見出し画像

#9 手紙を送るという事

 素敵な女の子が家族のために高級チョコレートを買って帰っている。
 気になるあの子をどうやってゲレンデに誘おうか、粋な台詞を考えている男子がいる。

 僕は抜けた陰毛に手紙を書いている。

 手紙とかもらったら女の子は嬉しいんだよ。今まで何度も言われてきた。その通りなのだが、やっぱり改めて手紙を書くのはどうも恥ずかしい。ただ僕もいつまでも意気地なしのインポ野郎ではいられないので、手紙とかいうやつを書いてみようと思う。
 とは言っても、

拝啓
 雪が降ったり、いきなり暖かくなったりと気温が安定しない今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
 オメコの耐久性は1万ピストン、アヌスは一生。なんて言葉もございますが、アヌスを使ったことも使われたことも無い僕はまだまだ修行が必要です。

 なんて手紙を送る女の子はもちろんいないわけで、仮に同い年の女の子に送ったとしても
「私のオメコは16000回くらいニャンニャンしてるけど、まだまだよろしくやっているわよ!」
なんて言われようもんなら、その子のオメコに内視鏡を突っ込んでヒビでも入ってないか確認してしまうのがオチだろう。
 まあそういう訳で人に対して手紙を書くのはどうやら今の僕には早いように思われる。 
 という訳でまずは自分の陰毛に手紙を書いてみようとなった訳だ。だがしかしだ。これはこれで難しい。近しい人ほど改めて手紙を書くのは小っ恥ずかしいものである。自分の陰毛なんて近いなんでものでは無い。ペットの事を家族という人はよくいるが、余裕で僕と陰毛は家族以上の関係な訳だ。照れちゃう。
 とりあえず抜けた陰毛を机に置いて、はにかみながらまだ生えている陰毛を擦ってコーヒーを飲みながらエルトンジョンのレコードに針を落として手紙の文章を考えている。

拝啓
 清らかな香り漂う梅花の候、ご清祥のこととお喜び申し上げます。
 日頃ムレムレの僕の股間で、私の息子の側で息子を輝かせていただいておりますこと、心から感謝申し上げます。

 いや待て。こんな手紙もらった事がない。なんで陰毛に四季の挨拶から入らなければならないんだ。少なくとも今まで僕がもらった手紙はもっとカジュアルなものだったはずだ。
 彼女と別れるときに、最後に彼女がちょっとした手紙をくれた。的な感じで行こう。

今までありがとう。
チン毛の事が本当に大好きだったよ。
元気でね。

こんな感じでどうだろうか。

 近頃暖かくなってきた。春の訪れを感じるものだ。春は出会いと別れの季節である。普段はなかなか無いが、こんな時期こそたまには液晶画面ではなく、紙媒体で思いを伝えてるもの悪く無いな。そんな事を考えたりする今日この頃。

この記事が参加している募集

文学フリマ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?