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上級者コース受講後、北海道で新規就農 小さな生き物たちの味方でいられる農業を目指して

上級者コース8期生 ひよこ農園 石川さん 
北海道十勝在住 20代

コトモファーム上級者コース受講後、ご実家のある北海道十勝地域で新規就農されて、今年で3年目となる石川さん。
農業を始められてからこれまでの歩み、これからの目標について話していただきました。

畑総面積、40町。北海道の広大な農家に生まれて。

石川穂乃華と申します。今年で25歳になります。
生まれは北海道十勝の音更町という所です。正確な時期は分かりませんが、昔からこの地で代々家族農業を営んできました。現在は両親が二人で慣行農業を営んでいます。
 
実家は全部で40町の面積の畑を持っています。(注:1町=約1万平方メートル。40町=約40万平方メートルなので東京ドーム約8個分(!)の面積)
 
現在は小麦・大豆・小豆・ジャガイモ・砂糖の原料となるビートなどを、すべて露地栽培で育てています。
40町の広さなので、農作業の多くは大型の機械で行っています。イモを撒いたり、種を蒔いたりといった作業ですね。
 
私は実家の農作業を手伝いつつ、一部の畑で有機栽培に取り組んでいます。
自分の農園は「ひよこ農園」と名付けました。農業を始めて今年で3年目です。
ひよこ農園 公式(@hiyokonouenn)さん / Twitter
 
農家の家に生まれて、小さい頃はお父さんと一緒にトラクターに乗ったり、農作業のお手伝いをしたりしていました。私は一人っ子なので、将来的に跡を継ぐんだろうなとなんとなく思っていました。親からは「別に継がなくてもいいよ」とは言われていたんですけど。

体験農園コトモファーム入会、はじめて手作業で行った野菜づくり

高校を卒業するまではずっと十勝にいて、大学進学で一度北海道を離れました。小学生の時からずっとバレエを習っていたんですが、当時はダンサーになりたいと思っていて、その方面の学校に行きました。
ただ、ストレスからか体調を崩してしまったことがあって。今後のことを考えたときに、不規則な生活で、お金も定期的に入りにくい状況を考えた結果、ダンサーの夢は諦めました。
 
ちょうどその頃、お母さんがweb記事でコトモファームを見つけて、「近くだし行ってみたら?」って薦めてくれたんです。気分転換になるかなと思って、とりあえず行ってみたんですが、スタッフの方に丁寧に畑を案内してもらって、そのまま野菜づくりを始めることになりました。
 
実際にコトモファームの区画で野菜づくりを始めてみると、全て自分の手で野菜を育てるのが新鮮でした。実家で手伝っていた農作業はほとんど機械で完結していたので、これまでとのギャップは大きかったです。慣れるまでは大変でしたね。
 
体験農園では毎週講習があったので、野菜の育て方の基本的な部分を学びましたし、説明を聞きに来ている方と交流できるのが楽しったです。「何を育てているんですか」「どうやって作っているんですか」といった何気ない関わり方ができるのがおすすめですね。

はじめて自分の手で育てたオクラ

北海道での就農を見据えて、上級者コースを受講

コトモファームに入会した頃には、いずれ北海道に戻って、実家で農業をやれたらと考えていました。ただ親と一緒の職業をするとなった時に、いきなり大きな機械を使用するのは怖いなと思って。まずは機械に慣れる必要があると感じていました。
それで上級者コースの受講を決めました。小さなトラクターや刈払い機を使用することができて、幅広く技術を身に着けられるところが魅力的でした。
 
上級者コースが2020年のコロナウイルス拡大時期と重なってしまって、当初はオンラインでの座学が中心だったんですが、夏ごろから畑で機械を使用できるようになりました。
やっぱりトラクターを経験できたのはすごくありがたかったですね。操作方法は機械の大小でそこまで変わらないので、基礎的な使い方を上級者コースで学べたことで、北海道に戻ってからもスムーズに対応できています。
 
座学は有機関連の内容が中心で、自分が目指す方向性と重なっていたので全部が勉強になりました。いざ農家になってしまうと、細かな点まで勉強する機会はなかなか持てないので。理論的にしっかりと学んだおかげで、畑で起こっていることを自分の口で説明できるようになったのが大きかったです。
 
有機栽培で取り組むことは初めから決めていました。北海道に戻るとなると、すでに機械はある程度揃っているので、できるだけお金を掛けずに農業がしたかったんです。
理由としては、家の跡を継いで農業を始める場合、大きなトラクター1台で何千万単位の費用が掛かり、その借金がいずれ自分に降りてきてしまいます。有機栽培なら農薬・化学肥料などのお金がかからないことが決め手になりました。

上級者コースを受講されていた当時の写真
講座内ではトラクターをはじめ様々な機械操作を学べます

北海道に戻り、就農3年目。農作業の幅が広がり成長を実感。

上級者コースが終わって、2年前23歳の時に北海道に戻りました。
今は両親の畑の手伝いと、ひよこ農園での作業を並行しながら行っています。
 
収穫期がやっぱり大変です。8月頭までに小麦刈りが終わって、そのあと芋掘り、豆の収穫、ビートの収穫と11月終わり頃まで続いていくので、収穫期は雨の日以外は基本的に休めないですね。
例えば芋掘りだと、朝6時くらいから掘り始めて、昼休みと休憩を除いて丸々12時間くらいは作業しています。結構体力勝負なところがありますね。
 
1年目の時は、自分一人でも使用できる機械や資材がすごく少なくて、作業に時間がかかっていました。3年目に入った今は、少しずつ幅が広がって、作業効率が上がったと感じています。

ひよこ豆、大豆を中心に育てている「ひよこ農園」

ひよこ農園では現在、ひよこ豆をメインに育てています。面積は畑とハウス1棟を合わせて約150坪です。ハウスではひよこ豆、畑では大豆など他の豆類と小麦を育てています。それだけでは連作障害が心配なので、実が小さめの野菜を年によって変えながら栽培しています。

ひよこ農園の栽培品目 (左)ユキシズカ大豆 (右)黒千石大豆

家の手伝いもあって時間的な確保が難しいので、ビニールマルチやトンネルといった資材は最小限しか使っていません。機械は25馬力のトラクターと、土を整地できるパワーハローを1台ずつ使用しています。
 
特定の売り先はまだ持っていません。主に知り合いの方に紹介したり、お話をして興味を持ってくださった方に直接販売しています。いずれは食べチョクなどのオンラインサイトを通じて、様々な地域の方に販売したいと思っています。
 
「ひよこ農園」の由来ですが、沢山の人が愛着を持って可愛がってくれる小さな生き物を考えたときに、ぱっとひよこが浮かんだんです。ひよこは飼っていないので、そこは申し訳ないんですけど(笑)

ひよこ農園公式Twitterより

ひよこ農園が大切にしていること

ひよこ農園では全て有機栽培で、肥料も入れず、外からは何も持ち込まないスタイルを当初から続けています。
 
十勝は「農業大国」と言われることが多いんですが、大規模な農家とは差別化をしたくて、この栽培方法を選びました。他の人と違うやり方で、何ができるだろうって考えたときに、人だけでなく周りの生き物や環境にも安全な栽培を目指そうと決めました。
 
あとは単純に、農薬の希釈が面倒だなと思って。農薬や肥料の細かい計算をしなくても成り立つ農業をしたかったんです。
 
予防的に農薬や殺虫剤を散布すると、綺麗な野菜になるからいいんですけど。使いすぎると人間以外の小さな虫が全部死んでしまうので、何か違うなと思って。
害がない虫だっているわけですし、「人間以外の生き物が作物を食べたときに、死ななくてよいこと」を常に意識しています。

てんとう虫は野菜についたアブラムシなどを食べてくれます

一歩ずつ、有機栽培への転換を目指す

農業を仕事にしてみて、沢山の発見がありました。畑にいると小さな虫や動物が急に出てきて驚いたりするんですけど、かわいいからいいかなと思って許しちゃいますね。
また色々な作物を育てていると、土から出始めた最初の状態から、商品になるところまですべての過程を自分の目で見ることができます。体力勝負なので大変ですけど、やりがいのある仕事だと思っています。
 
先日、北海道の有機栽培の講習会に家族3人で参加しました。そこでいろいろな話を聞いてみたら、お父さんが意外と有機栽培に乗り気になって。畑5枚分くらいは残して、少しずつ有機に変換していこうと相談しているところです。
私自身もこれからの目標として、自分が有機で取り組む面積をもっと広げたいと思っています。

これから新規就農を目指す方へ向けて

ご自身の体力はもちろんですが、一人よりは3人程度の人数がいて、助け合いながら仕事できる環境が理想なのかなと思います。
これから新規で就農となると、種を蒔いて育てて収穫して、すべて自分の手で行いますよね。例えば自分に子供ができた時に、教育的にとても役立つ職業だと思います。周りの方にも自分自身にとっても得られることは多いんじゃないでしょうか。
 
一から新しく始めることはすごく大変だと思います。自分で作ったものが他の人の口に入るということは、それだけ安全面の高い意識が求められます。
でも作物を生み出すことは、誰か他の人の命を支えることにつながるので。だから農業をこれから始められる方は、始めた自分のことをすごく褒めてあげていいと思います。

(2023年2月27日)

体験農園コトモファームのHPはこちらからご覧になれます。
https://www.eto-na-en.com/cotomo-farm/
お問合せ先 TEL:070-6556-5300
      メール:cotomofarm@eto-na-en.com

ひよこ農園 公式(@hiyokonouenn)さん / Twitter

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