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悪貨は良貨を駆逐す-定野司の読むだけで使ってはいけない金言名句集

アルミニウム100%の1円玉の重さは1グラムです。
では、製造原価はいくらなのかご存じでしょうか?
約3.1円だそうです。
気になって、他の硬貨の原価も調べてみました。
独立行政法人国立印刷局(旧造幣局)は製造原価を公表していないので、ネット調べです(MUFGお金の、育て方)。
1円玉・・・約3.1円
5円玉・・・約10.1円
10円玉・・・約12.9円
50円玉・・・約12.1円
100円玉・・・約14.6円
500円玉・・・約19.9円
額面の小さい硬貨は、作れば作るほど赤字です。
でも、額面の大きな硬貨はぼろ儲け?
しかし、これには製造コストがかかっていますから、次に、それぞれの硬貨の原料費、溶かしたらいくらになるか知りたくなりました。
これもネット調べです(MUFGお金の、育て方)。
1円玉・・・0.29円
5円玉・・・約2.28円
10円玉・・・約3.5円
50円玉・・・約3.75円
100円玉・・・約4.5円
500円玉・・・約5.19円
1円玉以外は、銅をベースに亜鉛、スズ、ニッケルなどを混ぜた銅合金です。
金属(資源)の価値に比べ硬貨(お金)の価値の大きいことがわかります。
ちなみに、紙幣の製造コストは、1万円札が25.5円、5000円札が19.5円、1000円札が10.4円程度だそうです。
紙幣には偽造防止のために肖像画や日本の風景など、いろいろ描かれていて余白も少なく、メモにも使えず、燃やして得られるエネルギーもごく僅かでしょう。
紙(資源)としての価値はほとんどありません。
それでも、亡くなった母は1万円札(今より少し大判の、聖徳太子の描かれた壱萬圓札)にアイロンをかけていました。
昔の人は「現金」を大切に思っていたんですね(笑)。
話は遡って戦国時代。
日本では戦国大名がそれぞれ製造した金貨、銀貨を使っていました。
慶長6年(1601年)、江戸幕府は「金座」と「銀座」を開設し、金貨と銀貨を発行、通貨統一に乗り出します。
金貨は小判1枚=1両。それ以下を4進法の単位で表す貨幣が作られました(1両=4分=16朱)。
一方、銀貨の単位は匁(1匁≒3.75g)で、重さで価値を表す「秤量貨幣」でした。
「米」を中心とした物々交換の時代でしたから、貨幣の「資源」としての価値が重要だったのです。
この文化は現在の5円玉に引き継がれていて、なんと5円玉の重さは1匁です。
「関東の金遣い、関西の銀遣い」という言葉があります。
取引の決裁に金を使うか銀を使うか、江戸と大阪で大きな違いがありました。
金や銀の相場は変動するので、「両替商」が必要でした。
一方、庶民の使う銭貨(銅)は1枚=1文とする貨幣です。
江戸初期には銭貨を安く、大量に鋳造する技術が日本になく、中国から輸入した小銭(渡来銭)を使っていました。
「びた一文まけられない」の「びた」は、漢字で「金」と「悪」を合わせた「鐚」と書きますが、文字通り、価値の低い粗悪な銭貨だったようです。
寛永3年(1626年)、水戸の豪商佐藤新助が「寛永通寳」(水戸銭)を私作し、これが本格的な銭貨鋳造のきっかけになります。
銭形平次が悪人に投げつけていたのも、この「寛永通寳」です。
円形で中心部に正方形の穴が開けられ、表面には「寛永通寳」の文字が上下右左の順に刻印されています。
材質は、銅のほか、鉄、精鉄、真鍮のものがありました。
香川県観音寺市には、巨大砂製の「寛永通寶」があります。
一度見るとお金に不自由しない、財政課職員必見の砂絵です。
銭形が投げていたのは、裏面に十一波といわれる模様の入った4文銭でした。波が入っていないものは1文銭。
悪人を捕らえるのに「びた一文」ではいけません(笑)。
なお、アニメ「ルパン三世」に登場する銭形(幸一)警部は、銭形平次から数えて6代目の子孫に当たります。

さて、江戸幕府も50年もたつと、その放漫経営により家康の遺産(400万両)を食いつぶし財政難に陥っていました。
年貢の取り立て、金や銀の採掘、豪商からの借入れにも限度、限界があったのでしょう。
そこで考え出されたのが「元禄の改鋳」(1695年)でした。
勘定奉行荻原重秀は、それまで流通していた慶長小判を回収し、金の含有量を減らした元禄小判を発行します。
交換レートは1対1でしたが、1%のプレミアムを付けて交換することにしました。
しかし、元禄小判の金の含有量は、慶長小判の84.29%に比べ57.36%と、3割以上減少しています。
1%のプレミアムでは割に合わないと商人の反発を受け、なかなか交換は進みませんでした。
結局、幕府は慶長小判の流通禁止を布告し、力づくで貨幣改鋳を実現したのです。
元禄の改鋳によって幕府は500万両もの逆ザヤを稼いだとされていますが、これは当時の幕府予算の5倍に匹敵します。
金本位制から幕府の権威による管理通貨制へ、「元禄の改鋳」は現代につながる先駆的政策だったと言えるでしょう。
立役者となった荻原重秀でしたが、儒学者新井白石の策略で江戸城を追放されてしまいます。38年間の官僚生活でした。

悪貨は良貨を駆逐す。

名目価値が同じでも、質の異なる貨幣がある場合は、良貨はしまい込まれて市場から消え、悪貨だけが流通する。
Bad money drives out good.
16世紀、英国王室の財務顧問を担当していた貿易商トーマス・グレシャムが唱えた経済法則で、エリザベス一世に提出した意見書にある言葉です(グレシャムの法則)。
現在、日本では悪貨の保有(現金、預金)が金融資産全体の50%以上を占めていて、米国の10%、ユーロの30%と大きな違いがあります。
これがデフレスパイラルの一因にもなっているので、政府も盛んに投資を勧めています。
教育界では、2022年度から高等学校の新科目「公共」で金融経済、「家庭科」では資産形成の授業を開始。中学校でも金融リテラシー教育が始まっていて、金融や投資に関する知識を学ぶことになっています。
ところで、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、半世紀ぶりに月面着陸を目指す「アルテミス計画」の第一弾として、無人宇宙船「オリオン」を打ち上げました。
アルテミスは、アポロ計画のアポロの双子の姉(月の女神)です。
オリオンとアルテミスは恋仲でしたが、2人を引き離しにかかったアポロは、海から出ているオリオンの頭を黄金の岩と偽り、アルテミスに弓を射らせ、オリオンは何も知らないアルテミスが放った矢で撃たれて死んでしまうのです。
そんな因縁があるので、オリオンが無事、アルテミスのもとへ行くことができるよう祈りたいと思います。
この「アルテミス計画」で、月に金鉱脈が見つかったら~世の中はどう変わるのでしょうか?
そもそも、人が誰でも金(ゴールド)を「価値あるもの」と認めるのは、DNAのせい?それとも神様の仕業なのでしょうか?

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Link→→→定野未来創研


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