見出し画像

OEDO[1-7]既得権益のスライド

一方では「軍需産業は儲からない」との声も耳にします。我が国の防衛産業は、何も大手の重化学やサイバー産業だけに限らず、多くの中小企業、町工場に支えられています。そしてそこに従事する人の多くが、儲けを度外視して──とは言わずとも、使命感を持って働いています。

戦車1台の製造に千社の企業が関わると言われます。職人の技が失われつつある昨今、安全保障の生産基盤を失う訳にはいきません。「死の商人」と言えば、庶民の生き血をすする悪の権化のようにカリカチュアライズされますが、とんでもない。皆さん崇高な精神の元で、露命を繫いでおられるのです。

そして誰よりも自衛官の方々の現状。有事の際に必要な耐久財、消耗品の不足が懸念されています。備蓄弾薬や燃料、医療キットの慢性的な不足や、旧耐震性能の建物が4割にものぼる(‘22年の報道)などなど──『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』という本も話題になりました。

また、給与そのものも低く、社会的地位も低すぎると嘆かれます。残業代の問題も指摘されますし、再就職、再々就職の困難さも取り沙汰されます。「国民を守りたい」の一心で、激務に耐え、我が身を挺していらっしゃるのです。そんな自衛官の方々の生活を奪う訳にはいきません。

「既得権益」と言うと響きが悪いかもしれませんが、まっとうな手続きと、献身的な努力とで得られた当然の権利や利益も存在します。そちらの方が多いくらいです。そんな「既得権益」は守られなければなりません。守ることが難しければ、できるだけ毀損することなくスライドさせることにしましょう。

世間では「違憲だから自衛隊を無くせ」という暴論も目にしますが、その後の受け皿がまったく考慮されていません。その点「地球防衛隊」法案は、雇用や産業に重点を置いています。組織編成、航空機、船舶、車両から関係省庁、財源などもできるだけそのままに、平和活動へと転用するのです。

もちろんこれだけでも大掛かりで、実現不可能に近い国家事業となるように思われるでしょう。しかし急ぐ必要はありません。ゆっくりと漸次的に改編していけば良いのです。いえ、逆に「できるだけ毀損せずに」スライドさせるためには、先を急いてはダメなのです。

理念としては、半導体工場を野菜工場に転用する例に近いでしょう。無機的なデジタルから、有機的な植物への転換です。しかし、喩えとしては不良が進学し、元ヤン先生や政治家になったり、アスリートになる例の方が分かりやすいかもしれません。

別に自衛隊が不良だとか、不良そのものが悪だとか言いたいわけではありません。その精神、その根性、その身体能力を高く買っているのです。社会に役立つ素晴らしい人材、世界に貢献できる大切なリソースです。「できるだけそのまま」にどころか、最優先で待遇改善をすべきです。

戦争が時代遅れとなったように、見渡してみれば今や「不良」も時代遅れの遺物でしょう。’80年代にあれだけ社会問題となった金属バットも、腐ったミカンも、2020年代の今となっては絶滅危惧種どころかか天然記念物。もの珍しさか郷愁の眼差ししか向けられません。

同様に、あれだけ戦乱の続いたヨーロッパ諸国も、今やすっかり仲良しこよし。ブレグジットのように拗ねるメンバーもたまには出るけど、EU内で戦争が起こる予感はもう微塵もありません。逆に「移民・難民を受け入れるかどうか」──なんて人道的な問題で揉めているほど平和です。

そう考えると、僕たちアジアはかなりの遅れを取っています。やはり産業革命が起きた欧州には、ワンポイントの差をつけられているのかもしれません。いまだにどちらが強いか、誰が学校を仕切るか、学区を挟んでのイザコザが絶えません。スラムダンクで言えば不良編。まだ8巻の途中あたりです。

渦中にいる時は軍団やケンカのルールに縛られて、それが全てのように思い込みがちです。しかし振り返ってみれば、「なぜオレはあんな無駄な時間を」と後悔さえするものです。いつまでも不良国家なんかと絡んでないで、先に宣言すれば良いのです。「先生……地球防衛隊がしたいです」と──。

脱亜入欧ではありませんが、勉学やスポーツへと転向するように舵を切れれば、その後は華々しい活躍が待っているはずです。「地球防衛隊」の射程距離は欧州諸国より遥か遠くを目指しています。もうそろそろ自分を信じてもいい頃です。4回連続3ポイントだって夢ではありません。


※最後までお読み頂きありがとうございます。この「地球防衛隊」全体の構想は最初の投稿「OEDO[0-0]地球防衛隊法案──概論」にまとめています。それ以降の章は、この章も含めて、その詳細を小分けして説明する内容になっております。

第一部[1-1]〜[1-9]では「戦争観のアップデート」について。第二部[2-1]〜[2-9]では「地球防衛隊の活動と効用」について。第三部[3-1]〜[3-9]では「予想される反論への返答」について。第四部[4-1]〜[4-9]では「地球防衛隊に至る思想的背景」についてを綴って行く予定です。

敢えて辛辣に、挑発的に書いている箇所もありますが、真剣に日本の未来を危惧し、明るいものに変えて行きたいとの願いで執筆に励んでいます。「スキ♡」「フォロー」や拡散のほど、お願いいたします。

この記事が参加している募集

防災いまできること

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?