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学歴に潜む生きづらさ

今日は神経発達症(ASD/ADHD)の方のWAIS(ウェイス:知能検査)に関して、最近続けて見かけたとある共通点についてお伝えしていこうと思います。

※WAISは発達障害かどうかが分かる検査ではありません。検査の詳しい内容については過去の記事にも書かせていただきましたので、ご存知ない方はそちらも良ければご覧ください。
※事例紹介は個人が特定されないよう、主旨がずれない範囲で情報を変更、限定させていただきます。

とある30代のAさん。これまでに数えきれないくらいの職を転々とし、同じ職場で仕事が1年以上続いた試しがなく、携帯電話や財布を何度も紛失しているような方。

WAISを受けてもらうと、VC(言語理解)95、WM(ワーキングメモリ)87、PS(処理速度)66との結果でした。VCは低くはないものの、単語の意味を伝える際には妙に細かい独特の言い回しがみられたり、検査を受ける際にはツンツンした態度でため息をつきながら受けていました(実は診断にあたって検査の数値自体よりも、こういった検査時の様子の方が大事だったりもします)。

神経発達症の方、特にASDの方にPSが低い傾向が出た、というのは以前の記事(論文紹介〜1800人のASD/ADHDの方のWAISの結果を分析し出てきたとある傾向)でも書かせていただきました(あくまで一つの分析結果です)。

今回ご紹介したAさん、偏差値60ちょっとの高校を卒業し、大学にも進学し専門職を転々としているのですが、実は今回のWAISの総合的なIQが81と境界知能(IQ70〜84)の範囲で出たのです。

結果を私なりに解釈してみると、VCやPR(知覚推理)がある程度高くても、例えば神経発達症の方でPSやWMが落ち込んでいるような方だと、総合的なIQも低く出るため、大学を卒業したような方でも境界知能域に出てしまうことがあるのです。

Aさんの場合、診察した印象でも神経発達症の特性はかなりはっきりしている方で、上述のとおりVCとPSには30近い大きな開き(ディスクレパンシー)があり、生きづらさを感じているのも頷けるような方でした。

また以前の記事でご紹介した方(大人の発達障害グレーゾーンと境界知能の併存例)も短大を出られていますが、やはりPSが他と比べて低く、総合的なIQは80代前半と境界知能域でした。

今回ご紹介したお二方のように、高校の普通学級や短大、大学を卒業されているような方の中にも、
潜在的に境界知能の方がいること、またこれは憶測ですが学校の勉強とWAISとではまた違った物差しで得意不得意を見ているのかもしれません。

また今回ご紹介した例とは逆に、WISCでは140近いIQでも、学校の成績は普通、というお子さんもいました。(やはりWMとPSが凹でした。神経発達症のお子さん達は成長がゆっくりなのかもしれません。)

おわりに。繰り返しになりますが、WAISに関してはあくまで一つの指標に過ぎませんWAISの結果で診断がどうのということはなく自分自身のことをよく知るきっかけにしていただき、それを普段の生活や仕事に活かしていただければ、と思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。






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