見出し画像

進め!おばゴン(55才からの挑戦)

チャイニーズマーシャルアートの道は人生並みに険しい(半泣き)

1.大福降臨

 ワンオペ3姉妹育児が終了し一息を付いた昨年。そして今年の夏にふと自分の体調が日々優れない事に気付く。いや、気付いていたのだが見て見ぬ振りをしていたと言うのが正解だろう。40代後半から症状を自覚した更年期障害がまだまだ終わっていないのかもしれない。
冷え・凝り・むくみそして肥満…。常に体がだるくて重い。
病院に行くほどではないが不調を感じる事が多い。
仕事は超絶肉体労働であるが、自分の体を意識をして動いている訳ではないのである意味運動不足と言っても良いのだろう。
 「そろそろ運動をした方が良さそう」と何となくそう思った8月のある日。
自分が何をしたいのがぼんやりと思考を巡らす。

浮かんだのは
①サルサダンス
②ヨガ
③太極拳

この体型だと昔の様にテニスやスカッシュは出来ないよなあ…と思っての結果がこの3点だった。

しかしだ。
①に関してはパートナーがいる(らしい)。
②に関しては意識が低い系の私がやって良いのかと尻込みする(あくまでも私の勝手なイメージです)

結果③の太極拳に辿り着いた。
中華圏の文化が大好きと言う理由も大きく関係しているのもあるかと思う。

私は鉄砲玉なので思い立つと早い。後先考えずに行動をする。なので絶えず失敗が付いて回る。しかし本人が比較的能天気なのであまり気にしない、いや、学習をしないのだ。
全く成長が出来なかったアラ還の見本かもしれない。
また学習をしていない事もさほど気にもかけていないので、ネットでサクサクと検索をしとある学校を見つけた。
早速メールをし体験レッスンの約束を取り付けて当日を楽しみに待つ事になった。

 同じく8月の日曜の午後、意気揚々と出かけた学校は中華感満載。それもそのはずで学校の経営者は華僑の人だという。数人の中国人がおり中国語が飛び交う。
海外にいる様な錯覚に陥り、旅好きの私はそれだけでも高揚感が増す。
紹介をされた武術の先生もやはり中国の方で筋骨隆々の笑顔が優しい叔父様であった。

 さていよいよレッスンの開始である。
大きな鏡とストレッチバーがある部屋に入り、そこで私は膝を床に着きそうになるほどに愕然とする。
何故なら鏡に映った自分があまりにも立派過ぎるほどに成長をしていたからだ。十二分に太っている自覚はあったがまさかここまでとは!二の句が継げない程に驚愕をした。
また元々色が黒い方ではなくさらにその日は白っぽいTシャツを着ていたので益々膨張して見えたのだと信じたい。

あぁ…。
「大福」が立っている。

「大福・大福・大福・大福・だいふく…」
大福が自分の頭の中でリフレインをする。
また鏡の中の大福がニヤニヤとしているではないか。
唖然、呆然をしてほんの僅かな瞬間、自分を失いそうになった。そしてその後猛烈に腹立たしくなってきた。
「にやにやしているんじゃないよ、大福!」と鏡の中の大福こと自分に心の中で私は毒づく。あまりの現実にショックを受けまくるが、しかしこれくらいではまだまだ終わらない。さらに厳しい現実に直面をするのである。
ストレッチバーの下段、およそ高さ70~80㎝位だろうか。足を乗せてみるがそれが精一杯でまたさらに前屈が苦しくて出来ないのだ。
鋼鉄の体状態だ。
先生に体を押して貰うともれなく「ボキッ」と音がし「イタタタタ…」と私は声を上げる。つくづく苦手とはいえストレッチを避けて行わなかった事を激しく後悔した。
また悲しい事に片足立ちもいつの間にか出来なくなっていたし、蹴りの動作では足が全く上がらない。
そして体幹や太ももの筋肉がないからか、上体がすぐにのけ反ってしまう。
もう嫌になる。
ため息と涙しか出てこないような状況だ。
まだまだ出来ない事が沢山書けそうだがキリがないでこの辺にしとこうと思う。

 レッスンが中盤になると型や蹴りや拳をレクチャーされる。そこで始めて私は習っている事が太極拳とは動きが違いスピードが速い事に気付く。
これが私の中国武術の一種「長拳(ちょうけん)」との出会いとなった。


そして私は何を血迷ったのか入学手続きを済ませた。



 翌日はお約束通りに酷い筋肉痛であったが、大福の件が相当堪えたらしい。
あれだけ苦手で避けて来たストレッチを開始する。
付け加えればこのストレッチが自分の生活習慣を変えるとはこの時は全く想像も出来なかった。

まさに大福、いや、だらけていた55才の私の挑戦が始まったのかもしれない。
果たして長拳をマスター出来るのだろうか…。
どこまで私の体は柔らかくなるのか。
分からないけれどやらないと分からないではないか…と自分を励ます日々が始まる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?