見出し画像

2021年8月1日のこと

「こととか」は、福島県 耶麻郡 西会津町で出会った、年齢も職業も生活リズムも異なるメンバーによる、ゆるやかな集合体です。

2020年8月1日、久々にパソコンの画面越しに顔を合わせた私たちは、1年後の同じ日に、再び西会津に集まってお互いに会うことを決めました。

2021年8月1日、みんなに会う「その日」がやってくるまで、それぞれが過ごす時間を定点観察のように記録し、ときどき公開しています。


◆ 「こととか」が生まれるまで

「こととか」が生まれたのは、福島県の西会津国際芸術村。廃校の木造校舎を活用してつくられた文化交流施設であるこの場所で、表現活動をするメンバーがそれぞれの作品の展示を行うことから始まりました。

「こととか」のメンバーに共通するのは、皆何かしらの表現手段を持っている、ということ。絵画、写真、染織、陶芸といったそれぞれの手段を携えた10数名が、自分の住む場所と西会津とを不定期に行き来しています。年齢や出身地、バックグラウンドもさまざまで、その顔ぶれも流動的に変化を続けながら、ゆるやかにその関係を続けています。


「C塾」 のはじまり

2015年、「C塾」という活動が立ち上がりました。これが今の「こととか」の前身となるきっかけです。このときのテーマは「世界と世界を交換する」。日常を少し掘り下げられるような、未知の世界との出会い。もしくは、より深く温められる関係を、少しずつ、じっくり築いていくことをイメージして。12名の作家が集い、夏の36日間の会期中に、作品の展示・ワークショップ・イベントなどを行いました。

画像1


「こととか」 へ

翌年の2016年、「C塾」に関わったメンバーが中心となり、少し体制を変えて「こととか」が生まれました。名前の由来は言葉のままに、「もの」だけでなく「こと」にもフォーカスしていきたいという想いから。美術のフィールドにバックグラウンドをもつそれぞれのメンバーが、各地から西会津へと行き来する中で、「ものづくり」から「できごと」や「行為」をどう見つめ、向き合い、捉えていくのか、そんなことを考えて再始動しました。

このときのテーマは「今、います」。
東北、関東、関西、、
普段別々の場所で異なる暮らしをしている私たちが、この夏の同じ時間、同じ土地に「いる」ことをひとつの大切な「できごと」として捉え、焦点を当てました。

画像2

会期中、「こととか」はそれぞれのスケジュールで、芸術村に出たり入ったりしていました。芸術村に滞在するメンバーが変われば、日によって「こととか」のカラーも少しずつ変わっていきます。

この展示にあわせて、私たちは「今、います。」の札をつくりました。赤地の木の板に、白い文字でひとつひとつ手書きしたもの。

画像3

「今、います。」の期間中、顔写真と合わせてこの札を芸術村の入口に設置し、その日にいるメンバーがすぐわかるようにしていました。札を裏返すと「今、出かけています」の文字。芸術村を出て道の駅に買い物に行っている人も、東京、あるいは関西で生活している人も、みな同じく「ここから出かけている」と捉えること。そんな1ヶ月を過ごしてみました。

この「今、います。」札は、西会津国際芸術村を運営している皆さんにも活用いただいて、その後も芸術村の入口に設置されています。

画像4

そして、この1年間私たちが西会津に足を運ぶ中で出会った、さまざまな人たち・ものたち、そこでのできごとを、ひとつのアーカイブとして芸術村の廊下で展示しました。(当時の展示内容は、"こととか2016「今、います」"のマガジンで公開しています)

画像8



◆ 私たちが再び「会う」ということ

2016年の夏、その多くの時間を西会津を通じて共有していた私たちですが、2017年から2019年にかけては、就職・進学・移住など、それぞれの生活の変化から少し規模を収縮し、何人かのメンバーが継続してその活動を続けてきました。

西会津の子どもたちを対象にした、
瓶を再利用してつくる風鈴づくりのワークショップ「風をつかまえよう!」

画像5

腰ばた織、石を拾って糸で編むおまもりづくりのワークショップ、

画像6

イベントで出会った玉ねぎ農家の方からいただいた玉ねぎの皮を使って
今度は京都で染め物ワークショップを開催するなど、

画像7

ゆるやかに繋がりを広げながら、じんわりと活動を続けてきました。


そして、2020年。

新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、東京オリンピックの開催延期が発表され、私たちの生活もずいぶんがらっと変わりました。
「こととか」のメンバーも、仕事や生活に影響があった人、自分の住む土地でできることを続けている人、その様子はさまざまです。

2020年8月1日、私たちは久しぶりに「こととか」のみんなで顔を合わせることになりました。久しぶりの再開は「オンライン」でパソコンの画面越し。

あれから4年の時間が経ち、西会津に移住した人もいれば、北海道に移住した人もいて、茨城、東京、大阪・・と、メンバーは相変わらずそれぞれの場所で生活をしています。そして、コロナ禍という事態の中、2016年に「今、います」という言葉を掲げた私たちにとっても、「人と会う」「場所を訪れる」ということの意味が大きく変化するタイミングでもありました。

約3時間半のミーティングを通じて、私たちはこの日、1年後の同じ日に、再び西会津に集まってお互いに会うことを決めました。そして、ひとりひとつ、この1年の時間を過ごした中で生まれたもの、できたものを持ち寄ってみることにしました。

社会情勢も日々変化し、誰もにとって先の予定が見えない中、1年後の約束をするなんて無謀なことかもしれません。それでも私たちは、そんな今だからこそ、再び「会う」ということの価値をなくさずにはいられない。そのことをお互いに確かめる日でもありました。

2021年8月1日、みんなに会う「その日」がやってくるまで、私たちはこの1年間、また異なる場所で異なる生活を送っていきます。そして、それぞれが過ごす時間を定点観察のように記録し、このnoteを通じて、ときどき公開していきたいと思います。



こととか

井上 康子
大山 里奈
須藤 圭太・智子(MO'STO)
竹村 望
中小路 萌美
ニカモト ハンナ
山口 佳織
山口 創造
山本 昂二朗

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?