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卒業シーズン

 ここ数日、とても小さなお困りごとがある。
  
 とある少女は今月で小学校を卒業する。(とある少女は来月から、とある女子中学生に昇格だ。)
 卒業式には、どこの小学校でもだいたい、卒業の歌を合唱するところが多いのではないだろうか。
 とある少女は、一応ピアノを習っているので、担任の先生に勧められて、学年で数名が受ける卒業式の歌の伴奏者オーディションを受けることになり、年が明けた頃からだったか、家で曲を練習していた。
 

「旅立ちの日に」という曲。知っていますか?

 この曲、楽譜の左の上の方に「心をこめて」と書かれていて、伴奏だけ聞いていても、卒業らしい感動を盛り上げてくるような曲です。

 最初、あまり曲になっていなかったころはよかった。でも、だんだん上手に弾けるようになった辺りからが、ちょっと……。

 その曲を毎日のように聞かされていると、何というか、よくある卒業用の映像のように、とある少女が新品のチョコレート色のランドセルを背負って、坂を登校していく姿や、遊びに来た友達と家の周りで遊んでいる姿や、それに軒下猫やその息子たちが懐いている姿など、入学から最近までの姿が、否が応でも次々と蘇ってきて、次第に「これはまずい」ような気持ちに……。

              

 わたしは、自分の幼稚園の入園式は嫌すぎて泣いたタイプですが、逆に、卒業式で泣いたりするタイプでは全然ありません。
 今まで、自分自身の卒業式はもちろん、若い頃の自分の担任していたクラスや部活の卒業ミーティングでも、自分の子どもたちの卒園・卒業でも、一度もそういう感じになったことはありません。無理です。

 昔顧問をしていた女バスの生徒たちは、なぜかみんな、とても情緒豊かで、それを表現するのが上手な人たちが多くて、卒業式前日に必ずやる、部活のミーティングでは、泣きの涙で別れていきました。部活のつながりって強いですよね?
 みんなとても親しんだ生徒たちだったけれど、わたしもものすごく心では、「あ~、さみしいな~……」とは心底思っているのだけど、そういうときも泣くなんて絶対にできませんでした。それとこれとは別なんです。
 そんなわたしのことを、女バスの生徒たちも三年間の付き合いでよく分かっていて、「先生はホントは生徒のことを思ってくれてるけど、こういうとき泣くような人じゃないんよね?」とか、泣いている彼女たちにフォローされる始末……。




 多分、映画とか、ドラマの最終回で泣ける人は、案外軽症なんだと思います。わたしは、そういうのはとことん苦手で、せっかく最終回前まで見てきても、最終回を見るのは無理すぎて拒否してしまうぐらい、重症です。とくに、子どもと一緒に見るなんて不可能なので、そういうときはすっと姿を消して、お風呂を掃除することにしています。






 さて、とある少女は、残念ながら今回は、オーディションには落ちたらしい。
 母としては、というか、いつものお母さんなら、
「あらら、一生懸命練習したのに、残念だったろうな……」
と、密かにブルーになるところだけれど、それもまあ、ないとは言えないのだけれど、今回に関しては、
「助かった……。もし選ばれちゃったら、本番ハラハラしすぎて見てられないよ~」
とも思ってしまいました。(ごめんね)







 それからは、あまり例の曲は弾かない日々……(やれやれ、開放感……)








 と、思っていたのに……。






 ついに、卒業式が2週間後に迫ってきました。
 すると再び、とある少女の、毎晩の「旅立ちの日に」が再開!
 多分、学校での練習が本格化してきているのに触発されているのか、小学校の先生もやるべき勉強が完了してしまって、時間が余っているのか(高校じゃないから、それはないか。)??


 しかも、最近のとある少女は自分が弾くだけでは満足せず、わたしに、「歌って。」とか「リコーダーで吹いて。」とかまで、リクエストしてくる。
 「その歌、習ってないよ?」と言っても、「じゃあ、メロディを弾くから覚えて。」と。(え~。)

 まあ、リコーダーを吹くのはそれほど気持ちを持って行かれないからいいけど、さすがに歌わされると、歌詞をちゃんと隅々まで読む羽目になって、つい、脳が歌詞に反応しそうになります。



 もう、一番嫌なのが、「いま、わかれーのときー♪」から先の、
「はずむ♪ わかい♪ ちからーしんじてー このひろい・・・」
と盛り上がっていくところ。って分かる方いらっしゃいますか?
 とある少女の伴奏が、畳みかけるみたいに、フォルテだのcresc.だので弾いてくるので、もう…………。




 これを卒業式まで、毎晩やられるのかな。(2週間も。)
 耐えきれるのでしょうか?

 卒業式にはちゃんとハンドタオル、持って行った方がいいでしょうか?
 

 

 

 

 

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