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いくら上手にお化粧しても、いつかは素顔が分かるのは人も決算書も同じ

以前、事業再生を手がける会社のセミナーに参加した際、一番驚いたのが、「事業再生の相談に来られる会社の7割が粉飾決算をしていました!」というくだりでした。

もちろん粉飾決算といってもピンからキリまで。

中には、「5つの取引銀行にすべて別々の決算書を提出していた」という強者(?)もいたようですが、そこまで悪質なケースはまれにしても、

・回収見込みの低い売掛金がそのまま計上されている
・償却すべき固定資産をきちんと償却していない

といったことまで含めると、いわゆる「お化粧している決算書」を作っている会社が予想以上に多い模様です。

私も仕事柄、過去にたくさんの決算書を見てきました。

しかし、銀行がたくさんの融資案件を審査する際、一つ一つの売掛金が本当に回収できるものなのかどうかまで、きちんとチェックできている訳ではありません。

当然、前年度の決算書に載っていた売掛金が今年度もそのまま計上されている場合、「この売掛金はいつ回収できるのですか?」という質問をします。

けれども、例えば、売掛金の内訳が

・前期 X社:600万円
・今期 X社:500万円

となっている場合、仮に架空の売掛金が300万円混じっていたとしても、伝票のチェックや聞き取り調査を実施してそれをとことん追及することはほとんどありませんでした。

このため、やり方によっては「お化粧している決算書」で銀行から借入することができるかもしれません。

しかしながら、入浴後に「お化粧を落とした決算書」がまるで別人だと、そのうち銀行も勘付いてきます。

おそらく、これが真に問題が大きくなるのは、銀行からも融資を断られ、資金繰りに窮して、先の事業再生会社のような先に相談に行く時なのでしょうか・・・。

決算書は会社にとっての成績表。成績は良いにこしたことはありませんが、無理に背伸びをしても、実力が伴っていないと、いつかは実態が分るのも事実です。

まずは、問題を先送りにせず成績をあげることに正面から取組むことが、たとえ回り道でも銀行交渉を成功させる早道です。

人がお化粧をするのは多くの場合、「より美しく見せたい」という人の素直な願望に基づくものです。一方、会社で決算書をお化粧してしまうのは「成績のパッとしない決算書は格好悪いので、なんとか誤魔化したい」というよこしまな思考に基づくものです。

そして、一度数字を誤魔化してしまうと、その整合性を取るために、ずっと誤魔化し続けないといけないという泥沼にはまってしまいます。

これからは「一貫性」が問われる時代。つまり、誤魔化しがいろいろな意味で通用しない時代になります。たとえ、今期の決算の数字が悪くても、一時的なものであれば、後からいくらでも挽回できます。

数字に対しては正直に向き合いましょう。

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