感じること

視覚、聴覚、味覚、温度・痛み・肌触りなどの皮膚感覚。私たちは片時も休まず、様々な刺激を感じています。私たちは同じ刺激は誰もが同じように感じると思いがちですが、そうではありません。感じ方は人それぞれです。

発達障害の子ども達は、しばしば感覚過敏があると言われます。例えば、遠くを飛ぶ飛行機の音、冷蔵庫から聞こえる低い音、天井にぶら下がる七夕飾り、極度の偏食、洋服のタグ、靴下ぎらい、、etc。感覚過敏があることで、集団活動にスムーズに参加できないということが少なくありません。

日常生活を送る中で、刺激には大事な刺激もあれば、どうでもいい刺激もあります。どうでもいい刺激は脳が勝手にキャンセリングしてくれるので、気になりません。でも、キャンセリングの調節ができないとどうなるでしょう。下着の肌触りが気になり、襟のタグが気になり、ズボンのポケットの中身が気になり、、遠くの救急車が、友達のざわつきが、椅子が床をする音、クーラーの音、赤ちゃんの泣き声、、、。カオスです。カオス世界の刺激にいちいち反応する子もいれば、カオスを避けて自分の興味のある刺激だけに集中し、それ以外を全部キャンセリングする子もいます。何れにしても、そんな状況で自分への言葉かけを抽出するなんて至難の技、不可能です。相手と1対1ならまだしも、保育園や学校のような1対 “集団”の中だと、なおさらです。

病院には感覚を調べる検査があり、聴力、視力、体性感覚(肌感覚)などが調べられますが、分かるのは聞こえるか、見えるか、感じるか、どのくらい大きかったら見えるのか、聞こえるのか、などの量的な評価です。子どもたちが感じている音色、色合い、肌触りなどの質的な評価はできません。本来は質的評価こそ大事なのに、大事なことは調べられないのです。じゃあ、どうするか。

“想像する”

子ども達の行動をよく観察し、彼らがどのように感じ、考え、行動しているのか、想いを馳せる。自分の尺度で評価せず、子ども達の尺度を見つける努力をする。言葉が話せる子であれば、ハプニングが起こった時にまずその子の話を否定せず、まるごと受け入れ、その子の想いを拾い上げる。行動療法やソーシャルスキルトレーニングのように確立した手法はありませんが、上手に子ども達と関わっているお母さん、学校の先生、保育士さんはみなさん想像力が豊かです。忙しい生活の中で、ゆっくり子ども達と関わることは難しいかもしれませんが、不思議な行動をする子ども達の頭の中で起こっていることを少しでも想像してみて下さい。きっと楽しいはずです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?