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【映画鑑賞記録】若きイラクの監督作品「Baghdad on Fire」を観て

ある初秋の土曜日、イラクの若きドキュメンタリー映画監督Karrar Al-Azzawiの「Baghdad on Fire」を観に、インディペンデント系の映画館へ行く。
時は2019年10月のイラク。場所はバグダッドのTahrir広場である。
2003年にアメリカに侵入され、フセイン政権が倒れた後、民主主義、自由と平和について戦う若者たちで混とんとするイラク。19歳から25歳の若者たちが集まる広場で、負傷者たちを助ける医療チームに属していた19歳のTibaという勇敢な女性が、この映画の主人公である。

ポスター: Baghdad on Fire

彼女は、主に男性たちが前線で戦う中、傷ついた者たちを勇気づけ、怪我の手当てをし、チームの他の2人の男性と同等の立場で意見を交わし、危険に侵され、必要があれば一定の期間自ら身を隠し、そうでなければ死を覚悟で、平和と平等のために戦っている。
映画を撮った監督もこの若者たちと同世代のため、映画自身が作り込まれることなく、飽くまでも前線で戦う一因の視点で録られているところが好感だった。作り込まれていないからこそ逆に、画像の粗さや繋ぎが気になる箇所もあったが、逆にそれが、私たちの多くにとって未知のイラクという国のありのままを知る機会になったように思う。

映画の後半で、Tibaと一緒に医療チームで活躍していたYousifが撃たれて死亡する。まるで主導者を失ったかのような周りの若者たちの悲嘆の姿や、埋葬のシーン、そして亡くなった若者たちの写真がずらりと並んだ合同墓地のような集会所は、あたかもAuschwitzの一部のようであった。

Tibaは現在、歯科衛生士の学校に通っているそうだ。自ら先頭に立って戦うことはやめても、人を助ける仕事に就きたい気持ちは変わらないのだろう。

コロナ禍を除き今もなお、イラクでは若者たちが平和と平等、自由を求めて血を流した戦いを続けているという。そしてその姿を世界の多くの人々に知ってもらうために、この映画をノルウェー以外でも配給してもらうべく、彼はイタリアでのドキュメンタリー映画祭に参加した。イタリアのどこかの配給会社に彼の意気込みが伝わり、近いうちに全土の映画館で放映されればよい、と個人的には応援している。
日本でももし、関心があり、是非放映権を、という配給会社の方がいらっしゃれば、下のリンクに彼のコンタクト先があるので、連絡してみてほしい。

※監督のHP

※監督のInstagram
https://www.instagram.com/alazzawikarrar/


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