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精神科医は何を考えて薬を処方しているのか



こんにちは、精神科医のはぐりんです。精神科医のリアルな日常とホンネをお届けしています。

今回は薬についてです。私自身、薬があまり好きではないほうなのですが、それでも

「薬を飲む必要のある方(症状が良くなる方)が一定数いる」と言えます。

一体精神科医がどういったことを考えながら薬を処方しているのか、書いていきたいと思います。


何を考えて薬の量を調整しているのか


まずお伝えしたいのは、ほとんどの精神科医は

「患者さんはできれば薬を飲みたくないと思っている」
ということを認識しながら薬を出しているということです。

そういった前提で

①「できれば薬は出したくない、出すにしても最小限にしたい」
②「症状が良くなるよう十分な量の薬を飲んでほしい」

、というジレンマに陥るのです。

それぞれの長所は、

① 副作用が少なくて済む
② 症状再燃のリスクが低く、入院などを回避できる

短所はその逆、

① 症状再燃のリスクが高いこと、
② 薬による副作用が出やすいこと、

私は①寄りですが、薬を減らして症状が悪くなり、残念ながら入院になってしまった方をこれまでにたくさん見てきました。一方で薬を減らしても症状が再燃することなく経過している方もいます。

そういった経験値を蓄積することで

「この患者さんは薬が減らせそうだな」、とか
「この患者さんは薬を減らしたら悪くなりそうだな」、あるいは
「そもそもこの患者さんに薬って必要なの?徐々に減らしてやめられそうじゃない?」

といったことを判断し、薬を調整しているのです。

そもそも薬とは?


そもそも薬(医療用医薬品)はどのようにして世に出てきているのでしょうか?

薬が世に出るためには、三段階におよぶ厳しい治験を経て、効果と安全性が確認される必要があります。私も市販前の薬の治験に携わったことがありますが、(主に安全性の面で)ものすごく細かい取り決めが多岐に渡って定められています。

また、そうした厳しい治験をパスして実際に患者さんに処方されるようになった後も、市販後調査と言って実際に患者さんに処方された後の副作用を追跡して調査する期間が半年間義務付けられています。

また日本の薬は、すでに海外で流通している薬を後追いで販売するケースが多いです。海外では10年以上前から処方されているような薬が、ようやく日本でも処方できるようになる、といった具合です。その理由の一つとして、日本の治験が海外に比べ、厳しく綿密だからです。

東洋人と西欧人とで体質的に効果や副作用も違ったりもしますが、ある程度海外で安全に流通している薬で、かつ日本の厳しい治験を通った薬を、私たち医師は処方しているのです。

ただ尚それでも、特に初めてその薬を出す際には、おそらく皆さんが思っている以上に色々なことに気を配りながら薬を処方しています。

薬を飲むかどうかは患者さん自身が決める


私たち医師が何を考えて薬を処方しているのか、医療用医薬品がどのように流通しているのかがお分かりいただけたかと思います。

ただそれでもできれば薬は飲みたくないという方もいるかと思います。

「薬を処方するかどうか」は、最終的には患者さんと医師の双方が納得したうえで処方します。インフォームド・コンセント、情報を十分に共有した上で(informed)、同意を得る(consent)必要があるのです。

処方された薬が不安で飲めない、という方はぜひ遠慮することなく一度主治医に相談してみてほしいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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