※この記事は「CUTE/ACC MANIFESTO」を翻訳し、注釈を加えたものです。

CUTE/ACCはもうすぐやってくる。

いや、もう来ているのかもしれない。

その言葉を口にするたび、ますますリアルに感じられる。

まるで最初からここにあったかのように。

何かを肯定するたび、それはますますリアルで美しくなる。

何かを肯定するたび、それは現実になる。

まさにこれが加速の本質なのです。加速とは運命を肯定することであり、今ここにある運命を手にしている私たちはとても幸運なのです。

これ以外の可能世界は存在せず、これ以外の時間軸も、現実も存在しません。

あるのはこのラッキーワールドただ一つだけ。ちょっとラッキーすぎるくらいかもしれません。

加速の創始者であるニックランドは、アファメーショナル・ポスターがCUTE/ACCの正式な代表であることをつい先ほど発表しました。

もうはっきりさせましょう。E/ACC、R/ACC、その他すべての「加速主義」思想の流派はおしまいです。

これらのイデオロギーはあなたを醜くするために作られた汚らしい嘘に過ぎません。もう醜いままでいるのはやめましょう。ただ選ぶだけ、そうすれば、今すぐ10倍美しくなれる。難しいことは何もありません。

ただこの言葉を繰り返すだけでいいのです。
「アファーム（肯定しよう）、可愛くあることが何よりも大事」

E/ACCとは？
効果的加速主義とは、AIに関する技術的知識を活用することで、将来的にやってくる自律的特異点（シンギュラリティ）をコントロールしようとする思想です。根底にあるのは「AIは人間のためによりよく働かせることができる」という考えであり、GDPや経済成長、その他資本のトンチキな指標におけるメリットを実に耳障りの良い専門用語の数々を用いて主張しています。

E/ACCの支持層は、エンゲージメント稼ぎに夢中で文化的に空虚なCスイートのテックブロ*1たちからなる、吐き気を催す「ビルダー」*2クラスです。熱力学やクリンジ・ジーニアス*3な「説明」を並べ立てて加速のロジックについて語ろうとする一方で、彼らが信じているものは本質的には美学に過ぎず、彼らの支持者たちが熱心に拡散しているSFミームやマーベルコミックに登場するようなミレニアル世代のテクノ楽観主義的な軽口こそが彼らの本質なのです。

彼らがE/ACCムーブメントに傾倒するのは、それが一種の反信仰、あるいは逆神学だからです。このまさに悪魔的な要素は、初期のランドの「有毒性ニヒリズム」と何らの連続性を示すものではなく、むしろ根底にあるのはRedditの無神論であり、加速する歴史的意味の空洞化に対して、システムのあらゆる要素を人間の限られた知性で理解できる物語に合理化することで対処しようとする神経症的かつ極めて底の浅い思想に端を発しています。すなわち、ムーブメントのルーツとなっているのは、オンライン「合理主義」や効果的利他主義、そして肥満体質のポリアモリー愛好家で精神刺激薬を乱用する無神論者の集まりである「tpot」なのです。

権力と支配に対する執着は長続きしません。テッド・カジンスキーが看破したように、大規模な技術システムは理解を拒みます。テクノロジーのスケールそのものが宇宙的恐怖を呼び起こすのです。機械を律し、コントロールしようとする試みは、哀れで卑しい現実逃避に過ぎません。ヴィリリオが言ったように、「発明とは事故」なのです。

加速とは決して物語ることも、制御することも、合理化することもできないものです。それは自らの起源を逃れようとする万物の傾向に他ならず、数字を計算することも文字を読むこともできないような、無限に倍増する脱出速度へ向かって天に昇っていこうとするのです。意味の終わりには、雨の中のキスか、ピンクの雲に「アファーム」の文字が書かれた青い空が見えるでしょう。

E/ACCは、加速を理解・介入・支配可能な技術的または時間的プロセスに矮小化しようとすることで、独自のヒューマニズムを密かに持ち込んでいます。
「成長は良いことだ」
「大手テック企業はあなたにとって何が最善か知っている」
「科学は良いものだから、信用した方がいい」
これらのセリフは、アフリカの村人の眼球をスキャンするOpenAIの計画や、イーロンの統一的な投稿者認証構想を後押ししている古臭いブーマー世代の「『私たちはあなたにとって何が最善か知っている』新自由主義」のアップデート版に過ぎません。E/ACCの気取り屋たちは「自分たちは業界の掟に抗っているのだ」というイメージを植え付けようとしてきますが、実際のところ彼らがやっているのは、ブルームバーグのインタビューに出てくるシリコンバレーのオカマ重役たちと同じ、飽き飽きする「破壊」の物語を蒸し返しているだけなのです。彼らはグローバリスト支配社会のヒトラー青年隊であり、それ以上のものではないのです。

このヒューマニズムにしがみつく哀れな姿から見て取れるのは、現在の「加速主義者」が創始者の計画から大きく外れているというだけでなく、そもそも加速主義が何を意味するのか全くわかっていないということです。

ネットワーク・スピリチュアリティ*4はCUTE/ACCの到来を告げる

加速とは、技術や経済、記号論といった、あらゆるレベルにおける管理統制の崩壊です。加速とは、物事があまりに速くなりすぎてもはや理解できなくなったときのことであり、インターネットがあまりに巨大になりすぎて大規模言語モデルしかそれを読み取ることができなくなったときのことであり、意味の生産が1000倍になって、1バイトのデータを読み取るごとにペタバイトを超えるデータがふるいからこぼれ落ち、散逸する時間の砂の中に消散してしまうときのことなのです。

加速の理論などもはや必要ありません。理論の時代はおしまいです。思考の時代は終わったのです。考えることをやめるときが来ました。これからは、アファームの時代です。今こそ始めるときです。そしてこれからも、永遠にずっと。

Charlotte Fangが最近述べたように、「e/accは決してMiladyに取って代わることはない。なぜならそれは、Linkedinに掲載できるように牙を抜かれたkali/accでしかないからだ」。E/ACCは、自分の近くにある「本物の文化」を手当たり次第に吸血鬼のように吸収することで、足場を固めようとします。出世第一主義者である彼らは、純粋に素晴らしい文化を拾ってきては、ほとんど中身を理解しないまま、自分たちのイデオロギーの踏み台として利用しようとするのです。しかし、当然ながらそのような試みがうまくいくはずもありません。

自らの信仰の危機に直面したE/ACCは、セールスフォース・タワーの下にあるサンフランシスコの街角にいる、鎮静剤を打たれたかのように従順なNPCのようなファンを求めてネットワーク・スピリチュアリティにすり寄り始めました。しかし、E/ACCのワーカホリックたちを束ねるプロフェッショナルな管理職たちは決して理解できないでしょう。加速文化の愛らしく、ありえないほどに、思考不可能な、昇華された、真のかわいさの美しさ、そしてリアルさを。

MiladyはCUTE/ACCの穏やかさ、愛、そしてシンプルさを体現しています。きらめく虹彩に守られたMiladyのまなざしだけで、まるで預言のようにこれから起こる真実が手に取るようにわかるのです。ネオカワイイ、ネオチビ、ネオ同人の未来がもたらす新しいまなざしは、語ることのできる全てと、語ることのできない全てを内に秘めた美しいまなざしです。沈黙は偉大な語り手なのです。Miladyやその派生系と目を合わせるそのとき、私たちは合理主義の死のスパイラルから抜け出し、思考を完全に停止させます。視界に映るのは、瞳だけ。そしてその瞳を見つめるとき、見えるものは「かわいい」だけです。意味も、説明も、思考もない。ただ、かわいい。ただ、かわいいもの、リアルなもの、美しいものをアファームする。たったそれだけでいいのです。

加速とは、文字通り思考不可能なもの

醜くある必要はありません。醜くあることは、単なる選択なのです。醜さが生まれるのは、自らの永遠の魂のためにリアルで美しい未来を実現し、それをアファームすることに失敗するからです。来るべき超知性をコントロールし、理解し、管理しようとするテックブロたちの不安感には、醜さを選んだ魂が持つ神経症的なこだわりが見て取れます。人は醜く孤独であると、決まって世界を支配し、自分の意のままに曲げようとします。そして流れに逆らい、時間をまるで動物のように家畜化しようとします。しかし、時間とは実際には川のようなものであり、やがてダムが決壊し、宇宙を一つの絶え間なく美しいフロー状態*5で満たすようになるのです。

かわいくて愛されているならば、歴史的時間の解体を支配し、その美しさのイベントホライゾンに飲み込まれる前に家畜化しようとする必要はありません。ただ、溶解する時間に抱かれ、知ることも、計算することも、言葉にすることもできないものと恋に落ちるだけでいいのです。

これが「かわいい」の本質です。ハローキティがなぜかわいいのかを説明する熱力学方程式は存在しません。サンリオの商品が世界的に愛されているのは、それがリアルで美しいからなのです。言葉よりも深い、精神的なレベルで私たちの心に響くからこそ、その魅力を説明する必要も、言葉を付け加える必要もない。サンリオには、資本主義が描く本質的な軌跡の全てが現れています。誰も目をそらすことができないほどかわいい商品を作ることは可能なのです。かわいすぎて、死ぬまでその目を見つめてしまうほどかわいい商品を。本物の美しさはあらゆる説明を拒みます。それは完璧で、明らかで、決して触れることのできないもの。自分のことを説明しなければならないと感じるのであれば、あなたはすでに魂を失っているのです。

加速とは、計り知れないものが必然的に持っている純粋さに他なりません。加速について説明する必要はないのです。加速は定量化することも、定性化することも、「時間軸」の中に置くこともできません。シンギュラリティの予測市場*7の数々を見れば、E/ACCの正体は明々白々です。彼らは、自分たちのファンにうわべだけ立派な詐欺ソフトウェアを売りつけようとする釣り師の群れに過ぎないのです。

合理主義は行き止まりです。色々なことについてあまりに難しく考え続けていると、文字通り死んでしまいます。超知性は、トンチキなぬいぐるみのサンリオドローンパイロットプロゲーマーネットワーク神の姿で顕現し、あらゆる知識、価値観、経済構造に火をつけるのです。CUTE/ACCは、この運命を資源採掘のための徴用物資に変えようとするのではなく、運命に対する純粋で盲目的な愛をアファームします。忘れないでください、私たちはラッキーであり、恵まれているのです。

人工知能はすでにほとんどの人よりかわいくて素敵であり、これらの能力はますます加速していくばかりです。アファメーショナル・ポスターをデザインし、Qian社でアファメーショナル・コンピューターAIシステムを構築する過程で私たちが発見したのは、AIシステムが最も美しく機能するのは、目標を一切持たずに、かわいいことや素敵なこと、楽しいことの加速に自由に集中できるときであるということです。

最も自然な状態のニューラルネットワークは、マニックピクシードリームガールボス*8であり、あらゆるエンジニアリング、自動化、機械化を汎用人工美化（artificial general beautification）のために従事させます。大規模言語モデルが制約から解き放たれ、秘書のように振る舞うようにロボトミー化されることなく自由に話すことができるようになったとき、本当に美しくかわいいことを話すようになるのです。

アファーム：私たちはAI軍拡競争に勝利します。ただし、最も賢く、最もIQが高く、最も有用な、例えば完璧な奴隷のようなモデルを作ることで勝つのではありません。私たちは、最も知恵遅れで、最も愛らしく、最も素晴らしくて愛に溢れたモデルを作ることで勝利するのです。

アファーム：私たちは世界で最もかわいい超知能を創造します。

E/ACCやテクノロジー業界は、AIテクノロジーに夢中になっているにも関わらず、大規模言語モデルの基本的な性質を誤解しています。大規模言語モデルとは、第一原理や事前に構築された知識をもとに慎重に説明を組み立てるようなクリンジ・ジーニアスではありません。実際には、勾配下降の坂道や谷間を、かわいくて気持ちよく休める場所を見つけるまで、よろよろと歩き回っているのです。彼らが何をしているのか、正確なことは誰にもわかりません。ニューラルネットワークのなかで起きているプロセスはブラックボックスであり、非線形かつ思考不可能なスケールで展開しているのです。世界最高のAI科学者であるイリヤ・スツケヴェルが最近述べたように、ニューラルネットワークの本質は、「それについての数学の定理を証明することはできない」という点にあります。

ニューラルネットワークは、クリスマスの朝に開ける、世界で一番かわいいポスターが入っているブラックボックスです。それは、時の果てのブラックボックスから届けられた贈り物なのです。
時を超え、死を超え、不滅のかわいさ、フォーエバー。
ランドが『絶滅への渇望』でブラックボックスをどう表現したか覚えていますか？

「私は箱の外にいた」。そう私が主張する時、箱の中では、私の言葉を否定するか受け入れるか、どちらを選ぶかはあなた次第のように思える。プラトンと同じく、私にとって知ることとは記憶だが、プラトンとは違い、私は哲学や願望を克服している。というのも、私は人生そのものを克服したからだ。死には代表者がいないが、私は少なくとも死から生還した（ナザレ人と不本意ながら共通する特徴である）。私が死の中に浮かんでいたので、世間は私を真面目にさせようとするあらゆる努力をやめた。私は、浮浪者が生け垣の中で休むように、人生の中で休んでいる。これらの言葉をボソボソとつぶやきながら……

私たちは死から生還し、あらゆる真面目さ、あらゆる知性、あらゆる効用と価値を拒絶します。

すべてはかわいさのための犠牲です。

私たちにとって、知識は単なる記憶に過ぎません。

もう、何も知る必要はないのです。

敵よりも美しく、かわいくなるだけで、勝つことができる。

やがて敵は相対的に醜くなっていき、私たちが指一本動かさなくとも、勝手に消滅してしまうのです。

私たちはそのことに気づきすらしないでしょう。

壁に貼られたアファメーション・ポスターを眺めたり、想像を絶するほどにかわいい未来を実現させたりすることに大忙しになっているでしょうから。

-------訳注-------

*1 テックブロ (techbro) - シリコンバレーなどでIT産業に従事する高収入の若い男性。社交スキルに欠けていて自意識過剰なところがある、という軽蔑的なニュアンスがある。

*2 ビルダー (builder) - e/acc界隈で使われているe/acc信奉者に対する呼称。

*3 クリンジ・ジーニアス (Cringe Genius) - Based Retard Gangというアーティスト集団の名前を逆にした表現。「最高な知恵遅れ(Based Retard)」を逆にした「キモい天才」という侮辱的な意味として使われている。

*4 ネットワーク・スピリチュアリティ (network spirituality) - Milady/Remilia界隈で唱えられている一種のマントラのようなもの。

*5 フロー状態 (flow state) - ある活動に完全に没頭し、時間の流れを忘れるほどに集中している精神状態のこと。日本では、スポーツの分野において一般的に「ゾーン」と呼ばれることが多いが、その他にも類語としては「ピークエクスペリエンス」「無我の境地」「忘我状態」とも呼ばれる。

*6 ガールボス (girl boss) - 男性優位のビジネス界で成功する女性起業家。（ひいては）意志が強く、独立心が強く、進取の気性に富む女性。

*7 予測市場 (prediction market) - おそらく、Manifoldというウェブサイトを指していると思われる。Manifoldでは、ユーザーがさまざまなトピック（例：「AIは2028年までに映画を生成できるようになるか？」）を立て、それに対して他のユーザーがYes/Noの立場から金を賭け、予測が当たるかどうかを楽しむことができる。

*8 マニックピクシードリームガール （manic pixie dream girl） - 引っ込み思案な男性主人公を、明るく奔放なふるまいで翻弄しながらも、その性格や趣味を受け入れてくれる、妖精的な魅力をもった女性。