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岡嶋二人「クラインの壺」~どんはれの読書日記

自宅の近所の本屋さんで、岡嶋二人の「99%の誘拐」を平積みでやたらと売っていた。岡嶋二人と言えばもう一つの代表作「クラインの壺」をなぜ売らないのかと、一人で心の中でモヤモヤした。よっぽど書店員に教えてあげようかと思ったが、余計なお世話だと思いとどまった。
「99%の誘拐」は、まだインターネットがなかった時代にワープロのパソコン通信で、ターゲットなる少年をおびき寄せてある山荘に閉じ込めて誘拐する話である。
当時としては、現在のネット社会に通ずる革新的な内容であった。

話を元に戻そう。「クラインの壺」は、バーチャルリアリティーを題材とした小説である。「クライン2」というバーチャルリアリティーゲームのテストプレイヤーになった青年が、同じテストプレイヤーだった女性の失踪を追うミステリー小説である。

ここからはネタバレなので、ご注意ください。




セックスまで違和感なしで体験できてしまうゲーム機。この世界は現実なのかバーチャルリアリティーなのか確かめるために自ら死を選ぶ主人公。ゲームならば、ゲーム終了で、現実に目覚めることになり、現実ならば死に至るという怖い結末になる。

バーチャルリアリティーってなんだか怖い世界だなと子供心に植え付けられた記憶がある。
現在、ここまでリアルなバーチャルリアリティーのゲーム機はまだ開発されていないものの、これから開発が進み、そんなような事態が起きる可能性もあるかもしれない。

しかし、今の段階でバーチャルリアリティーはかならずしも怖いだけのものではない気がする。
分身ロボットカフェなど、人と人とつなぐツールとしてバーチャルリアリティーはかなり有効なものになってきている。
障がいを抱えている方が給仕してくれるロボットカフェなど、障がいがあっても働ける場があることは、人生において大きな意味を与えてくれるに違いない。
遠方にいる子供達がリモートで授業を受けられるようになるなど、学習の場が広がれば、社会の活性化につながるだろう。

テクノロジーも人があって成り立つもの。それをどう使うかはやっぱり人間側の問題かもしれない。




↓こちらでも記事を書いています。興味のある方は読んでみてください。



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