見出し画像

「ルール」は社会階級によって意味が変わる

あなたは「ルール」と聞いて何を連想しますか?

実は「ルールは守られるべき」とか、「ルールは破られるためにある」といった考え方の違いは、所属する社会階級によって変わってきます。

組織心理学者ミッシェル・ゲルファンドの調査で、この「ルール」と聞いて連想するものを尋ねたところ、上層階級の回答は「悪」、「抑圧的」、「束縛的」といったネガティブな答えが多く出ました。

逆に下層階級の回答は一貫して「善」、「安全」、「秩序」といったポジティブな答えが出ています。

簡単に言えば、上層階級の人は「自由」を好み、下層階級の人は「規律」を望んでいます。


2016年、アメリカの下層階級および上層階級の数百人の成人を対象に調査したもので、それぞれの階級が子供のころ家庭、現在の職場、人生全般で経験したタイトさの度合いを調べたものがあります。

この調査では
・それぞれの場で、守るべきルールがあったか。

・ルールを破った時には厳しく罰せられたか。

・どのくらい監視されていたか。

・意思決定をする時に選択の自由がどれくらいあったか。

を質問しています。

調査の結果、下層階級の成人の方が、子ども時代の家庭でも現在の職場でも、ルールが厳格で罰が厳しく、監視が多く、選択の自由が少なかったと答える傾向が見られました。

また、下層階級の人の方がタイトな社会を望む割合が高いと言います。

この調査結果についてゲルファンドは「給料が安く創造性など無用とされるルーティンワークに就く人にとって、ルールを破ることはクビにつながりかねない。」

また、「ティーンエイジャーがドラッグに手を出したり、不良グループに入ったりする恐れのあるコミュニティーでは、子どもが道を踏み外すのを避けるために、権威者の定める厳格なルールが不可欠だ」と説明しています。


【いつからこの姿勢に違いが出るのか】

この差は3歳頃にはもう出ています。

早いようにも感じますが、親は子どもが大人になったときに上手く生きていくのに必要と思われる「心構え」を教えます。

下層階級の親は、自分の子どもが社会的な脅威に満ちた世界を生き抜かなくてはならず、自己裁量権がほとんどない職に就くと考えています。

だから、周囲に合わせることが大事だと教え込もうとします。

作家のアルフレッド・ルブラーノは「家庭で、周囲と同じようにふるまえ、人のいう事を聞け、口答えをするな、と言って子どもをしつける。まさによき工場労働者に求められるのと同じ性質を子どもに教え込むのだ」と述べています。

下層階級の職場では自己判断による行動はトラブルのものとになります。


社会学者メルヴィン・コーンの研究によれば、下層階級の親と上層階級の親は子育てにもはっきりと違いが出ています。

・「子どもにどんな大人になってほしい?」と質問

下層階級の親
従順で折り目正しく振る舞って欲しい。周囲に合わせることが大切だ。

上層階級の親
進むべき道を自分で決める力を持ってほしい。


・子どもが悪いことをしたときの罰に対する親の姿勢

下層階級の親
子どもが反抗的なとき、子どもの行動から望ましくない結果が生じたときに、それが故意かどうかにかかわらず罰する。

上層階級の親
子どもを罰すること自体が少ない。罰を与えるかどうか、あるいはどんな罰を与えるかについては、行動の奥にある意図によって決める。

この調査から50年経つそうですが、いま行われている同様の調査でも上層階級よりも下層階級の親のほうが子どもにルールをきちんと守るように求め、子どもの行動を頻繁に監視し、よくない振る舞いを正すためにしばしば罰を与えることがわかっていいます。

高卒以下の親は大学院を修了した親と比べて、子どもに尻叩きの罰を与える割合がほぼ三倍だという調査結果もあります。


ここまで読んでくださった人は下層階級に良いイメージがないかもしれません。

でも上層階級の人たちにも問題はあります。

上層階級の人は、ルーズな行動のせいで道徳心を失うことがあります。

ある研究では、試験のカンニング、ソフトウェアの不正使用、レジからのつり銭泥棒などの道徳に反するさまざまな行為をすると認める人の割合は、上層階級の人の方がはるかに高いことがわかっています。

ほかの実験でも虚偽の報告をする割合が高かったり、子どもたちに用意されているとわかっているキャンディーを勝手に取っていったりする傾向があります。

カリフォルニア大学バークレー校の研究では、高級車ほどドライバーの社会階級も高いと仮定して調査したところ、高級車に乗っている人は他の車の進路を妨害する確率がはるかに高く、道路を渡ろうと待っている歩行者の邪魔をする確率も高いことがわかっています。

逆に、労働者階級の人ほうが、職場の備品を盗んだり、試験でカンニングをしたりするといった不道徳な行為を許容する割合が低いこともわかっています。


最後に

勘違いしないで欲しいのですが、これは「どちらかが正しい」とか「あなたもこういう風になろう」といったものではありません。

下層階級と上層階級の違いの多くには、それなりの必然性があると言います。

下層階級の多くを占める職業は、高度な技能と身体能力を必要とします。
また、人から信頼され、ルールを守る能力も必要です。
このような立場で成功するにはタイトな精神が必要とされます。

一方、上層階級的な職業に必要なのは創造力、洞察力、自立心、伝統を打破する力などあげられます。
これらの能力にはルーズな精神が欠かせません。

これはどちらかが優れているといったものではありません。

必用な事は互いの強みに対する「敬意」を育むことです。

ハッキリと話の内容を覚えているわけではありませんが、工場見学に来ていた親子が生産者の人を見て、「こういう仕事に就かないように、ちゃんと勉強しなくちゃね」と子どもに言った、という話があります。

でも私たちは、生産者がいなければ何も手に入れることができません。

それを忘れてしまってはいけないんです。

以前、あるお菓子メーカーの人と仕事をしたことがありますが、その人は工場勤務の人でとてもクリエイティブな仕事をする人でした。

今までにない機械を自ら設計し、何度も試し、お菓子の量産化を成功させている人でした。

私たちは、こういう人たちの技術力によって今の生活が支えられています。

それを忘れないようにしたいですね。


今回はここまで

noteの内容を気に入っていただけたら
励みになりますのでスキやフォローも
お願い致します。

※この記事は主に私のアウトプットを目的に書いているものです。
参考にした資料(主に読んだ本)をもとに考察したもので、私の主観が多分に含まれています。
そのため、参考にした論文とは結論が異なる場合があります。
あくまで、一つの意見として見るようにお願い致します。

予告なく文章を変更することがあります。ご了承ください。

良ければTwitterのフォローもお願いします。

【Twitterはこちらから】

https://twitter.com/kamiki_seto

いつも温かいサポートありがとうございます。 いただいた資金は次の活動のため、主に本を買うことに使わせていただきます。 そして、それを元にまたどんどん情報を発信していきます。