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ヘルマンヘッセ「春の嵐」Herman Hesse: Gertrud~恋と友情を描いた音楽小説


「恋とはなにか、ということが、ときおりはわかったような気がした。綺麗で気軽なリディに夢中になっていた少年時代すでに、私は恋を知っていたように思っていた。それからまたゲルトルートをはじめて見、彼女こそ自分の問いに対する答えであり、自分のぼんやりした願いに対する慰めであると感じたときにも、それからまた、苦しみがはじまり、友情と明澄さが情熱と暗黒になり、ついに彼女を失ったときにも、恋というものを知ったように思った。」

Manchmal hatte ich gemeint zu wissen,was Liebe sei.Schon in Jünglingszeiten ,da ich betört um die hübsche leichte Liddy schärmte,hatte ich Liebe zu kennen gemeint.Dann wieder,als ich Gertrud zuerst sah und fühlte,daß sie die Antwort auf meine Fragen und der Trost für meine dunklen Wünsche sei. Dann wieder,als die Pein begann und aus der Freundschaft und Klarheit Leidenshaft und Dunkel wurde,und schließlich,als sie mir verloren war.

 主人公クーンはそりすべりの事故で左足が不自由になり、音楽で身を立てようとヴァイオリンの稽古を懸命にする。あるとき歌手ムオトと出会い、彼との友情を通じてオペラ作曲家を志す。同時に音楽会で知り合ったゲルトルートという女性に恋をし、自分が書いた歌を歌ってもらったり幸福な時間を過ごす。しかし、ゲルトルートはクーンに友情以上の気持ちはなく親友ムオトと結婚してしまった。ムオトは結婚後アルコール依存で命を落とし、ゲルトルートは精神病から立ち直って、主人公の私との友情は変わらず続く。

 クートのゲルトルートへの想いが伝わってくるなかなか切ない物語でした。オペラ「魔笛」の話やベートーベンの話など音楽談義が随所に出てくるのが嬉しい。私の好きな小説「シラノ・ド・ベルジュラック」を思わせる清澄で美しい物語です。

 曲は、ヘルマンヘッセが好きな音楽家である、ヘンデルのオペラ「リナルド」から「私を泣かせてください」を。ジャルスキーの透明感あふれる歌声で。https://www.youtube.com/watch?v=KxnBjAaJWCc

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