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鏡の中の鏡



『アバウト・タイム 愛おしい時間について』
という映画のサントラを聴いていたら
流れてきた美しい響き。

タイトルを確認すると
『鏡の中の鏡』という曲。

やさしく語りかけるような
ピアノの三連音が鼓動だとしたら
それに応え重なるチェロの音色は呼吸のよう。

タイトルから浮かび上がってきたイメージは
合わせ鏡の中に
延々と繰り返し映り重なってゆく風景。

音楽とイメージが混じり合ったその瞬間
それがまるで
自分の身体の中の空洞の世界を
見せられているような気持ちになって
思わずハッとした。

人はこの空洞を埋めるために
何かを求めてもがいて生きているような
そんな気がするけど
そもそも埋める必要なんて
あるのかな?
この曲を聴いていると
そんな風に思わせられる。

自分の中に
こんなにも空洞があるなんて
実はものすごく
しあわせなことなんじゃないかって
思わせられる。

感じて
重なって
ひとつになれるのは
きっと空っぽの時だけだろう。

何にも染まらず
何にも埋められずにいる
森の中のトンネルのような
深い深い緑色をした自分の中の空洞に
さまざまな景色を映し通過させていく。

ずっと逆だと思っていた。

外の世界で見つけた
さまざまなトンネルを自分でくぐって
望んだ景色を見つけだしていくのが
人生だと思っていたけど
本当はそうじゃないのかもしれない。

自分の中をただ通過させる。

それがスムーズに行えない時は
一部通行止めだったり
事故してたり
何らかの原因があって
交通渋滞に巻き込まれてるときなんだろう。

何かに囚われて
本質を見失っているとき。

そういうときって
苦しいし辛い。

でも自分の中のことだから
交通整理すればいいだけなんだよね。

そしたらまた
スムーズに映し出されて
流れていく。

流れを止めていたのは
自分なんだとわかる。

空洞って
自分が何もないみたいで
昔はすごく怖かった。

だけど今は
そもそも自分なんてないなぁって
思うことの方が多い。

その時その時
必要なもの
出会った人や環境を映し出して
生きているだけ。

それは光や雲
水の流れと似ている。

なんの主張もしていないのに
目を奪われる
自然の美しさと同様に
調和の中にいる人間は
きっと美しく輝いているんだろう。

空洞と共に生きる。
それって
とっても素敵なことなんじゃないか。

わたしの心地よさは
そこにある気がする。

鏡の中の鏡。

目の前のものを
延々と映し出し輝ける
そんな自分っていいな。



(2017.11.09)


ご覧いただきありがとうございます✨ 読んでくださったあなたに 心地よい風景が広がりますように💚