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適切なシステム選択のABC

凝りもせずまたご無沙汰してしまいました・・・
前回に引き続き、アパレルとテクノロジーの架け橋シリーズ第三弾。第一弾、第二弾とシステム開発する際の手法をアパレルのものづくりになぞらえた形で書かせていただきました。

さて、今回は本当にDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタルによる変革)と耳にすることが多くなった昨今、そもそもの自社で使用する基幹/業務システム(会計・生産・販売・在庫・顧客管理など)の見直しや選び方について深堀りしてみたいと思います。一体どのシステムが自社にとって最適なのか、コロナで業績も芳しくないのにこの費用を掛ける(投資する)べきなのか・・・私自身が仕事を行う中でそのような声を耳にすることも多く、そういったお悩みの参考になれば幸いです。

オンプレミス・・・クラウド・・・SaaS・・・???

まずはじめに、オンプレミスクラウドの話をします。よくあるインストール型のパッケージソフトウェアがあると思いますが、それがオンプレミス(以下オンプレ)です。オンプレとは自社運用の意味で、自社内でソフトウェアやネットワーク、サーバなどのITインフラを管理・運用します。最近ではプライベートクラウドで管理する場合が多いかもしれません。いずれもその会社専用の環境でソフトウェアを利用します。それに対し、クラウドはオープンなクラウド上(=パブリッククラウド)にあるソフトウェアを、インストールすることなくWEBブラウザなどで利用できる仕組み(=サービス)です。 また、オンプレとクラウドの良いとこ取りとして、ハイブリットクラウドというものもあります。オンプレが自社オフィスであれば、クラウドはシェアオフィス、ハイブリットクラウドはシェアオフィスの中の自社専用個室(鍵付き)と言えば、特徴とセキュリティ面でのイメージがつきやすいかもしれません。

次にSaaSについてですが、SaaSはsoftware as a service(サービスとしてのソフトウェア)という意味で、クラウドサービスと同義と思ってください。Microsoft office 365、GmailなどのGoogle Workspace(旧Gsuits)や、CMでも見かけるslack、freeeやsmartHRなどがあります。誰もが知るグローバルSaaSから機能別の国内SaaSに加え、最近ではアパレル専門などの業界特化型SaaSも続々増えていますね。

3つに分けて特徴とメリットデメリットをまとめて解説してみた

さて、少し複雑になってきたかもしれませんので、選択肢を3つに分けそれぞれの一般的な特徴を下表にまとめてみました。(クリックで拡大します)

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まず、①オンプレミス 基幹/業務システムについて。

①オンプレミス 基幹/業務システムのメリット
✓業務に合わせてカスタマイズでき、他システムとも連携しやすい
✓セキュリティ面で安全性が高い
✓固定費が明瞭

デメリット
✓導入までの時間と初期費用が多く掛かる
✓運用コストが掛かる(自社内でサーバやデータベースの管理、それに伴う人材が必要)
✓複雑な画面設計が多い

カスタマイズとセキュリティ面を最優先する場合は堅牢性の高い①が良いです。自社に運用管理できるリソースが既にあり、効率化できる業務フローが確立されている、機密情報を取り扱う場合などはおすすめです。その分コスト面はお高め。アパレル業界専門システムもこの①タイプが多く、販売・在庫管理など高額(数百万~億とか!)ながら、リースや補助金で導入しているケースも多いようです。使い勝手に関しては、機能性が高いですが複雑な画面設計がまだまだ多いイメージです(ザ・システム!な画面)機能がたくさんあってもなかなか使いこなせていないという声も耳タコで、自社にとって過剰な機能とコストでないか、キチンと見直すことが重要です。

次に②基幹/業務系クラウドサービス(SaaS)について。

②基幹/業務系クラウドサービス(SaaS)のメリット
✓常に最新版が使える
✓初期費用がほぼ0で導入しやすい
✓インターネット環境さえあれば場所を問わず、モバイルでも利用可能
✓画面設計がシンプル

デメリット
✓カスタマイズが難しい
✓特殊な業務にはマッチしない
✓長期的なランニングコストを考えると➀より割高になる場合あり

初期費用を掛けずサクッと導入したいなら断然②がおすすめです。①~③の中で一番楽で、サポートも充実している場合が多いです。一方、カスタマイズが基本的にできず、システムへ業務を合わせる運用が必要となります。ただ、利用者の要望が多ければ反映されやすく、常に最新版のシステムを利用できるという点もメリットでしょう。使い勝手に関しては基本的に画面や操作性がシンプルでマニュアルが不要なイメージです。というのも、常に開発し機能が追加され画面が変化するため、できるだけ直感的に利用してもらえるようUIを設計しているケースが多いからです。合理的ですよね。あとは③にも共通しますが、稀にAWSなどのクラウドサービスプラットフォームの障害でサービスが全く利用できなくなる場合があります。障害対応もセキュリティ面も、クラウド事業者の対策次第という面がありますが、利用者をたくさん増やすことが目的のビジネスモデルですし、そこまで心配する必要はない?と思います。アパレル生産向けの販売・在庫管理系SaaSが希少なので増えてほしいですね〜(製品ではなく生地をm管理できるなど; SaaSであったら教えてください!)

最後に③自由度の高いSaaSの組合せについて。これは自由度の高いSaaS(Google WorkspeaceやOffice365、チャットツールのSlackやタスク管理のTrello、社内WikiのNotionやKibelaなど…)を連携したり、Google Apps Script(通称GAS; Googleが提供しているプログラミング言語)を用いて社内で簡易的なソフトウェアを内製化(システム化)するイメージです。

③自由度の高いSaaSを組合せて使う場合のメリット
✓費用が最小限
✓業務に合わせて自由に構築可能

デメリット
✓属人的になりやすい
✓運用に工夫が必要 (内部統制的視点/壊れやすいなど)
✓高度なITスキルが必要

すでに社内で様々なSaaSを使いこなしていたり、小規模な場合は③で充分かもしれません。とにかく費用が安くあがる上に出来ることがめちゃくちゃあるので、自社の使い勝手の良いようにいくらでも工夫することが可能です。ですがそれなりのITスキルが(利用者側にも)必要になり、属人化しやすい点(作った人しか修正できないなど)がデメリットです。ベンチャーで上場を目指すなどの場合は、セキュリティ面や改ざんできない運用など内部統制的な視点も考慮する必要があります。また、SaaSの機能や画面のバージョンアップ時に仕様変更で連携できなくなる可能性もありますね。

参考: SaaS連携マップ created by BizteX →超便利です

①~③をスーツに例えるなら、①はオーダーメイドのスーツ、②はリーズナブルな既成品のスーツやセットアップ、 ③は生地や製品を購入して自分で創作orコーデするセットアップもしくはきれいめスタイルという感じでしょうか。高くても自分に合ったバッチリなものを選ぶか否か、自社の規模や社内リソースを考慮して選択することがカギになります。

システム選択の前に必要なこと

そして話は前後しますが、システム選択の前に大切なことがあります。それは導入の目的を整理すること、システム導入後の運用がスムーズになるよう設計することです。既存業務を効率化/コスト削減するためなのか、新規事業のためなのか――新規事業であればシステムに業務を合わせてみる、既存業務の効率化の場合は実際利用する人の意見も聞きながら新しく業務を再構築(業務設計)し、マッチしたものやカスタマイズできるもの選択する、導入障壁の少ないSaaSを小規模で利用して掴んでみる、など。目的を明確化するといろいろと選択肢が絞られてきます。経営戦略にも関わる重要な部分ですが、この辺りシステム導入が目的になりがちで、導入後逆に非効率化した、現場から反発が起きたなんて事がとても多いです。システム導入する事で組織変革や評価制度の変更が必要になる場合もあるでしょう。経営陣だけで決めるのでもなく、現場に丸投げするでもなく、会社一丸となって行った方が後々スムーズです。結構大変ですが、成長痛と思って乗り切っていただきたいです。これまでの”慣れ”に囚われず、慣れを味方につけることがコツですかね。(人はすぐ慣れるので)

さいごに

長くなってしまいましたが、如何でしたでしょうか。今回も何かのヒントになれば幸いです。

個人的な意見として、社員全員のITリテラシーと柔軟性を向上させることでコストを極限まで下げられるのでは説(教育の重要性)と、一方ですべてのソフトウェアがシンプルで複雑性少なく、たくさんの人が使えるような価格になったらいろいろと劇的に変わるのでは説に可能性を感じています。

最後までお読みいただきありがとうございました!

参考:
SaaSの2つの種類とは?具体的なサービス例や活用法も紹介
パブリッククラウドとプライベートクラウドどうやって使い分ける?
【Google Apps Script入門】GASでできることや活用方法まで紹介!


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