在であったことは周囲へも影響を与えている点で実証されているとも言えます。

信じるもの、そうした対象がある方が、人のいきがいを大いに支えて助けていく…それは確かなことだと思います。
自分自身にとっての信じるものを改めて少し考えてみることもいいかもしれませんね。

深夜帰宅時にふと帰り道を照らす月の光。
不思議と心癒されます。



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