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単純が重なり合う幸福

-20℃、最低気温の平均値が日本一低い北海道・陸別町にある銀河の森天文台に足を運んだ。少し歩けば鼻の中まで凍りそうな外気。でも、私は約1時間、その寒さを忘れて星と惑星を見た。

免許がない私は、こういう交通手段のない場所にいくには夫の協力が不可欠なのだが、それに加えて、この場所は夫が見つけてくれた。思えば数年前から行きたいと言っていた場所。ミーハーな観光地しかわからない私は、最初聞いた時ピンと来なかったし、なんから今日も車を走らせる道中、どんなもんなのか不安でしょうがなかった。

街灯も人の気配もない寂しい道、本当に天文台なんてあるんだろうか。星なんて見えるんだろうか。正直半信半疑だったのだが、その場所は高台の上で唯一光を放って佇んでいた。

話は変わるが、私は星が好きだ。特に好きなものとして名前をあげたことはないが、趣味全開の結婚式は招待状も披露宴の登場曲も星にまつわるもの。何度も読みたくて持ち歩く小説は、星の王子様と銀河鉄道の夜。加えて持ち歩き用のモレスキンダイアリーは星の王子さまデザイン。フリクションも星座があしらわれた限定デザイン。

なんで星にこんなにも心が惹かれるのかは正直覚えていない。しかし、中学生の頃好きだったアイドルが宇宙が好き、いつか星に行ってみたいと話していたのを聞いて「え!嬉しい」と思ったことがあるので、たぶんその前から好きだった気がする。

でも、正直、詳しいわけではない。星が見えるロケーションは好きだが、何度見ても詳しい天体の名前はわからないし、高校生の時に地学を選択して勉強したものの、難しい上に、気が遠くなるようなスケールの大きさにロマンどころか怖さが先行したのを覚えている。

そんな私が時間、労力、お金をかけて天文台に行くなんて、夢のまた夢なのだが、運が良いことに夫も星が好きだったので、今回は赴くことができた。

機械の力でしか動かせないほど大きい115cm望遠鏡「りくり」で月のクレーターを見ることができたし、生まれて初めて冥王星や双子の兄星(キキララちゃんだ!)、土星を見ることができた。

そして、ふと思ったことがある。ここに来れたのは当たり前じゃないということだ。

もしも夫と私、どちらかしか星が好きじゃなかったら、旅行に行けるほどの経済的余裕がなかったら、時間を合わせることができなかったら、コロナ禍真っ只中だったら、施設が閉まっていたら……いろんなたらればを乗り越えて、この場所に来れたのだ。

実はこの場所、当初は昨日行くはずだった。しかし、仕事の兼ね合い、体調の兼ね合いで、北海道入りしてから、別の予定と合わせて今日にずらしたのだ。その一方、何よりも懸念していたのが天気だった。もともと木曜が晴れ、金曜が曇りの予報だったからだ。しかし、現実は、昨日は驚くほど雪が降っていて星どころか月さえも見るのが難しく、今日は快晴。もしも日程をずらしていなかったら、私たちはオリオン座をはっきりと認知できるほど見ることができなかった、そう思うと感謝が溢れてきたのだ。

この話に限ったことではなく、世の中は単純なことの積み重ねが形になって現れることがある。そう考えると、当たり前なんて言葉、本当はないのかもしれない。眩しいほどに輝く星を観ながら、幸せを噛み締めた。

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