浄夜

汚辱に塗れた肉体を 彼は撫で浄める
特に念入りに 胸を 穢され続けた 胸を

たとえそのときだけでも
その夜だけでも
それ以上は望めなくても

欲望から逃げたくて逃げたくて
それでも逃げ切れなくて泣いて

あやふやな記憶から解放されたかった
自分で決める幕開けくらいは
心から願う人に赦されたかった

赦されても

緊張が続く強張った胸に
実に慣れた右手が伸びて 
何も考えずに包み込んで

胸の重さと 手の軽さが重なった
汗ばんだ夏の夜を 花火の匂いの髪を
忘れないとわかってしまって

月明かりが朝日に変わっても

選ばれた 夜を 侵されない 夜を

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