Community_Lifeのコピー

コミュニティデザイン3.0のその先

こんにちは。コミュニティ情報のおっかけnagata(@SsfRn)です。

最近読んでいる、山崎亮さんの「コミュニティデザインの時代〜自分たちで”まち”をつくる〜」に興味深いことが書かれていたので、そこについてまとめて、自分なりに掘ってみようと思います。

山崎さんは、この本の中でコミュニティデザインには、1.0~3.0の3つの種類があると述べています。まずはそこを順に見ていきたいと思います。


コミュニティデザイン1.0

はじめはコミュニティデザイン1.0です。

1960〜1970年の頃、生活する場所をデザインすることで、コミュニティを生み出そうとした試みがありました。つまり、コミュニティデザイン1.0とは「ハード整備によってコミュニティをつくり出すという発想のコミュニティデザイン」です。

この発想になった理由には、ワルター・グロピウスというドイツの建築家の思想が影響しているといいいます。彼は論文で、当時の現代社会の問題は「人間関係の希薄化」と「隣人に対する無関心」から生じているとし、「コミュニティの再建こそ現代社会を救う唯一の道」と結論づけています。具体的には、新しく開発される住宅地の中心に公民館やプールや体育館などを集めた「コミュニティセンター」をつくり、人々がそこに集まり、会話し、関係性を生み出すような都市の形態を提案しました。

グロピウスの考えはすぐ日本でも紹介され、郊外における住宅地の開発に生かされたといいます。大規模なニュータウンには、必ず「コミュニティセンター」や「コミュニティプラザ」となるものがつくられ、ハード整備によってコミュニティを生み出そうという努力が繰り返されました。日本のコミュニティセンターには、どんな施設が必要なのか?ニュータウンはどういう配置だと、居住者同士の会話を生み出せるのか?そのような議論が活発だったそうです。

こうした試みは一定の成果を出すも、ある課題も生じてしまいました。それがコミュニティデザイン2.0へとつながっていきます。


コミュニティデザイン2.0

地域の人間関係を生み出すようにデザインされた住宅地でしたが、そのデザインの主体は専門家だけであり、その地域に住む住民の意見が反映されていない場合が多かったのです。行政と専門家だけで公共施設がデザインされ、住民はそれを甘んじて受け入れるだけ。中には、住民のニーズと合わない住宅地も作られ、ほとんど誰にも使われない施設もあったとのことです。

そこで「公共施設のデザインは、将来その施設を使う住民とともに考えるべきではないか?」という発想が生まれたのがコミュニティデザイン2.0です。つまり「コミュニティによる施設のデザイン」ということですね。この動きが見られたのは1980年〜で、下記の流れが期待されていました。

「住民が計画から参加することで、その施設が出来上がった後も施設を大切にするし、使ってくれるだろうし、施設管理にも関わってくれるはずだ。さらに、そのプロセスで人と人のつながりは強固なものにもなるので、理想のコミュニティができるはずだ。」と。

このコミュニティデザインの目的は「コミュニティが参加して公共施設をデザインすることにより、住民のコミュニティ意識を高める」ことでした。

この考えには、1.0に引き続き、ハード整備を前提としています。例えば、町にとある公園を作るプロジェクトがあり、そのために集まった住民・行政・専門家、彼らの繋がりがプロセスを経て強固なものになっても、公園が完成してしまえば、もうこのメンバーで集まることがありません。山崎さんはその現状を目の当たりにして”もったいない”と感じたそうです。確かに、目的を達成してしまえば彼らにとって集まる意味はないのかもしれません。そのために集まったのですから。ただ、別にハード整備がなくても人は集まるのではないか?と山崎さんは考え始めます。


コミュニティデザイン3.0

”ものをつくらないけど人を集める”2000年に始まったこの考え方。

これに当時のまちづくり関係者は「設計案件がないのに、どうやって人集めるんだ?」と疑問だらけだったといいます。きっかけや方法もわからない。そんな状況でした。

今の時代の私たちにとっては当たり前かもしれませんが「施設を作るという理由だけで人が集まるわけではない。楽しいことが始まるということだけで人は集まる。」と山崎さんは気付いたそうです。

山崎さん「集まるきっかけは何であれ、そこに人のつながりがうまれ、コミュニティが誕生し、地域の課題を乗り越えることがあれば、それはコミュニティデザインがこれまで目指してきたものと同じではないか。」

これがコミュニティデザイン3.0誕生の瞬間でした。

「ものをつくることを前提としないコミュニティデザイン」こそが、コミュニティデザイン3.0と、山崎さんは定義づけました。


その先にあるものとは?

以上がコミュニティデザインの変貌です。

現在でも、それぞれ1.0~3.0の手法は生きているし、並列して活用されることもあるといいます。では、これからのコミュニティデザインとはどういったものになっていくのでしょうか?

そのヒントが、この「コミュニティデザイナーの役割は、“楽しさ”と“課題解決”をつなぐこと――studio-L・山崎亮さんのまちづくり」中にありました。

これは、山崎さんがコミュニティデザインの仕事について語っているインタビュー記事ですが、途中SNSについてこう述べています。

山崎さん「リアルでの交流が担保されているという前提で、そこに地域特化のSNSが加わると、コミュニティの成長はより加速していくと思います。今はFacebookで非公開グループを作って、そこに住民を招待して……という形でオンライン上のコミュニティを作ってますが、確かにちょっと面倒です」

すでにFacebookを活用したオンラインコミュニティもあるとのこと。これには正直、驚きました。地域には高齢者の割合が高いと思っていたので、SNSの操作は難しく感じてしまうのではないか?と。

しかし、それは私の思い込みであり、現実は違っていたようです。地方自治体ではSNSを活用した事例もあり(地方自治体から学ぶソーシャルマーケティングの活用方法 / ferret)、webサービスを活用した地域活性の動きも活発です(次はあなたの街かも! 地域活性化×Webサービス 最新事例10選 / LISKUL)。ここに住民もSNSを活用してるとなると、地方の近代化が進んでいることが明確かと思います。

このような状況の中、コミュニティデザインには、どのような手法が生まれることが考えられるのか?それは「SNSを活用したコミュニケーションの加速と、幅の拡大」なのではないでしょうか。これまでのコミュニティデザインは、ハード整備がなくなったとは言え、オフラインでしかコミュニケーションが取れないし、それだとスピード感は都内の仕事のように早くはありません。もしかしたら機会損失をしているかもしれませんでした。それが、SNSを活用することで、コミュニケーションスピードは確実に向上するし、発言したいときに発言できるようになります。さらに、地域と都心のコミュニケーションが生まれることも想像でき、地方移住に興味ある若者の巻き込みも生まれる可能性があります。いや、すでにあるのかもしれません。

ただ、それだとオフラインの場が減って、本末転倒になるのでは?

そう感じる人もいるかと思います。ここで大切なのは、「リアルを前提とした、オンラインの活用」です。つまり、オフラインとオンライン、このバランスを取っていくことが重要になっていきます。これがコミュニティデザイナーに求められる新たな役割だと思います。今後もどんどんコミュニケーション手法が新しくなっていくと思いますが、適宜対応しその地域でどのようにコミュケーションを設計をし、コミュニティをつくっていくか?そして、それをどのように地域の問題解決につなげていくか?コミュニティデザイナーとしての役割を明確に持ちつつ、新たな手法をタイミングを見極めて取り入れると、新たな展開が望めるのではないでしょうか?

それでは!


●今回引用させていただいた本




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