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33年、遅刻魔をやってきた訳ですが


遅刻はダメだと思っているのだが……


「駄目だと思ってるのに遅刻してしまうのか、それとも遅刻してもいいと思ってるのか、どっちなの?」

9年前の会社員時代。会社がタイムカードを集計した結果「最も遅刻が多い社員」という不名誉な称号を得てしまった私を前に、いつも時間に正確な上司はまっこと理解不能であるという顔をしながらそう尋ねてきた。

私はその真っ直ぐな疑問に対して直視することもままならず、「…いや……遅刻しちゃ駄目だと思ってるんです……本当に……」だなんて、目線をずらしながら答えた。それは心からの本音であったし、けれども私はひどい遅刻魔であった。

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まったくもってお恥ずかしい話なのだけれど、私の遅刻癖は筋金入りである。

服を着るにも朝ごはんを食べるにもモタモタしがちで、幼稚園の頃からしょっちゅう集団登校の集合時間に間に合わず、5人分の朝ごはんを作り終えた母がヒィヒィ言いながらチャリをこいで末娘の私を幼稚園まで運んでいた。

(なぜモタモタしているのかというと、まず夜更ししすぎて朝起きれない。さらになにを思ったのかパンツを5枚重ねて履いて、母を笑わせようと仕込んでいたりするのだ。ネタを仕込む前にはやく朝ごはんを食べろよな)

小学校でも、中学校でも、高校でも遅刻癖はなおらず、大学の時は必修だった1限体育の単位を遅刻ゆえに1回生で落とし、2回生でも落とし、3,4回生でも落とし、最終的には5回生でなんとかギリギリ取得、無事卒業した。(いや留年してるやないかという話はさて置き)


大学は通学に2時間弱かかる上にバスが30分に1本しか来なかったとか、会社員時代は毎日夜中25時まで働いていてとにかく眠かったとか、工事中の小田急線下北沢駅がダンジョンすぎてスムーズに進めなかったとか、致死量の満員電車ゆえに乗車できなかったとか、今日こそ間に合うと思ったらオフィスビルのエレベーターがちっとも来ないだとか、言い訳はあれこれ出てくるのだけど、同じ条件でも無遅刻無欠席の人は存在した。私が悪いのだ。

なぜ遅刻するのかって、まず愚かなことにこういう人間は自分の「最短最速」を常に信じている。

忘れ物はせず、信号は全て青。コンビニでは1分で買い物が済み、電車は時間通りに来て、乗り換えもスムーズ。短距離走選手よろしく100メートルを数秒で駆け抜け、エレベーターのボタンを押せばすぐに開き目的階まで一直線……という「最短最速だと23分でいけた」みたいな成功体験だけを都合よく覚えているので、10時出社であれば9時37分に家を出る。その場合、9時20分までスヌーズを無視しながら爆睡している。

実際のところはもちろん、スマホを忘れ、赤信号で止まり、コンビニのレジは長蛇の列で、電車は遅延、エレベーターはすぐ来ないし、来たと思えば各階に停まる。あと、私は足がめちゃくちゃ遅い。


無論周囲に迷惑を掛けるので、申し訳なくなるわ、社会的信頼を失うわで、もう自分で自分のことが嫌になる。が、何度心を入れ替えてもなおらない。もうこれはどうしようもないんですわ……欠陥人間ですわ……世間との関わりを断って生きていきますわ……と諦めていたのだけれど、最近これがかなり是正されてきている。33年の遅刻魔人生に終止符が打たれようとしているのだ(大袈裟かよ)。

その背景には生活ルーティンの徹底があるのだけれど、これがマジで普通のことすぎて「当たり前のことすぎて参考にもならへんわ」という方が9割9分を占める気がする。日本人ってとっても時間に正確で有名ですし。けど、残り1%の愛すべき遅刻魔仲間のためにも、そして今後の自分を律するためにも、今日はそのあたりを書いておこうかなと……。


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先月、デジタルデトックスを始めました……というのを書いたけれど、それがなんと1ヶ月以上続いている。「3週間続ければ一生が変わる」という本まであるらしいので、これはいよいよ人生が変わったのかもしれない。知らんけど。

先述の生活改善から1ヶ月、我がルーティンは割と確立されてきており、まず夜はこんな感じ。

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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。