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優しいお顔の神仏たちにお目にかかったお話

 東京ステーションギャラリーで2023/12/2~2024/2/12の日程で開催されている「みちのく いとしい仏たち」という展覧会へ、会期ギリギリの2/10に行ってきた。なぜ観に行ったかというとメインビジュアルになっている面長な像のプロポーションに惹かれたからだ。

なぜか公式ホームページは上手く埋め込みができなかったため「美術館ナビ」というサイトで代用する。見切れちゃった……。↓


東京ステーションギャラリーへ

 家族4人で行ってきた。東京メトロの改札から出て地上への階段を上っていると、件の像がお出迎えしてくれた。

こんな面白そうなの見るしかないやろ
東京ステーションギャラリー前

 いざ入館しチケットを購入、券を切ってもらうと、その半券と記念チケットをもらった。しっかりした紙のチケットってやっぱりいいな。

「おにーさん、ちょっくら寄ってかない?」
とでも言ってそうな立ち姿
展覧会のチラシ
やっぱりこのお方のお姿はやばい
チラシの裏

感想

 撮影は用意されたパネル等のフォトスポットでしか許可されておらず、もちろん展示品が撮れなかったため魅力的な神様仏様のお姿を皆様に見せられないのが残念だ。どれもこれも現役で信仰の対象、ご立派な方々だし状態が悪そうな像もあるため仕方ない。

こんなんでええんか? という説明

 まず面白いのは各セクションのタイトルとその説明だ。直近で国立西洋美術館のキュビスム展に何度も行っていたが、そこに掲げられていたようながっつりとした説明のパネルではなく、けっこう砕けた文章という印象を受けた。セクションの題だけでも紹介させていただこう。

SECTION1 ホトケとカミ
SECTION2 山と村のカミ
SECTION3 笑みをたたえる
SECTION4 いのりのかたち 宝積寺六観音像
SECTION5 ブイブイいわせる
SECTION6 やさしくしかって
SECTION7 大工 右衛門四良(えもんしろう)
SECTION8 かわいくて かなしくて

どうだろう、特に「ブイブイいわせる」とか「やさしくしかって」とかあたりに興味をそそられないだろうか? この砕けた文章と気の抜けた神仏像たちのおかげか、観覧者たちの談笑する声が聞こえるとても良い雰囲気の展覧会だった。私も主に弟と行動し、「こいつ(失礼)面白い!」などと話しながら楽しく回っていた。

キュビスム展の記事↓

不思議な造形の神仏たち

 次に神仏像を観た感想に移ろう。ここに来ていた像はみちのく、つまり東北地方の神社仏閣や個人の家に安置されている方々がほとんどで、多くは江戸時代のものだ。一部はある県の教育委員会とか民俗資料館とか、団体が所有しているものもあった。
 仏師でもない普通の大工さんのような素人が彫ったこれらの民間仏は、非常に素朴で味わいのあるお姿をしている。あのメインビジュアルの像は岩手県八幡平市のとある社に置かれた「山神像」だそうだ。大きく面長な頭部、彫りの浅い優しげな笑みをたたえた顔、太い首、四角い胴と一体化した小枝のような両手、頭より短い脚、そして横から観ると意外にも厚みがない……。プロでは成し得ない奇跡の造形だ。この山神様のように独特な木像が約130体も集合していた。みんなとても個性的で面白かった。

木像たちと人々の信仰

 難しい教典が理解できなくても、手を合わせる対象があれば人々は祈ることができた。そして対象としての役割を果たしてくれる木像は、荘厳な装飾や技巧に富んだ造形をしている必要は決してなかったのだ。200, 300年と人々と過ごし、虫に食われたり腕が外れたりしてもなお、祈りを一手に受け入れてきた木像たちの威厳に満ちた姿がそこにはあった。
 展覧会では10分くらいの映像で、今なお信仰されている木像たちが紹介されていた。あの山神様は林業を営む方々から信心されているそう。他に紹介されていた像も地域の方々からとても大切にされていた。神様仏様が優しげなお顔に見えるのは、人々から厚く信仰を受けてきた証かもしれない。

フォトスポットと売店にて

 とても楽しい展覧会だった。ひととおり見終わると、私のチケットにいるお方がまた何か言っている。

「おにーさん、写真撮ってかない?」
裏にフォトスポットがあることを教えてくれている
ついでにこのお方も撮影できた
フォトスポット①
件の山神様
フォトスポット②
ちょっと傾いててなんとも言えない表情

 しっかりフォトスポットで撮影をしたあと、売店で家族が図録を、私は山神様のファイルとポストカードを購入した。

山神様を家にもお迎えできました

さいごに

 地域で大切にされている像を130体あまり集めて展示するなんてことはそうそうできないだろう。今回展示されていた神様仏様にお目にかかることはもう叶わないかもしれない。だからこそ、今回の展覧会に行くことかできて本当によかった。かわいらしい木像たちのおかげでとても和やかな気持ちになることができた。
 日本は宗教観が薄く、その割に古今東西の風習を独自解釈したような行事(ハロウィンとかクリスマスとか)は多いイメージがあった。しかしこの国にも偶像とともに脈々と受け継がれてきた、名前のない信仰は確かに存在することを知ることができたのも大きかった。
 祈りには力があるのだろう。ということで徳川埋蔵金が庭から湧き出てくるよう山神様に手を合わせたところでお話を終わろう。ここまでおつき合いいただき誠にありがとうございました。

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