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社会科授業を変える!〜学習内容の複線化〜

子どもたちの学ぶ姿を見ていて私が強く違和感を覚えたことがあります。それは、全員が同じ時間に同じ内容をやらなければいけないという制約が学びをつまらなくしてしまっているということです。

一人一人の興味・関心、学ぶ進度は当然違います。それにも関わらず、「この時間は◯◯について調べましょう」と時間も内容も決められてしまうと意欲は湧きません。私自身、学ぶことは人一倍好きです。しかし、人から全てを決められた研修や勉強に対しては、意欲が湧きません。

以前の記事で示した「変わらない社会科授業①」はその典型です。

教師の説明を聞きながら、黒板に書かれたことをノートに写す。提示された資料から、みんなが同じ情報を読み、そこから分かったことや考えたことを発表し合う。発表を聞き、先生がうまく黒板にまとめる。

なぜ、社会科授業は変わらないのか?

これは、時間と内容の制約がかなり大きく、学びの楽しさを奪い取ってしまっています。こうした授業を続けていたら、いつまでたっても社会科が好きな子どもは増えないと思います。

そこで、私の学級で取り組んでいて、子どもたちからも好評で効果を実感した取り組みを紹介します。「学習内容の複線化」です。簡単に言うと、同じ時間に同じ内容をやらなければいけないという制約を取っ払う取り組みです。

私が参考にしているのは、単元内自由進度学習と社会科ワークショップの実践です。蓑手章吾氏は『子どもが自ら学び出す!自由進度学習のはじめかた』の中で、「学びの楽しさを取り戻す」と表現されています。この考え方に強く共感していて、学びは本来楽しいもの、それをつまらなくしてしまっていると捉えています。

学び本来の楽しさを取り戻すために、子どもたち自身にテーマ・問いを選択・決定させ、追究する時間を設定します。ただし、ここで全てを丸投げしてしまうと、学びが浅いものになってしまいます。ここが迷いどころで、学びの自由度と学びの深さはバランスを保つ必要があると考えています。

学びの深さも担保するために、単元の方向性を決める「大きな問い」=「学習問題」は、教師の意図をしっかりと反映させることが重要です。資料提示を工夫することで、驚きや疑問を生み出し、子どもたちの「学びたい、調べたい、考えたい」という単元の学びに対する構えをつくります。

その後、テーマを選択させます。テーマは複数の中から選択できるだけで、子どもの意欲はまるで変わります。私は「変わらない社会科授業②」を以下のように示していました。

教師から与えられたテーマをもとに、教科書やネットから自由に調べる。調べたことをノートにまとめ、発表し合う。発表を聞き、先生が黒板にまとめる。

なぜ、社会科授業は変わらないのか?

つまり、教師から与えられたテーマが1つか複数かは、意欲に大きな違いを生むということです。

さらに、ここで大切なのが、複数あるテーマのどれを選んでも単元で獲得させたい概念的知識(中心概念)に到達できるように選定することです。ここを見誤ると、ただ調べたいことを調べさせて、結局学びが浅いまま終わってしまいます。勘の良いできる子だけが学びを深めることになります。

声を大にして伝えたいのは、全部学ばないといけないという固定観念は捨てましょうということです。学習指導要領で理解を求めているのは、概念的知識(中心概念)です。具体的な知識は、概念的知識に到達するための手がかりという位置付けです。もちろん、具体的な知識がなくては到達できません。しかし、全部学ばなくても到達できます。

私はこの話をするとき、よく山登りをイメージします。頂上というゴールに行くためには様々なルートがあります。ゴールという目的を果たすためには、どのルートで登っても構わないわけです。全部のルートで登っていないとゴールにならないとは思いませんよね。せっかく登った山を降りて、連続でまた違うルートで登り直すなんて辛すぎます。それは、山登りが好きで好きで仕方のない人だけがやればいい話です。

しかし、社会科の多くの学習は、全部のルートをしっかりと登らせて、ゴールに到達しようとしています。そして結果的に時数が足りなくなり、一方的に教えて知識を詰め込むという学習方法に陥ります。まずは、全部学ばないといけないという固定観念を捨て、子どもが無理なく追究・解決できるように複数のルート(テーマ)を準備しましょう。

そして、最終的に複数のテーマを追究した子たちが、どんなことが分かったのか、どんなことを考えたのか互いに発信し合えば、それぞれが学びを広げ深めることができます。

違うテーマを追究した人に発信するという機会はとても重要で、きちんと説明を尽くすないと理解してもらえません。同じテーマを追究していると、なんとなくあれだよね、はいはいとなりがちです。異質な他者との交流が分かりやすい説明の必然性をつくり出すのです。

具体的な実践例については、いくつかフォレスタネットにも掲載しております。ご興味ありましたら、そちらも読んでいただけると幸いです。また、『社会科ワークショップ』では、かなり詳細に実践が紹介されています。骨太な一冊ですが、じっくり学びたい方は読まれることをおすすめします。


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