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太陽と虹が重なる頃に…(5)

すると奏の手が小刻みに震えて始め、突然手を合わせた。
悠也には何をするのか分からなかった。
男の方はというと奏が手を合わせていることなど気付いていなかった。
「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空度一切苦厄 ……」
奏は突然、訳の分からないことを言い出し、悠也は不思議そうな顔で奏を見る事しかできなかった。
すると男の顔からは笑顔が消え、男の体は少しずつ砂になり、地面へ落ちていく。
悠也は驚きを隠しきれず奏の顔を見るが奏は何もないかのように謎の言葉を唱え続ける。
地面に落ちた砂は奏のお経のような言葉で火が付き燃え、灰になり、風に飛ばされていった。
「い、いつの間にこんな能力身に付けたの?」
悠也は恐る恐る聞いた。
「天空界ではこのくらいみんなできるよ?」
そう言い奏は微笑んだ。
空を見ると綺麗なオレンジ色の空が広がっていた。
それを見るなり奏は悠也の手を強く握り「ありがとう」そう言った。
「か、体が…… 透けてる……」
悠也はただ驚くこと以外、何もしてあげられることができなかった。
奏は悲しそうな顔をした。
「もう蘇りの木の実の効果はほとんどないみたい…… 久しぶりに会えて嬉しかったし、色んなとこ行けて楽しかった。」
「ちょ、ちょっと待てよ‼ まだ二人で行きたいことかいっぱいあったし、もっと二人でいたかったのに……」
悠也は今の現実を認めたくなかった。
しかし、奏は優しく微笑み「じゃあね」と言い、消えていった。
悠也は悲しみに暮れ人の目も気にせず泣き崩れた。

一か月後、悠也は彼女のお墓を訪ねた。
立派な花を手向けみかんを供えて帰った。
また何処かで彼女に会えることを信じて……。
未来を信じて……


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