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ホワイトドラゴン

数日間に亘り朦朧としていたある日、体調の悪さに眠りに着いた。
正直に言えば、このまま死ぬかもしれないと思っていた。
たいせつな人には、その日の調子の悪さが最悪もありえることを伝えていた。
いつもなら、大丈夫だよと言って余計な心配などさせないのだが。

いつの間にか、深く深く眠りに落ちていた。
そして俺は、夢の中で深い森を歩いていた。
見たことのない森の中である。
どこをどう歩いたのか分からないが、目の前に大きな岩が現れる。
苔も多く水が湧いている気配がする。
神聖な空気も感じて、心の中でここはいわゆる○○○○だな。と思った。
それを口に出して言おうとすると、誰かが心の中に直接話しかけてくる。
「その呼び方で言うな。」少し奇妙なことを言うなと思い、さらには心の中で思ったものが正解だと言われているのも同じだと少し可笑しくなった。
続いて「その四文字で呼び方を変えて言うのだ。」と言われた。
具合も悪く死ぬかもしれないという夢の中で、このような意味の分からない問答をすることになるとはと思いつつ、俺は考えた。朦朧としているのは夢の中でも同じで、頭が回転しない。四文字の組み合わせが間違っていないか確認したいがスマホもメモも何もないのである。それでも、四文字入れ替え出来ているはずだと思い言葉を作った。
そして、漢字四文字の組み合わせを変えて、○○○○と呼んでみた。

すると、大きい岩があって、俺がいて、その右側に2m前後の大きい米粒のような岩があるのだが、それが白くヒカリ出し、何やら動き出した。
当然、怖い気持ちなどにはならずウゴウゴしているその岩を見ていると、卵から孵化するように真っ白なドラゴンが誕生した。
大きさは、俺より少し大きく立派な形相をしている。だが、見た目と違いどこか生まれたてな感じのあどけなさがある。恐らく成長著しいのだろうが、知性はそれほど感じなかった。恐れ多くもあっという間に神の領域のものに成長するのであろうが、その時は実に可愛らしい知性の感じであった。
アルビノということでは一切ない。純粋に白い色を持っている感じだ。白というのは、クリアの積層であって本来「色」ではない。しかし、その龍は明らかに白い色で出来ている。とても不思議な色なのだ。このような生き物を見たのは生まれて初めてである。目だけは黒や黄だった気がする。

その真っ白の龍は、こちらを見て動かない。
俺は、問答をした大きい岩に向き直り「やっぱり思った通りだった。」と言った。しかし、何の返答もなくもう一つ言ってみた。
「組み替えた四文字は、どうしたら良いか?」すると、記憶は定かではないのだが「使うが良い。」と聞こえたような「何でもないこと。」と聞こえたような気がした。
何しろ、そんな状態で寝ている時の話だ。正直言って、どこまで記憶なのか想像なのかなど、目が覚めて分かる筈がない。

夢に戻るが、俺は、大きい岩(名前は分かっている)と、その小さい真っ白の龍に挨拶をして、その場所を後にした。
死なずに目が覚めたのは言うまでもない。それから数日の間、死にはしないだろうが相応の苦しさの中で過ごし、幾夜かを越え病気を克服した。

あの岩と白い龍に夢で出会ってから回復したと言っても過言ではない。
回復してすぐに、その場所があるかg-mapで探してみた。
地球は広い。もしも日本だったとしてもそう簡単に見つかるわけがない。と、思って探し始めたのだが、どうやら3分で見つけてしまったようだ。
組み替えた四文字で検索したのだ。ワードが当てはまったなら簡単であるのだが、実は、そうではなかった。組み合わせ四文字で検索はしたが、当てはまる文字は、1字だけだった。それなのに、そこしかヒットしないのだ。
これはもう、ネット検索というものではなく、その場所を俺に知らしめているのだと納得するしかなかった。
そのそばには道路が走っており、幾度か通ったことがある場所だった。しかし、そこから分け入った場所に、そのような岩などがあるとは思いもよらなかった。

もう少し回復したら、行ってみるつもりだ。
ホワイトドラゴンの卵は、あるのだろうか?
夢で孵化したからもうないのだろうか?

夢で見た場所は、現実にある場所だった。
それだけでもロマンのある話だ。
そして、そこで真っ白の龍の誕生を見たのだから、本当に運がいい。
実際に行った時、あの四文字を忘れないように言ってみようと思う。

いつ行くのが良いだろうか、実は少し楽しみに思っている。

続き
https://note.com/cocoro_no_tabi/n/n9b0650a933d6