見出し画像

星の出ているうちに帰っておいで*手放し*she said epi41

 私が居ない世界が幸せならばそれでいい。ただ生きてくれさえいればいい。毎日笑っているかな?ご両親も元気にしてるかな?みんな笑顔で生活していれば、きっとユウも幸せだろうって思っていた。自分のことはわからなくなっていたけど、ユウの幸せを願っていた。

 またユウと共に歩ける。
こんなキセキは想像していなかった。私たちは終わったとばかり思っていたから…。心の底からの本当の願いが叶う時はもうすぐなんだ。

 「最愛の人と、一緒に暮らす事」
小さい頃から、唯一の誰かを探していたように思う。いつもそんな妄想をしていた私。とりあえず結婚して、子供にも恵まれた。私の人生はもう見えていると何にも感動することがなく淡々と生きていたあの頃。それでも、妄想の中ではいつも誰かを探していた。

 そして、ユウに出逢って私の人生は本当に望む未来へと大きく舵をきった…。

 ユウに会ってからは、その「誰か」を探さなくなった。ユウと離れてまた「誰か」を探していた自分に気付く。

 軽いお試しがきて揺さぶられている。統合にたどり着く、少し前のような気がしていた。

 ユウは再会してからというもの、「寂しい」「声を聞いていたい」「傍に居たい」と私にべったりだ。

 私たちは離れていた頃のことを沢山話した。
お互いに「もう自分のことは何とも思ってないんじゃないか?いや、そんなはずはない」と不安に思って迷走していた事。ユウは殻に閉じこもり、私は忘れるためにゴールがわからないまま行動し続けていた事。

 行動方法は違くとも、結局離れている時の気持ちは一緒。変わらず求めあっていた。

 ユウと私の考え方は対になっていると感じる。どうしてお互いが惹かれ合うのかと不思議な感覚になる時がある。先の事を考えると不安になることもあるけれど、サイレント前と比べると段違いに考え方の癖が外れていると感じていた。

 それでも、現実は離れた時のまま何も動いていない。その状況が私のエゴをえぐりまくった。過去は過去だと、もう新しいステージが始まったんだとどんなに言い聞かせようとしても怖くて不安で仕方がない。やっと同じ方向を向いて歩き出したことはわかっているのに…。
 
 でも、同じようにユウもまた離れていた時の私の行動に葛藤していた。私は、ユウと別れてから短期間で3人もの人と体の関係を持っている。このことは、絶対に隠し通していたい。でも、嘘も隠し事もできない関係。私の言葉の抑揚や、目の動きだけでユウは必ず見抜いてきた。

 当時の私はユウを忘れようと必死だった。でもその行動は、自分を無くし寂しさを埋めようとしていたことだった。ユウが聞いたら、絶対に悲しむことだと思っていた。だって、こんな女最低だ。自分でも「何やってるんだろ…」という思いがある。わかってしまったら、私を呆れて嫌いになると思っていて怖かった。でも、思ってもみない言葉が返ってくる。

「カコが悪いわけではない。軽い女でもない。俺にフラれて本当に辛かったから。俺が振ったのが悪くて、カコは前を向こうって思っただけだよ。全部俺のせいにしてよ。カコが自信を失って当然。俺がいないんだから。それだけカコは俺を愛しているということなんだ。全部俺のせい。だから、カコは毅然としていていい。自信を持って」

 私は女神でも聖人君子でもない。弱くてダメで傲慢で汚い部分だってある。それでも私は私。どんな私でもOKなんだとユウに受け入れられたことで、私自身もどんな自分も受け入れられていた。

 でも、ユウは辛そうで苦しそうに見えた。わかっているんだと言い聞かせているようにも見えた。
「こんな私を嫌いになってもいいんだよ。私が居ない方が楽に生きられる」
と言ったら「また自分を下げてる!」と怒られた。

 ユウは私の自信。それだけで奇跡。
でも、思うように動かない私たちの現実が私の自信を奪っていく。年齢的な焦りもある。あれだけ苦しかった過去が私を縛り付けて離さない。

 私が居ない方がみんな笑顔なんじゃないかな。ユウが守りたいものを守れるなら、一緒になる未来を私が諦めるのが一番いい。でも、私の望む未来をどうしても諦められない。

 ユウと始まった時はそれだけで良かったのに。近づくほどにもっともっとと欲張りになっていく。

 好きも嫌いも焦がれる気持ちも切なさも、とことん欲しかったり、諦めたいと思ったり。こんな気持ちはユウしかいないのに…。どうしても嫌いになれない苦しさの中で、また私はユウへ離婚を迫るようになってしまっていた。

 


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?