見出し画像

ロケットエンジンにおける最適化設計に関する私の研究

■Title
ロケットエンジン用遠心ポンプにおけるキャビテーション不安定現象を抑制するインデューサの翼形状最適化
 Design optimization of turbo pump inducer  to avoid cavitation instabilities for rocket engine.


■Abstaract

The problem of turbo pump that occurs when increasing the rotation speed is the phenomenon of cavitation. Previous studies have stated that there is a trade-off between suction performance and suppression of backflow generated 
at the inlet of the inducer. The main purpose of this research is to propose a method of optimizing the design parameters of the inducer that achieves both improvement of suction performance and suppression of cavitation surge while maintaining high pump efficiency. An optimization framework based on the response surface has been established to carry out the optimization design.

Key words: Rocket engine, Turbo pump, Inducer, Cavitation, Optimization, CFD (Computational Fluid Dynamic), PIV (Particle Image Velocity)

■Introduction

ターボポンプは,液体推進エンジンの必須コンポーネントであり,推進剤の圧力を高めるために高速回転で作動することから,キャビテーションによる不安定現象が発生することがある.主羽根車入口の流れを加圧し,キャビテーションを抑制するために軸流羽根車であるインデューサを上流に設置する.このとき,インデューサではキャビテーションが発生した状態で運転されるが,低流量域や設計流量近傍でもキャビテーションサージと呼ばれる低周波の脈動現象が発生することがある.ロケットは、設計流量近傍で使用されるが、打ち上げに使用したロケットを再利用すると広い流量範囲で使用する必要がある。これまでに設計流量近傍でのロケットエンジン用ターボポンプのインデューサを対象とした研究は数多くなされているが,広い流量範囲で使用するインデューサの設計に関する研究は少ない(1).ロケットエンジン用ターボポンプは設計点近傍のみで運転されるが,再利用ロケットは広い流量範囲で安定して運転できることを要求されるため,従来のロケット用とは異なる設計になると考えられる.

私の研究では,広い流量範囲で使用する再利用ロケットの遠心ポンプを対象にしており,ポンプ効率を高く維持したまま,吸込性能向上とキャビテーションサージの抑制を両立するインデューサの設計パラメータを最適化する手法を効率的な設計手法の一つとして提案することが目的である.高ポンプ効率と高吸込性能および,キャビテーションサージの主な要因の一つであるインデューサ入口で発生する逆流に関して,その発生の抑制と高吸込性能はトレードオフの関係にあることが知られている(1).よってこれらの性能バランスが取れたインデューサを迅速に設計することは非常に困難である.そこで,研究では重要な設計パラメータを抽出して多目的最適化手法を適用し,インデューサを設計,製作して性能試験および内部流れの計測を行い,これらの手法が有効であることを検証している.

参考資料:ロケットエンジンの構造


■研究内容の紹介 Intoroduction of the method

■Method of the simulation

解析用PCを用いてシュミレーションを行い、ロケットエンジン内部の現象を予測しています。このシュミレーションは、CFD(Computational fluid dnamics)と呼ばれます。

流体力学の方程式とコンピュータシステムを駆使し、さまざまな物体の流れを物理的な問題を数学的にモデリングすることを指します。流体動作の温度、応力、速度、密度を色で表現することができ、製品の設計と解析に利用されます。流体の運動を論理と物理によって解析する流体解析は、優れた製品を設計する際に有効な手法です。

試作品を制作して実験だけで開発を行うと膨大な時間とコストが必要です。しかし、流体力学とコンピュータを組み合わせたCFDを用いれば、何度もパソコンでシミュレーションを行うことができ、性能を事前に予測できます。開発のスピードが求められている今、試作品の制作の時間とコストが不要になるだけでなく、実験の時間とコストも大幅に削減できることが大きなメリットです。

CYBERNET ANSYS ホームページ


■Method of the design optimization

応答曲面法を用いた多目的最適化を適用し、最適化設計手法に関する研究をしています。

応答曲面とは、入力パラメータ(寸法など)に対して、応答パラメータ(変形量など)が、設計空間内においてどのような関係にあるかを図示したものです。作成した応答曲面を利用して、設計空間全体の傾向や、入力と応答の関連性、各パラメータの影響度を知ることが出来ます。また、最適化解析にも利用できます。


■Method of the experiment to analyze frequency of pressure

ロケットエンジン内部で発生する内部のFFTアナライザを用いて振動解析を行っています。

FFT とは、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)の略で、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform、DFT)を高速で実行するディジタル信号処理用のアルゴリズムです。また、DFTとは、有限ディジタル信号をフーリエ変換する技術です。

圧力の周波数分析、振動解析に用いられます。


■Method of the visualization

粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry, PIV)を用いて、流れの可視化を行っています。

PIVは、流れ場における多点の瞬時速度を非接触で得ることができる流体計測法です。流体に追従する粒子にレーザシートを照射し可視化、これをカメラで撮影しフレーム間の微小時間Δtにおける粒子の変位ベクトルΔxを画像処理により求め、流体の局所速度ベクトル v≅Δx/Δtを算出します。流れ場の空間的な構造を把握することができます。

カトウ光研 ホームページ


■Future work

現在のロケットエンジンの開発は、未だに設計方法が確立していない点が多く、トライ&エラーが必要であり、多大なコストと時間を有します。

広い流量範囲で使用する再利用ロケットにおける設計パラメータを最適化する手法を効率的な設計手法の一つとして提案することが目的としており、今後のロケット開発に貢献する。

■参考資料


(1) 後藤彰,2001,3次元逆解法によるターボ機械翼の最適化,ターボ機械学会 30巻 5号 p.269-276


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?