見出し画像

三体廃人

三体廃人とは、中国SFドラマ「三体」にハマりすぎて、他に見るべき録画番組があっても三体ばかりを繰り返し何度も見ずにはいられなくなってしまった人のことである。

(私の定義)

というわけで、現在すっかりドラマ三体の犠牲になっています。全30回、昨年10月頃から何度かwowowで放送されていて、オンデマンドでも見られるため、見たくなるとつい見てしまうのです。

世界的に大ヒットした劉慈欣の小説「三体」の第一部をドラマ化したもので、この小説は日本語版も2019年から売られているのですが、恥ずかしながら全く知りませんでした。今だに読んでおらず、ここで書く内容は原作を読まずにドラマにハマった者の感想として読んで下さい。


きっかけは芦田愛菜ちゃん?

中国ドラマは一度も見たことがなかったのですが、ある日テレビをつけたところ、芦田愛菜ちゃんの大人になった人が流暢な中国語を話していました。すごいな、もうこんなに大人になって、中国語で演技もできるなんて、としばらく見ていたところ、どうも芦田愛菜ちゃんではなく本物の中国人のようです。

原作にはない慕星(ムー・シン)というジャーナリスト役の人

何やら謎を追っているような内容で、その雰囲気に吸い込まれ、さらにエンディングの謎めいた曲がよく、最初から見たくなってしまったのです。

三体とはどんなドラマか

原作もドラマも人気で、noteでもたびたび取り上げられていますね。原作とドラマでは違いがあるものの、基本的には原作に忠実に作られたところが評価されているようです。私なりにドラマ版の「三体」をまとめるとこんな感じです。ネタバレですので注意して下さい。

北京オリンピック開催の迫る2007年、「物理学は存在しない」という謎の遺書を残して、世界各地で著名な物理学者たちが次々と自殺していきます。その原因を探っていくうち、科学境界(科学フロンティア)という学術組織が関係していることがわかります。主人公であるナノマテリアルの研究者、汪淼(ワン・ミャオ)がそこに潜入して調べるよう軍から依頼を受け、初めは拒否していますが次第に巻き込まれていきます。

科学境界(科学の限界を検証するという意味での「境界」らしい)のリーダーらしき女性物理学者、申玉菲(シェン・ユーフェイ、名刺には「しんぎょくひ」とよみがなが振ってあって日本在住らしい)と接触するうち、汪淼はカウントダウンする数字が見えるようになったり、宇宙の明滅を経験したり、科学的に説明できないことを次々と経験して頭がおかしくなりそうになります。他の物理学者もこうして自殺に追いやられたのでしょうか。いや、もっと具体的な原因があることが最終回あたりで明らかになります。

一方で汪淼は、葉文潔(イエ・ウェンジェ)という引退した女性天体物理学者と接触します。この人はもうひとりの主人公のような重要人物で、若いときに人類で初めて宇宙にメッセージをひそかに送り、返事を得たというすごい人です。

このメッセージを送ってきた星は、太陽が3つあり、その走行が予測できない(これが「三体問題」です)ために気候変動に耐えられず、星を脱出して新たに住める星を探しているところでした。この星がどんな星か、汪淼たちは「VRゲーム三体」を通して知っていく、という構成になっています。

地球にとってはそれは侵略になるかもしれず危険を伴うので、このメッセージに応答するなと善良なその三体人は警告するのですが、文化大革命で深く傷つき人類に絶望していた葉文潔は「この星を立て直して」と応答してしまいます。それが全ての始まりだった、もう止められない、という話が続いていきます。

なぜハマっているのか

ストーリーはだいたい今書いた通りなのですが、私がなぜハマったのか考えてみると、ストーリー以外にも4つのことが影響しているように思います。

①アートとして優れている
見惚れるような見事な映像が次々と出てきます。それを見ているだけでも気持ちよく、また見たくなってしまうのです。

シンメトリーのシーンが多いです
ちょっとしたシーンにもこだわりが

②音楽が素敵
オープニングにもエンディングにも複数の曲が使われていて、どれも私好みのミステリアス系です。apple musicやYouTubeで音楽だけ聞くこともあります。音楽担当は陳雪燃という方ですが、それ以外にも周深、王嘉城という方たちの曲が使われています。中国人ミュージシャンは全くわからないので、このドラマを通して知ったくらいです。
③シュール
発想が、少なくとも私にとってはちょっとシュールです。過酷な環境に耐えるため三体人が獲得した能力「脱水」はちょっと怖すぎるし、古筝作戦はちょっと残酷すぎませんかと思うし、驚かされることが多かったです。最終話が一番シュールですが、ここまで見てから第1回を見直すと、最初に見たときには気づかなかったものが見えてきて感動します。ああそういう視点を表していたのかと。
④色即是空の話が出てくる
申玉菲の夫で数学者の魏成(ウェイ・チョン)の話が好きすぎて、「魏成と3つの球」の回では、ソファから降りてテレビの前で正座して見てしまいました。この人は天才数学者なのですが、社会生活能力がゼロの数学サヴァンです。自分が嫌になり寺にこもって色即是空について考えていると、自分にとっての空は三体問題を解くことだと気づき、以来狂ったように解き続けるという話です。

池の前で沈思黙考する魏成

唯一このドラマが残念だと思うのは、医学面があまりにも弱いところです。カウントダウンが見えるという症状に対して眼科に行き、飛蚊症といわれ、そうでないとしたら心の問題でしょうと言われます(しかも妻が医者なのに)。こんな奇妙な視覚異常があったら、まず脳を調べてほしいと脳神経内科医としては思いますね。また、後半汪淼の盟友史強(シー・チアン)が被曝した後の症状に関してもかなり雑な扱いでした。医療監修はしっかりやっていただきたいです。

やはり私は三体廃人ですね😅いつもだいたい1200字程度で書くようにしているのですが、だいぶ長くなってしまいました。今はhuluやTELASAなどでも見られるようですから、興味が出た方は見てみることをお薦めします。予告編もなかなかよくできているのでごらん下さい。


この記事が参加している募集

スキしてみて

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?