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リーマンショックにおける金融倫理の見直しと、今後の日本経済への危惧を記す。

はじめに

2008年9月15日、アメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻し倒産した。理由は住宅ローンの債務不履行による約1300億ドル(14兆円)の負債である。これを機に当時の世界経済は崩壊し、アメリカでは失業率が10%を超え、約1500万人の人々が失業した。日本においても失業率が5%を上回り、ヨーロッパ圏・アジア問わず経済不況に陥り、まさにグローバル経済の崩壊であった。なぜこのような大規模の経済破綻が世界トップの金融機関が集うアメリカで起こったのだろうか。まずはリーマン・ショックの背景にある金融事情から考察していこうと思う。

リーマンショックの概要

 コトの発端は1970年代にモーゲージ債(不動産担保証券)が発行されたことから始まる。モーゲージ債とはアメリカの信用度(FICO)が高く、安定した職に就いている人々が組んだ住宅ローンを証券化したものである。
当時のアメリカは経済成長期であり、住宅ローンに安全に通った人々がローンを返せなくなる可能性は極めて低く、またモーゲージ債は販売している金融機関から元金保証がされていたため、格付け機関(ムーディーズ、S&P等)がAAAをつけるほど安全な金融商品であった。

AAAをつけられている別の金融商品として米国債があるが、このことからもモーゲージ債が如何に安全な金融商品としての立ち位置であったかが分かる。そしてこのモーゲージ債、当時の機関投資家や企業の投資部門から絶大な人気が出た。理由はリスクが低い割に利回りがよく、資本の大きい投資機関にとって旨味のある長期投資として注目されたからである。

その結果、モーゲージ債の貢献によって、信用度の高い労働者はよりローンが組みやすくなり、不動産市場は好景気になった。ここまでは何の問題もなかった。モーゲージ債は実際にアメリカ経済の成長に伴った証券であったし、中身もしっかりしたものであったからである。しかし、この証券によって銀行等の金融機関は儲かり、彼らはより多くのモーゲージ債を発行して更に多くの利益を得たいと考えるようになった。

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