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WAISの結果と実際の特性が割と一致したASDの方

こんにちは。精神科医のはぐりんです。今日は少し専門的な内容になりますm(_ _)m

今回は元々診察だけでASDの診断がついた方なのですが、その後心理検査(WAIS、PARS、AQ)を行ったところ、診断をさらに裏付ける結果となったパターンをご紹介したいと思います。
※プライバシー保護のため、情報は一部改変、限定して書いていきます。

学校の単位がとれず、発達障害の診断がつけば学校側から配慮をすると言われ来院されました。本人の話を聞いてみると、授業の内容自体にはすごく興味をもっており、すべての講義に出席し一番前の席で聞いているそう。それでも授業に全く出ていない同級生が単位を取れているのに、自分は単位が取れず留年しそう、と聞いていて可哀そうになるような状況でした

この方に知能検査(WAIS)をしてもらったところ、本人の困り感や症状にかなり合致した点数パターンがでました。WAISは1-2時間かけて色々な課題をやってもらう検査になりますが、まず一番上に知能指数、いわゆるIQが出ます。IQを細かく分けると、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度、の4つに分類されます。発達障害かどうかは心理検査ではわからないし判断しない、と以前の記事でも再三申し上げてきましたが、診断の助けにはなります。ASDの方にWAISをやってもらった場合、先ほど申し上げた4つの能力にバラつきが出てくるのです

今回の方の場合、言語理解95、知覚推理110、ワーキングメモリー85、処理速度75と、言語理解<知覚推理とIQにして10以上の開きがあり、さらに処理速度がIQに比較してかなり低い結果が出ました。これが実生活にどういう影響を及ぼしてくるのかというと、例えば頭ではわかっていること(知覚推理が高い)を、うまく言葉にできず(言語理解が低い)相手から誤解されてしまったり、処理速度が低いとレポート課題やテスト、板書など時間制限のある作業が間に合わなかったりします。この方の場合も、授業は一番前で受けるけれども板書もとらず(とれず)、課題やテストも要領よくこなせず単位が取れないといった状況でした。一方で興味のあることは文字通り寝食を忘れて取り組むそうです。この方のWAISの結果は、割とASDの方一般に言われている特徴に沿った結果となりましたこういった結果が出ると心理検査もASDの診断に際してだいぶ後押しになりますね。

授業に興味を持って真面目に全出席している生徒が単位を落とし、その逆で授業には出ずに(同級生同士のつながりや情報交換によって)課題とテストだけpassしている学生は進級するという、発達障害の方たちの生きづらさをまさに表したような例でした。今回の診断をきっかけにうまく学校側には配慮してほしいし、将来的にうまく本人が居られる場所が見つかればいいなと願っています。

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