カナダ・トロントでの新型コロナウイルスの影響

ワーキングホリデー制度を利用してカナダに現在も滞在している、いっちー(Keigo) さんの体験記です。スキ、シェアをどうぞよろしくお願いします。

現在私はカナダのトロントでワーキングホリデー留学をしています。2月22日にカナダに入国、4月17日に語学学校とホームステイを終えアルバイトを見つけて新たな生活を始める予定でいました。空港の飲食店でアルバイトをしていた私は正直「コロナの脅威から逃れられた」という気持ちでカナダでの新生活に想いを馳せながらこの異国の地に足を踏み入れたのです。そんな期待も束の間、3月16日にカナダ全体に緊急事態宣言が出されることとなります。現在も私はトロントで生活を送っていますが、今日まで何が起こりどのような経緯を経て今に至るのか、カナダで起こったことを個人的なエピソードを交えお伝えします。


1年間の留学に対する期待と不安を胸に入国した2月22日。その翌日「ここで1年間生活するのかぁ」と漠然とした気持ちでダウンタウンを散策していました。当初は異国の地で友人ができるのか、仕事や住まいを自分で見つけることができるのだろうかと不安に押しつぶされそうになっていました。24日からさっそく語学学校がスタート。1日授業を受け、放課後のアクティビティーに参加していくとともに徐々に友人ができ始め、知らぬ間に数多くの日本人や外国人の友達ができていました。放課後はいつも決まったメンツでティム・ホートンズという有名なドーナツチェーン店やショッピングセンターで世間話に花を咲かせる日々。ホストファミリーの愚痴を言い合ったり、土日の予定をみんなで決めたり、今後の住まいをみんなで探しあったり。そんな何でもない日常を過ごしているうちに新型コロナウイルスは世界中で脅威を奮い始めていきます。

自然と学校のディスカッションのテーマもコロナに関することに変わっていき、放課後の友人との会話もコロナ一色へと変わっていきます。3月初旬「私たち将来自分たちの子供にコロナってどうだったのって聞かれても日本にいなかったから分かんないとしか言えないよねー(笑)」なんて言って笑い合っていたのも束の間、カナダにもその波が襲い始めます。私のホストファザーも「極力外出は控えてくれるか?」や「帰ってきたら必ずすぐ手を洗うか消毒液で殺菌してな」などと私にお願いをしてくるようになりました。

そうこうしていると3月15日、語学学校から学校閉鎖及びオンライン授業への移行のメールが届きます。衝撃を受けた私は「何のために遥々カナダまで来たのだろうか」そんな気持ちに襲われていきました。その翌日気分が沈んでいるとスマホに「カナダ緊急宣言発令」という速報が入ってきます。思わずトルドー首相の会見に飛びついて見ていると「カナダ国民以外の入国を今後一時的に禁ずる」との声明が耳に飛び込んでくるのです。その後毎日のように日本の領事館から「必要不可欠なもの以外のサービスを提供する職場の営業停止」「アメリカとの国境の閉鎖」「カナダ人の海外渡航の禁止」「日本とカナダを結ぶ飛行機の減便や運休」「飲食店の営業の禁止(テイクアウトを除く)」「5人以上の不要不急の集会の禁止(罰金あり)」など厳しい内容のニュースがメールで送られてきます。語学学校の友達たちは立て続けに帰国を決めていき、オンライン授業からもどんどんと人が減っていきます。放課後に遊んでいた仲間2人と毎日のように話し合い、誰が帰ることに決めたのか、私たちがカナダに残るメリットとデメリットは何か毎日のように話し合っていました。3月の末にはその2人のうちの1人を含めた全ての日本人の友人がカナダを去ることを決め、帰国していったのです。心細くなりながらも残った唯一の仲間とともに頑張って気を強く持とうと励まし合っていました。しかしその励ましも長くは続かず、状況は深刻化をたどる一方。その友人もついに帰国を決めたのです。

彼女は私と同じく大学3年生を修了すると同時に休学し、同じくワーホリ留学として同じ日に入国していました。ワーキングホリデーは一生に一度きりの切符であり、一度その国で申し込みをして入国をするとその後は一切延長することはできません。つまりその1年間しかワーキングホリデーを経験することはできないのです。ワーホリが一生に一度きりであること、留学の目的が将来やりたいことを見つけ出すため、そして英語力を上げるためであったことから彼女は最後の最後まで帰国するか迷っていました。また、4月1日に日本政府がPCR検査をカナダからの帰国者に対しても行うと発表したことと日本からトロントへの直行便が運休になっていることも要因の一つです。帰国するには、まずトロントから国内線に乗ってバンクーバーに向かい、そこから国際線に乗り換えて東京へ向かう直行便に乗り込みます。また、帰国後PCR検査を受ける場合、帰国者は着陸後に列をなして検査を受けるのを待ち、検査後は空港内で約半日結果を待ちます。その後陰性であれば、親や友人が車で迎えに来てくれて自宅待機ができる状態でない限り政府の用意したバスに乗り、自分で予約した空港近くのホテルに行き14日間の自主隔離を行います。PCR検査や空港での長時間の乗り継ぎは自殺行為に近く、かつ14日間のホテル滞在という膨大な出費を要します。このような状況から最後の最後まで彼女は悩んでいましたが、休学費用がかなりかかること、彼女の大学で急遽休学の取り消しが可能になったこと、カナダでの先行きが不透明なことから彼女は日本への帰国を決意しました。空港での感染リスクが高く、夢を諦め、急遽の就職活動に追われることも承知で帰国した彼女の決断はとても勇気のいるものだったと思います。このような思いをして苦渋の決断をした方は他にもたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

その一方カナダでの滞在を選んだ私はどういった経緯で滞在の道を選んだのでしょうか。まず、帰国した際のビジョンを見据えました。私の大学では休学費用がかからないため休学取り消しをすることはなく、つまり帰国をすると1年間フリーターのような状態になるということになります。そうなると学校に通わないので英語力が低下することは目に見えていました。将来ビジネスで通用する英語を身につけることが留学のゴールであった私は、いま日本に帰って語学力を低下させてしまいのちに帰国したことを後悔したくないと思い、留まりたいと思ったのが一つ。また、カナダではソーシャル・ディスタンスを確実に実施しており、多くの人がテレワークを行って外出を極力控えている点から、政府の強制力が弱く自由に人々が動き回っている日本よりも収束が早く、感染率が低いのではないかと感じてしまったのも一つです。買い物ひとつにしても、人々はソーシャル・ディスタンスを守り、入店制限がなされ、手袋をしながら買い物をし、購入したものを自宅で抗菌シートを使い殺菌しています。日本のニュースやSNSで友人の投稿を見ていると遥かにカナダの人々の方が、コロナに対する意識が高いように思えてしまうのです。さらに、契約をしようとしていたシェアハウスが格安だったこともあり、オンライン授業を延長し、家で趣味や自炊に没頭しながら飲食店が再開するのを待ち、それから職を探すことも可能なのではないかと感じました。実際、4月20日にオンタリオ州政府は州内の感染がピークに達したようだと発表し、ここからは人々の行動次第ですがうまくいけば6月や7月頃に飲食店が再開になるのも不可能ではないのではないかと少し期待を抱いている次第です。

いちえ記事写真

やはり一番悲しいのは異国の地で作った友人たちが帰国してしまったことです。復学を決意した先述の彼女のみならず、他の友人たちも夏までの滞在予定だったり、12月や来年の1月まで滞在予定だったりと長期の留学予定を全てキャンセルせざるを得なくなっています。新3年生は来年また休学することでカナダに戻ってくることができるかもしれませんが、私と同学年の休学留学をした人たちに来年はありません。みんなで放課後に語り合っていた「帰国までにしたいこと」すべて出来ていません。1年間を通して仲良くなるはずだった仲間たち、今となっては全国各地、そして世界中に散らばってしまいました。放課後に友人たちと集まっていたあの光景は二度と見ることができません。金曜日「また月曜日ねー」と言って別れを告げたあと次に会えるのは何年後かわからなくなってしまいました。空港への見送りにだって行けていません。突然にしてコロナは私たちから日常を取り去っていきました。今のこの世の中を見てみれば留学なんてちっぽけなものかもしれません。もっと苦しい思いをしている人たちはたくさんいるはずです。いつまで続くかわからないこの状況、不安と苦しみで精一杯になっていると思います。中にはその苦しみから逃げるが如く、友人と自宅でホームパーティーをしたり外出したりする人もいます。その人たちがその苦しい時間をどんどんと引き伸ばしているのです。中には仕事に出かけなきゃいけない方々もいます。その方々には心からの誠意の気持ちで一杯になりますが、それ以外で本来の意味の「おうち時間」をしていない方々、自分たちがコロナの収束をいつまでも妨げているということ、心に留めておいてください。全員の協力なくしてコロナの収束はなし得ません。皆さんで協力してこの状況を乗り越えましょう。いつもの何気ない「日常」取り戻しましょう。たった数ヶ月の辛抱です。自宅でできることはたくさんあります。ずっとやってみたかった趣味の練習、勉強、エクササイズなど。今は自分を向上させるチャンスです。友人に会いたくなったらビデオ通話をしましょう。個人的にはみんなが家にいてくれるからいつでも電話できてとても嬉しいです。この「おうち時間」をポジティブに捉えて楽しみましょう。

今後の私のプランとしては、6月や7月ごろまでオンライン授業を延長しながら自粛生活を続け、飲食店の営業が解禁になるのを待ちます。元々日本のインターンシップに参加するために8月は帰国する予定でいたので、この状況が夏頃まで収まらなかった場合8月には帰国する予定です。帰国を余儀なくされ、せっかくの留学プランが台無しになった人々と比べると、自分はいかにラッキーで貴重な時間を送れているのだろうかと頭が上がらない気持ちになります。今は授業後に料理をしたり、DJをしたり、作曲に取り組んでみたり、動画編集をしてみたりと新たなことに数々チャレンジしています。日本の家族や友人からの応援の気持ちに応えられるように時間を有効活用しています。私はトロントで元気にやっているので、皆さんもぜひ「おうち時間」を活用し、また元気に友人と楽しい日々を送れるよう頑張ってこの状況を乗り越えましょう。最後までご精読ありがとうございました。

note内マガジン「わたしたちの留学と新型コロナウイルス」では新型コロナウイルスの影響で留学やワーキングホリデーを切り上げて帰国せざるを得なかった方や現在も滞在先で奮闘されている方の体験談を募集しております。応募用のフォームをご用意しておりますので、ぜひご活用ください。

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