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It must be heaven/天国にちがいない エリアスレイマン

『天国にちがいない』エリア・スレイマン監督

私はちょうど一年前のいまごろフランスにいたときに初めてエリアスレイマン監督のこの作品を観た。数少ない会話も当時全く理解できなかったので今日改めて日本語字幕で観たけど、やっぱり好きな映画。どのジャンルにも属さないような不思議な映画で、優しく孤立していて、でも確かにメッセージを訴えていて、初めて見たときにフランス来てよかったと心の底から思った。(1年後に日本でも見れたけど)

何よりもこの映画の中での監督本人が演じる主人公の寡黙な立ち振る舞いが脳裏に残る。102分の中で、二言しか話さない。特に何をするわけでもなく、いつも足を運んでは、ただ対象を見つめている。「むやみに言葉に出すことは、時に暴力になるから、映像やイメージで伝えたかった」ってインタビューで監督が言っていた。この立ち振る舞いに対して私たちは様々な解釈ができると思うが、そこまで考えなくても表情を見て得るだけで結構楽しかったりする。何も知らずに見ても芸術的で独特なシュールさに惹かれることが可能なのもこの映画の魅力だと思う。

ちなみにおそらく唯一劇中でESがにっこり笑うシーンが、パリの部屋に舞い込んできた小鳥が水を飲んでいるのを眺めている時………!!!!そしてこのシーンが私の一番の好きなシーンです………!!!!!かわいすぎる!!!!!

以下超ネタバレの私のメモ書きと感想

【エリアスレイマンがかわいいシーン】
・ナザレからパリに飛ぶときに乗っている飛行機が揺れてめちゃくちゃ動揺しているESとてもかわいい。
・小鳥のシーンはもちろんかわいい 
・ナザレにいる時は顔が若干ほころんでいる気がする。勝手にそう思っている。手を後ろで組んで少し猫背でゆっくり歩いてるのかわいい

【解釈の余地残してるシーンなど】
・タイトルクレジットが出る前の最初の儀式のシーンが結構謎。私の知識では意味が…→パンフレットにて隣人(ES)のレモンを勝手にとって水をやり始める男性がイスラエルの占領に例えていて、随所に暴力が暗示されているといっていた。それを踏まえると扉を無理矢理叩き割って大勢の人々を連れて無理矢理入ってきたのがイスラエル人(シオニズム)で、中に一人で居て暴力を振るわれたのがパレスチナという風に理解できるかも 
・「普通の人は忘れるために酒を飲むが、パレスチナ人は忘れないために酒を飲む」:これどういうことなんだろう。覚えておくことが多すぎて、酒をのんで忘れていかないと本当に大事なことを忘れてしまうからってこと?

【セリフ】
・"Are you a perfect stranger?" これもなんかシニカルだけどちょっといまいちつかめてない。
・ニューヨークについた時の雨の夜の中のタクシーの会話がずっと気になっていたので理解できてすっきりした。パレスチナ人はキリスト教徒の視点から見るとお顔を拝みたくこともあるのか。
・『Heaven can't wait』と題名を間違えたり、中東和平についての映画で~といった次の瞬間に「すでに笑えるね」っていう女性。ユーモアと差別偏見ってスレスレ表裏一体だな。 

【その他】
・フランスで見たときは「パリの華やかさに目がくらんでる日本人全員これみればいいのに」と思ったほど(私もそんなには知らないけど)パリが面白く映っていて最高だと思った。例えば公園でイスの取り合いをしてるやつ 
・シャラシャラさせて水を運んでた女の人はベドウィンだったのか。
・公園でパレスチナの国旗を胸に巻いた天使。天使は警官に追い掛け回され(走るのゆっくりすぎてもはや笑ってしまう)、とらえられた後は羽だけが残る。

・ESの何事にも閑静な態度についての解釈…やはり諦念とかすかな希望の表れなのかな。もはや世界の過剰な視線や表面的なメッセージにいちいち反応したり声をあげたりしていられない。だから自分は見つめる。でも興味のあることは知りたい、見ていたい、表現したい。

基本的に人間は自己中だし、知りたいことだけを自分の都合のいいように理解する。パレスチナに対して世界は無関心だし、そんな世界を私は黙ってみつめていますよ…みたいなスタンス。でもそれは何もしていないように見えて、「見つめている」ということを映画という作品にして強烈に世に放っているのが、彼まじでかっこいいな、と思っています。

これだけ書いといて、まだD.I.も観れてないのでまたそれをみるとまた感じ方が変わるかも。あとキートンも。。

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