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人事コンサルタントのつぶやき#1

『競争優位性はどこから作られるのか?』

ある製造業のお客様で人事制度構築のご支援をしています。人事制度構築にあたっては、トップ方針や戦略・計画などについて関係者にヒアリングをします。また、こちらのお客様ではヒアリングと併せて、工場内を見学いたしました。工場の見学中に製品の原材料、製造工程や独自の加工技術など様々なお話を伺いました。その中でも特に印象的であったのが、現在の主力となっている製品の開発秘話でした。

この製品開発は皆さんも知っているような超有名企業(A社)からの相談がきっかけだったそうです。A社が提供する製品を作るために、特殊な材料が必要であり、その特殊な材料の製造をこちらのお客様にお願いしたいという内容であったそうです。そして、A社とお客様(創業者)との共同研究の末、特殊な材料が開発されました。この開発は苦難の連続であったそうです。材料の加工過程では少しの水分で発火するなど、危険と隣り合わせの研究でした。この加工過程や物質の取り扱いが、容易に模倣できないノウハウ(競争優位性)部分だそうです。

お客様に話を伺うと「命に係わるほど危険で、リスクは高い仕事だと思うが、そのようなリスクをとっても挑戦した結果が今に繋がっている。」とおっしゃっていました。実際、トップ層へのヒアリングでも組織風土、文化として「挑戦」という言葉がキーワードになっていました。

この話を通じて、競争優位性が確立されるには組織風土、文化が起点になると改めて思いました。共同研究の話は、リスクを伴うものであり、難航することは目に見えていたそうです。しかし、果敢に挑戦して唯一無二の技術をこちらのお客様は得ました。この技術の部分は容易に模倣できないことでしょう。しかし、それ以上にこの開発の裏側にあるマインドの部分が重要であったと私は思います。この製品の開発後もお客様はリスクを伴うような難しい製造、加工技術を武器に画期的な製品を世に送り出していることから考えると、「挑戦」をキーワードとした文化が企業の成長、競争優位性の根底にあることを感じさせられました。

マイケル・E・ポーター氏は競争優位を築くために3つの基本戦略があると言いました。その3つはコストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略です。こちらのお客様は結果として差別化戦略を取っていました。この戦略を選択するという合理的な流れはなかったかもしれません。しかしながら、根底にある組織風土や文化から、結果として差別化戦略に繋がった事例のように見えます。そして、目に見える技術の裏に隠れた競争優位性は、組織風土や文化でした。これは、その会社ならではのものであり、模倣困難でしょう。このような競争優位性を作り出すような組織風土や文化の醸成を支援することも人事コンサルタントの仕事です。より一層、企業の成長と発展に尽くしたいものです。

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