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今さらだけど「Kick-Ass(キック・アス)」の話をしたい

2010年に映画化もされ話題になったアメコミ「Kick-Ass(キック・アス)」について話したい。
ぼくは憧れている人物の名前を付箋に書いて家の壁に貼っているのだが、実在する人物が並ぶ中で目立つ「デイヴ・リゼウスキ」の文字。家に来た友人にこれは誰なのか尋ねられると、いつもこれだけ長い話をしたくなる。しかし長すぎていつも雑な説明で終わってしまう。ほとんど話したことがないので、ここで吐き出しておく。

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そもそも「アメコミ」とは

任天堂を知らないでポケモンやってるなんて、どこから来たか知らない友達と遊んでるのと一緒だよ!

幼い頃に母親に言われた言葉である。理由は忘れたが、任天堂のちょっと高いトランプを買ってもらった時のことだ。「Nintendo」と書かれたケースを見て、「任天堂って知ってる?」と聞かれたのを覚えている。ぼくの答えはノー。小学校低学年のいしろう少年は、そもそも「Nintendo」も「任天堂」も読めなかっただろう。そんな息子に、なぜか母親はそんなことを言ってきた。たぶん、隣にいた兄に言ったのかもしれない。

アメコミ映画は見るが、「アメコミ」が何を指しているのかわからないという人を何人か見たことがある。そういう人を見るたびに、前述の母親の言葉を思い出す。

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自分の部屋にはスーパーマンの特大ポスターが貼ってある


アメコミというのはアメリカン・コミックスの略で、アメリカの漫画のことだ。日本と同じように色々なジャンルがあるが、スーパーヒーローを題材にしたものが世界的な人気を誇る。アイアンマンやキャプテン・アメリカなどアベンジャーズが登場するMARVELコミックと、スーパーマンやバットマンが登場するDCコミックスが二大巨頭となっている。そして、それらのコミックスをもとに実写化される映画シリーズが2010年代の映画界を席巻しているというわけ。

2012年に映画「アベンジャーズ」が公開されたあたりから日本でもアメコミヒーロー人気に火がついたので、アメコミ=MARVEL=ヒーローものというイメージがかなり強い。ぼくがバットマンに憧れている話をすると「へえ〜いしろうもマーベルすきなんだ〜」と間違って言ってくる人がいる。しかしバットマンはMARVELではない。これはオタクからしたらとんでもない間違いである。そばとうどんを、同じ日本の麺だからという理由で一緒にしているようなものである(たぶん違う)。

キック・アスとは

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自分がさもアメコミに詳しいようないい草で話を進めてきたが、ヒーローものしか知らないし、彼らに触れる機会は実写映画かアニメシリーズくらい。そんなぼくが唯一買って持っているアメコミが「キック・アス」だ。MARVELコミックの子会社から出版されており、日本語版は小学館集英社プロジェクトから発売されている。なぜこれなのか。もちろんバットマンもスパイダーマンも大好きだが、キック・アスへの「好き」は少しベクトルが違う、オンリーワンの存在だからだ。

デイヴ・リゼウスキという男

物語の主人公はヒーローオタクの高校生デイヴ・リゼウスキ。1人でいる時はぶつぶつくだらない妄想をして、オタク仲間とマニアックな話をして盛り上がる日々をすごしている。そんな彼は、ある日インターネットで取り寄せたスーツに身を包み、スーパーヒーロー「キック・アス」として活動を始めることを決意するのである。痛い。痛すぎる。しかし彼には何の超能力もないので、活動といっても街をうろつくだけ。しかしある事件をきっかけに、彼の動画がYouTubeにアップされて一躍時の人となると、キック・アス名義のSNSはリア垢の何倍もフォロワーがついて、、なんて、人気者気分を味わうのだ。でも本物の暴力事件なんかビビっちゃう。そんな苦労も表に出さず、学校では自分がキック・アスであることは明かさず過ごす。見ているこっちは、なんだかリアルとフィクションを行き来しているような気持ちになる。

デイヴの生き様をどう捉えるか

コミックの帯には、映画評論家・町山智浩の「スーパーマンのような超能力もなく、バットマンのような金持ちでもない男が、マンガじゃない現実でヒーローになるには、誰よりも血を流すしかないんだ!」とのコメントがついている。確かにその通り。普通の人だった主人公が何かのきっかけで超人的な力を手に入れてヒーローになるのがおきまりと言っていいアメコミヒーローだが、キック・アスは最後までただの人なのだ。だから殴られれば血が飛ぶし、高いところから着地すると足も痛い。フィクションでありながら、なにかと"リアル"なのだ。この話。
コミックスを読んでいるor映画を見ているぼくたちは、私生活がうまくいかないデイヴを嘲笑うこともできるし、同情することもできる。「誰よりも血を流すしかない」キック・アスを、応援してもいいし、カッコつけるあまり痛い目を見ている様を傍観することもできる。こんな良くも悪くも等身大の主人公・デイヴに、映画を見たぼくは心打たれた。そしてなけなしの小遣いでコミックも買って何度も読んだ。「ヒーローもの」でありながら、主人公に憧れもできるし、バカにもできるし、友達みたいに親しく感じることもできる。


映画版とコミック版では結末も含めいくつか違う箇所があるのだが、ぼくはどっちも好きだ。
そして、映画版の主題歌「Kick Ass (We are young)」の歌詞がとてもいい。


We are young
We are strong
We're not looking for where we belong
We're not cool
We are free
And we're running with blood on our knees

俺たちは若いし、強い。何かに所属する(型にハマる)つもりなんてない。
でも、ダサい。それでも、俺たちは強いし、血まみれの膝でも走り続けるのさ。


大好きなこの曲を聞くと、デイヴみたいになりたい!と思う時と、デイヴみたいにはなりたくないな…と思う時もある。「キック・アス」、不思議な作品だ。正直、映画版でのクロエ・グレース・モレッツ演じるヒロインのミンディのかわいさと強さに注目されがちだが、それでもこの作品の主人公はキック・アスであり、デイヴなのだ。

デイヴを演じるアーロン・テイラー=ジョンソンも、2014年公開「GODZILLA」で主演していたり、「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」でクイックシルバー/ピエトロ・マキシモフとして実際にスーパーヒーローになっていたり、2020年公開の「テネット」にも出演していたりと、本当にかっこいい俳優さんなので是非とも覚えておいてもらいたい。

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映画.comより引用


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