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VIRUNGA

2014年にレオナルド・ディカプリオが製作総指揮したNetflixオリジナルドキュメンタリー映画。
舞台となる場所はコンゴ。
アフリカにはコンゴ共和国とコンゴ民主共和国があって、この映画はコンゴ民主共和国の方に該当する。
ある国立公園とその公園を命懸けて守るレンジャー達の話だ。
その国立公園の名前が"VIRUNGA(ヴィルンガ)"。

こんなドキュメンタリーはきっと世界の情勢や自然、動物保護に関心がある人くらいしか見ないと思う。本当に素晴らしいドキュメンタリーなのに、どうでも良い映画やドラマの方がより多くの人の目に触れる社会に対してとてつもなく落胆してしまう。命を懸けて自然と野生動物を守る姿。これこそ人間の真の生き方だと思った。

映画の冒頭でコンゴの歴史をざっと解説してくれるのだが、資源も自然も動物も他の大陸より圧倒的に豊かであるアフリカ大陸を滅茶苦茶にし、そんな豊かな土地に住む現地の人々の生活を貧しくしたのはヨーロッパ諸国だと言わざるを得ない。

1994年にあの有名なルワンダ虐殺が起こる。この事件についてはもっと勉強する必要性があると感じた。人間というのは本当に残酷だとだけは言える。

2007年に密猟者によって9頭のゴリラが殺されてしまう。
レンジャーと村の人々が歌を唄いながら遺体を担ぐシーンには心を打たれた。
人間と動物がお互いをリスペクトし、共存している姿。とても美しい。

そして2010年にヴィルンガ国立公園内にある湖で石油が発見される。
これがまた新たな問題を引き起こすことになる。

イギリスのSOCOという石油会社がその資源に目をつけたのだ。
その石油会社の人は自分たちが儲けることだけを考え、そこに住む人々や動物、自然への影響なんて丸無視だ。
隠しカメラで撮影された映像に会社側の一人が、
「金がすベてを動かす」
とこぼしている。今の世の中は本当にそうだと思う。
例えば、私はこのドキュメンタリーをみんなが見るべきだと思うから
知人友人100人に「この映画素晴らしいから見て!」と頼むとする。
おそらく実際に見てくれる人は数人もしくはいないかもしれない。
でももし「見てくれたら5000円払うから見て」と言われたら
興味がなくても見る人は圧倒的に増えるだろう。
今の社会というものはこういうものだ。
どれだけ私が感情に訴えて社会の問題を提示しても、他人にとっては無関心なことであり、代わりにフィクションである映画やドラマに時間を費やすのだ。しかしお金が絡んでくると話は違う。お金は倫理観、感情、興味関心、そういったものを全て超越して人を行動に移すことができるのだ。

ヴィルンガ国立公園を純粋に守りたいと思う人、石油探査をしたい石油会社、その会社に買収された地元の人々が緊迫している状況の中で、政府軍と反政府軍(M23)の内戦が始まる。銃声が飛び交う中、何の罪もない現地の人々は大きな荷物を抱え、時にはまだ産まれてたった数ヶ月の赤ん坊を抱え、逃げ回る。状況を理解することができずに恐怖に怯え泣き叫ぶ小さな子供。それでも容赦なく戦車でドカンドカンと地響きを立てながら砲弾を放つ兵隊たち。。その映像だけで涙が出てきた。戦争がいかに悲しいものか。自分の家を離れることなく、平和に毎日を迎えることができることがどれだけ有難いことか。平和に生きれているのなら、のうのうとその場所で生きていれば良い訳ではない。この記事を読んだだけではこんなアフリカの問題もまだ他人事だと思うだろうが、決して他人事ではない。あなたが今使っているスマホやパソコンにはアフリカから採れた天然資源が使われているのだ。グローバル社会に生きている以上、世界中で起きている問題は全て自分に関わっていると思った方がいい。どこで自分がその問題に加担しているかなんて分からない。

公園を守るレンジャーに話を戻す。レンジャーは公園保護反対派にいつどこで殺されるか分からない日々の中警備に当たっており、実際に140人以上の人が亡くなっている。もしこの勇敢な人々が公園を守らなければ、とっくの昔に欲深い人間によって、公園内の自然と野生動物たちは破壊されているだろう。

公園内にルマンガボという保護施設があって、そこでは親を亡くした数匹のゴリラをかくまっている。そこで精を尽くして面倒を見ているのがアンドレ・バウマさんだ。家族のように触れ合い、自分は彼らの家族だよと伝える姿は人間の本来あるべき姿だと感じた。

今の世の中では、ビジネスで成功した人や芸能人といった人が1番世間の注目を浴び、影響力もある。ビジネスで成功することに関しては学ぶこともあるが、見た目が良いからという理由だけで注目の的になることができるモデルや俳優にはうんざりする。もちろん全員が全員そうではないが。レンジャーのようにもっと注目すべき、見習うべき人間がいるにも関わらず、なかなかそこにスポットライトが当たらない世の中に心底がっかりする。

現実を目の当たりにするということは辛い。精神的に落ち込んだことだって何回もある。でもその現実を実際に経験した人々の苦悩に比べたらなんてことはない。だからそんな苦境の中にいる人の声を少しでも多くの人に届けられたらと思ってできる限りのことをしているつもりだ。

このドキュメンタリーを危険承知で製作してくれた人々にも感謝を伝えたい。自然や野生動物、現地の人を想う人々がまだまだこの世界にはいる。それが分かっただけで希望は決して捨ててはならないと思った。


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