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医療や福祉と農業。様々な可能性

コトモファーム会員 上級者コース7期生
廣部さん 医師

健康の基本は食

もともと今の職業の医療と農業とが結びつく必要性を感じていました。健康のもとはやはり「食」ですから。今の医療があまりにも薬とか検査・手術に頼りすぎているので、もっと人間の基本にある自然治癒力を強化する方向にいかなくてはいけないな、それにはやはり、「食」、が基本になるんじゃないかな、とずっと思っておりました。

今の医療は、科学の進歩のおかげで、病気の発見と治療については格段に向上しました。しかし、治療後どういう生活をしたらいいのか、という点についてはなかなか手が回らないんですね。「手術後はずっとこの薬を飲んでくださいね」というだけで、「これまでの食生活、運動をどう変えて病気の再発を防ぐか」という最も大切な部分が疎かにされているのは残念なところです。

またせっかく病気の原因が発見されても、それが、「これまでの食事や運動といった日常生活の見直し」という方向に向かわず、新たな薬の創出ということにばかりに向けられている点も、新たな副作用の出現や医療経済的な面からも心配です。

自然農に興味を持ちコトモファームへ

ある時、小さな家庭菜園で無肥料無農薬の野菜を育てている友人と話していたんですが、彼が「自然農っていうのは引き算なんだよね」というのです。どういう意味かなと思ってよく聞いてみたら、要するに「不必要なことを今の農業は結構やっている。やらなくてもいいことは引いちゃう。そういうのが自然農なんだよ」という意味だったのです。私は驚いてその後、福岡正信さんの「わら一本の革命」とか川口由一さんの本を読んだりして理解を深めていったわけです。

もう少し本格的に勉強したいと思い、探していたところ、コトモファームさんが目に止まったんです。そうしたら、私のやりたかったことをみんなやってらっしゃったんですね。実際の農業と、「農スクール※」のような福祉的な活動もやっており、これはすごいと思ってとりあえず一区画お借りして新たな一歩を踏み出したわけです。


上級者コースで農業機械のパワーに感激

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農業についてはきちんと基礎から教わったことがなかったので、上級者コースに志願しました。そこで野菜の育ち方の基本や理論を詳しく教えて頂き、目を開かされたような気がしました。また、実際にいろいろな農業機械の操作まで学ぶことができ、プロの農業者がどういうふうにしてやっているのかがよくわかりました。

当初トラクターや草刈り機などの機械を使ったら土を大切にしていないように思ったのですが、実際やってみると、「機械」と「土」は意外と相性がいいことに気が付きました。

自然の風に吹かれて、一人では到底手が回らないような広い畑を、悠々と開拓していく、というまさに「男の世界」でした。それに、農業で使う機械は、みな余計なものが一切ついておらずパワー本位なところが気に入りました。トラクターはエンジンの上に人が乗っているようなものですから、今の乗用車などでは味わえないような体全体を使った技術が必要です。

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また、管理機は、微妙な重心の移動を間違うと、耕せないし、勝手に先に行ってしまうなど、全身を使ったコントロールがなかなか難しい。刈り払い機は一度覚えると、その目に見える成果と達成感に病みつきになりそうでした。

農業で使う機械には、人間の技術を発揮する余地がまだたくさんあることがわかりました。私も技術者の端くれですから機械はもともと好きなんですね。

しかし。「何かと何かは使いよう」というように機械に頼りすぎるのは怖いですね。機械の魅力に取りつかれてしまうと、土が見えなってしまうような気がします。私の仕事で言うと、検査機械の陰に患者さんの姿が隠れてしまうように。

仕事になじむための手段としての農業

農キャリアトレーナー講座にも参加させて頂きましたが、農業のいろいろな過程を、教育や人材育成の手段として使えることに新鮮な驚きがありました。

とにかく農業をもとにするというのがいいですね。いろいろなやり方で人材育成は行われていますが、土と自然に囲まれて仕事のやり方を学ぶというのはすごくいいなと思いました。

「人材育成や就労支援」と「農業」とをあまり結び付けて考えたことがなかったので面白いと思いました。いろいろな技術を習得したり、コミュニケーション能力を養ったり、農業にはいろいろな過程があっていろいろなものが学べる。様々な作業系統が混在しているので、様々な使い方ができそうな気がします。

今、社会がすごく忙しくなっていて、丁寧に仕事をする人や、優しい気持ちを持っている方がはねられてしまう。今の社会にマッチしない人が結構増えています。そう人達が社会になじむ、仕事になじむための手段として農業はいいのではないでしょうか。農を基本としてみんなが誇りと自信をもって仕事をしてゆけるような社会にしたいですね。



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