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あなたのその励まし方、本当にあってる?

こんにちは!

こしあんです。

今回は相手のタイプ次第では、「励ますと逆にそのパフォーマンスが下がってしまう可能性がある」という話をしていきます。

あなたも日頃から家族や友人を励ましたり、逆に励まされたりすることがあると思います。
「大丈夫」、「心配ない」、「誰でも一度は経験することだよ」といったフレーズはよく使われます。
ただ、ある研究でその人が「戦略的楽観主義者」の場合と、「防衛的悲観主義者」の場合で、その励ましの効果が変わってくることがわかりました。
簡単に言えば、楽観主義の人に対する励まし方と、悲観主義の人に対する励まし方は違うということです。


心理学者のジュリー・ノレムは、人が困難に対応するために使っているこの2つの主義を研究し、いろんなことがわかってきています。

あなたも、人生は戦略的楽観主義のほうが何となく上手くいくイメージがないですか?
楽観主義という名の通り、いつも前向きで、ポジティブ思考のイメージが強くありますよね。
確かに、「悩みなんか吹き飛ばせ!」と言わんばかりにエネルギッシュな人も確かにいます。

しかし、ノレムによると「防衛的悲観主義者は不安が強く、分析する課題や言語的課題、創造的課題への自信が低いが、パフォーマンスといった面では戦略的楽観主義と同じである」と言っています。

つまり、能力的な差はないということです。

しかし、初めのうちは心理学者のにノレムですら、なぜ悲観的であるのに高いパフォーマンスを発揮できるかわからなかったそうです。
その後、研究を重ねることで”悲観的だからこそ”できることに気が付いたと言っています。

【心理学者ジュリー・ノレムの実験】

被験者に製図(トレース)の作業をしてもらい、集中力と精度を調査するという実験をしました。
防衛的悲観主義のグループは、「きっとうまくできるよ」と励まされたときに比べ、励まされなかったときのほうが精度は29%も高くなっていました。

また、足し算と引き算の暗算テストを行う実験では、防衛的悲観主義者にテストで起こりうる最悪の事態と、その時自分がどう感じるかをテスト前に書き出してもらいました。
すると、テストのことを考えないようにした場合よりもスコアが約25%も高くなりました。
この事からノレムは、「防衛的悲観主義は、不安や恐怖、心配を克服するために特定の状況下で使われる戦略だ」と解説しています。

私たちはつい「がんばれ」とか「大丈夫、きっとうまくいく」といった励ましの言葉をよくかけます。
もちろん励ましの言葉をかけることは悪いことではありません。
しかし、励ます相手がこの「防衛的悲観主義」の戦略を取っていた場合、効果がないどころかマイナスに働く可能性があります。

この言い方が正しいかわかりませんが、防衛的悲観主義者は、わざと大惨事を想定して不安を増幅させ、それをモチベーションに変えていると言えます。
最悪のパターンを考えたとき、「そうなるのは嫌だ!」と感じ、それを「なんとか回避しなければ!」という気持ちに突き動かされて、あらゆることに気を回し万全の体制を作り上げます。
こうすることで、事態をコントロールできていると感じるのです。

例えば、会社でのプレゼンなどで不安を感じたあなたは、ありとあらゆることを想定して、様々な対策を立てている最中だとします。

そんな中、友人に「心配し過ぎじゃない?きっと上手くいくよ!」とか「そこまで気を配らなくても大丈夫だよ、当日になればみんな手伝ってくれるよ!」なんて言われ続けるとどうでしょうか。

まわりの人たちに心配ないと励まされる度に、だんだんと「心配し過ぎかな?」、「考え過ぎかな」と思うようになります。
最終的には「なんとかなるかな?」と思うかもしれません。
確かに不安はどんどんなくなって、自信が出てくることもあります。

しかし、思い出してください。
防衛的悲観主義者の自信は、最悪の思い込みや無知からくるものではなく、現実的な判断と徹底した計画から生じるものです。
もし不安を感じなくなったら無頓着になり、計画を立てることもしなくなってしまいます。
そして、特に準備もしないで本番に臨むことになります。

当日になり、なんの対策もしていないことに不安を覚え、うろたえます。

そうです、私です!

最終的に心配し過ぎる自分がまるで「ビビり」のように感じ、「事前準備を碌にしなくても乗り越えられるし、なんかその方がカッコよくて能力が高く感じる!」と考えたことがあります。
結局、事前準備を疎かにしたためにパニックに陥り、いつものパフォーマンスが発揮できないという事態に陥ることがあります。

ノレムが「防衛的悲観主義的な人の邪魔をしたいのであれば、彼らをおだてるとよい」と言っているのも頷けます。

だから、不安を感じやすい人は無理に楽観的に「大丈夫、なんとかなる!」と考えるのではなく、自分が想定している不安に対して対策をするほうがうまく物事を乗り越えられる可能性があります。
そのため、防衛的悲観主義の人に頑張って欲しいのなら、何も言わないか、一緒に対策を考えてあげるほうがいいかもしれません。

ノレムによれば、「いったん最悪の事態を思い浮かべることでコントロール感が得られ、本番がくる前に不安が最高潮に達している。だから本番になると、ほぼすべての対処が済んでいる」と言っています。

防衛的悲観主義の人は、すでに脳内で最悪の事態すらシミュレーション済みというわけですね。
これってすごい能力だと思いませんか?

ちなみに、戦略的楽観主義者の人は、励まされた時のほうがパフォーマンスはよくなっています。


【「落ち着け!」というアドバイスは場合によって間違いになる?】


この「落ち着け」というフレーズはよく聞きますが、実は落ち着かせるとかえって良くない場合があります。
それは恐怖を感じるほどの極度の緊張状態にあるときです。
一般人が恐れる対象として「死」が多くあげられますが、それよりも多くあげられるものがあります。

それは、大勢の前でのスピーチだそうです。

あなたがいた学校でも1分間スピーチや3分間スピーチなどなかったでしょうか?
生徒が教壇に立ち、決められた時間みんなの前で話をするというものです。
当時、私は発表する前日の夜から当日の朝まで、生きた心地がしませんでした。

アメリカでは日本の学校よりも、授業でのディスカッションやスピーチの機会がたくさんあります。
ただ、だからといって全員が「みんなの前で話すのが得意だ」ということではありません。
あの外向的な人が多いとされるアメリカでも、スピーチ恐怖症を患っている人はたくさんいます。

ハーバードビジネススクールの准教授アリソン・ウッド・ブルックスはこのスピーチを通してある実験をしています。
この実験では、「なぜ職場で自分はいい仕事ができるのか?」という主旨でスピーチをしてもらいます。
スピーチの準備に与えられた時間は2分間で、そのとき学生はとても緊張していました。

この実験では、評価者として研究チームの1人を聴衆に交じって座らせ、すべてのスピーチを録画しました。
その後、聴衆者の大学生に協力を求め、それぞれの発表者における説得力と自信のほどを評価してもらっています。

あなたも、突然スピーチを頼まれたりしたらどう対処しますか?
結婚式や会議でいきなり前に出て話すように促された場合、「え!?、私が喋るの?」なんて言葉が頭をよぎるかもしれません。
逆にいつでもwelcome!な人もいると思います。

私の場合は人前に出るのは好きではありません。
なのでオロオロする姿が目に浮かぶようです。
この時、出番が近づくにつれ心臓はバクバクするし、緊張でちょっと気分が悪くなったりすることもあります。

あなたはこんなとき、どんな言葉を自分にかけるでしょうか。

多くの人は、「落ち着け」とか「冷静になれ」といった言葉をかけるかもしれません。
実際、ブルックスが働いている職場で、300人のアメリカ人にどのようにアドバイスするかを聞いてみたところ、一番多かった回答は「リラックスして、落ち着くことだ」といったフレーズでした。

私も結構言っているかもしれません。

しかし、ブルックスに言わせるとこの方法はベストではないそうです。

先ほどの実験の中でブルックスは、スピーチの前に無作為に大学生を振り分け「私は落ち着いています。」または「私は興奮しています。」のうち、いずれかを声に出して言ってもらいました。
自分の感情を「興奮している」とした学生のスピーチは、「落ち着いている」とした学生よりも説得力が17%高く、自信は15%高いと評価されました。
落ち着いている人のほうが説得力があるように思えますが、実際は逆だったんです。

これはスピーチをしなければいけないという恐怖を「興奮」に置き換えることによってやる気が高まり、ステージに上がる勇気が湧いてきたと考えられています。
ちなみにその時のスピーチの時間は平均29%も長くなったそうです。

別の実験では、学生が難しい数学のテストを前に緊張しているとき、「落ち着いてごらん」と言われるより、「張り切ってごらん」と言われたときのほうが得点は22%も高かったそうです。
その時の心理状態にも左右されると思いますが、緊張しているときの対処法としては有効なのかもしれません。

また、ブルックスは緊張の対処法として、恐怖を興奮に置き換えるのは有効なのか、それとも不安を認める方がよいのかを確かめる実験をしています。

そこで学生たちに、大勢の人の前で80年代のロックを歌わせるという実験をしました。
ブルックスは無作為に学生を選び、歌う前に「私は不安です」、「私は興奮しています」、「何も言わない」という3つのパターンで調査しています。

調査の結果、歌う前にどちらのセリフも言わなかった被験者のグループは、歌の平均が69点で、感情を「不安」であると表現させたグループではさらに低く53点でした。
その一方で、感情を「興奮」と表現したグループは80点以上だったんです。
このことから「不安」と表現しても恐怖心を和らげる助けにはならず、逆に自分が恐れているという認識が強化されてしまうということがわかりました。

ひょっとして、「私は興奮している!」と自分に言い聞かせればカラオケの点数が良くなるのかな?と思ったんですが、そもそも恐怖を感じるほど緊張している状態でないとこの方法は使えないし、ロックではなくバラードの場合でも同じ効果があるのか考慮されていないので、このやり方では高得点は狙えないかもしれません。


最後に

私は不安な時や緊張しているとき、「大丈夫、なんとかなる!」「心配し過ぎだ」と無理やり不安を抑え込もうとしていました。
あなたにもそんな経験がないでしょうか?

しかし、心配事の9割は起こらないという本もあるくらいです。
実際には本当に何も起こらない確率が高く、気にしないのが正解なのかもしれません。

ただ、私は基本的に防衛的悲観主義なので「あなたならできる!」とか「大丈夫!なんとかなる」、「気にしすぎだよ」なんて言われるよりも、具体的にどう大丈夫なのか説明してもらわないと納得できないんです。
そう、面倒くさい性格なんです。

もしそんな人があなたの周りにいるのなら、その時は具体的な対策を話し合ったほうが相手は落ち着くはずです。
ヘタな励ましよりも効果は高いと思います。

そして、すべての準備をやり終え、「天祐は我にあり!」といった気持ちで臨む方が上手くいくのかもしれませんね。


今回はここまで

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それではまた次回お会いしましょう。

※この記事は主に私のアウトプットを目的に書いているものです。
参考にした資料(主に読んだ本)をもとに考察したもので、私の主観が多分に含まれています。
そのため、参考にした論文とは結論が異なる場合があります。
あくまで、一つの意見として見るようにお願い致します。

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