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Run for your Life.
《小説》
『リキは言った。
「境界線がさ。」
「境界線って?」
サキは聞き返した。
「子供の頃に、」
リキはいつもそうであるように、サキの問いかけには答えずに、何かをその意識の焦点で捉えたかのように続けた。
「(子供の頃に、)父さんが買ってきてくれた、ヨーロッパの木版画の画集のあるページに描かれていた絵を見てさ。それが何年ものあいだ、頭を離れなかったんだよ。」
「どんな絵だったの?
Un homme et une femme 〜オトコとオンナ〜
《小説》
マキは言った。
「もし犬を飼うとしたらどんな名前にする?」
「うーん、『ネコ』かな?」
「なにそれ?」
「そして子猫も一匹飼って『イヌ』にする。」
「冗談としても面白く無いわよ。」
「そして、僕に子供が生まれたら、その子が言葉を覚える過程で、『犬がネコで猫がイヌで。。。あれ?』って混乱するんだろうなぁ。」
「。。。アタシが小さい頃から気づいている秘密があるんだけど。」
SABI TETSU ONANDO
《小説》
キキは言った。
"Why don't you smile a little bit more happily when you see me?"
言った、と書いたけど、正確には「多分、そんなことを言った」というところだ。僕はボーっとしていたし、キキはリスがドングリをカリカリと齧る(実際のところリスがドングリを食べるのかどうか僕は知らないけれど)ように、スタタタタ、とスタッカートが効
288枚目のアルバム
《小説》
アキは言った。
「アタシと一緒にいる時は、ジミヘンとフランク・ザッパと、キング・クリムゾンは聴いちゃダメ。」
アキが、嫌いなくせにどうしてそういう音楽を知っていたのか?いや、最初はあの子はこういう音楽のことは全然知らなかった。僕が初めて彼女の部屋に行った時、彼女の部屋には品の良い音楽のCDが15枚くらいあっただけだった。品の良い音楽、というのも極めて主観的な僕の言い分だろうから、君