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番外編その2 エアとエアポートのUD

1, ZipAirに乗ってみた

今回、初めて国際線のLCCであるZipAirに乗ってみた。Webサイトでの予約は、わかりやすい。一度オーダーの途中で止まってしまい、取り直したら金額が変わってしまうというトラブルがあったが、メールでの問い合わせが迅速かつクリアで、すぐに対処してもらえた。事前チェックインも使いやすく、Webで大半の手続きができてしまうので、結果として空港の窓口での受付がかなりスムーズだった。DXが進んでいる。
フライト自体も、かなり快適だった。機体が新しく、全般的にきれいである。清潔なトイレにはウォシュレットもあった。映画やフライト情報は、各自のスクリーンではなく、各自が持ち込んだスマホやPCで観るというパターンだったのだが、残念ながら、このWifiが遅い!つながりにくい!行きがけはなんとか一本、映画を観たが、帰りはシステムトラブルもあり、寝てしまった。。。

スマホを置くスペース オーダーなどは上のQRを読む
PCやタブレット、食事を置くスペース 後ろに電源も

 食事は事前予約制だ。これはSDGsとしては正しい方向だ。一般的なエアだと、国際線の食事は、フードロスの問題が大きい。食べずに寝ていたい人もいる上、どの料理がいくつ出るかを事前に把握できず、かなりの部分が無駄になる。事前オーダーは合理的だと思う。
ZipAirで出てくる食事はものすごく美味しいというわけではないが、まあ、こんなものかなあ。私のバターチキンカレーはまあまあだったが、連れ合いのハヤシライスは微妙だったかも。帰りのチキンの料理もトマトパスタも、ま、ふつうである。ただ、予約時に好きなものを選べるとサイトに書いてはあるが、基本料金との差額ではなく全額が追加料金になるのでお得感は全然ない。連れ合いは、蕎麦が食べたかったのにと、ずっと恨めしそうだった。また残念だったのは、お酒のオーダーが、食事を配り終えてからでないとできないことだ。アルコールの持込は禁止されている。カレーを食べてしまってからビール、パスタが終わってからワイン、というのは、呑み助としては、かなりつまらない。ここで儲けようなどと考えていないのだろう。でもよく考えてみれば、CAさんが全体に食事を配り終えてからのお酒の注文のほうが、個別対応がしやすいのだろう。この食事も、お酒などのオーダーも、全て座席番号と紐づけられている。これはシステムとしてはよくできていると思う。支払者が明確だからだ。

バターチキンカレーと水
水とお絞りはついてくる

また、一回食事を配った後は、自分でオーダーしない限り、何も配られないので、ぐっすり寝たい人には良いシステムである。ZipAirにはフルフラットシートがあるのだが、離陸直後からずっと寝ている旅行者もいるようだった。これも悪くはない考えだ。朝ごはんで起こされるのは、状況によってはうざい場合もあるからだ。CAさんなどスタッフの疲れ方も違う気がする。オーダーがあった分だけ動けばいいのだから、休憩も交代で取りやすいのではないだろうか?客もスタッフもWinWinである。
ただ帰路はみんなお腹がすくようで、あたりにみんながオーダーしたカップ麺の匂いがたちこめたので、笑ってしまったが。あまりにたくさんカップ麺がオーダーされるようだと、やはりスタッフも休めないかもしれないなあ。
トイレにはウォシュレットもある。気圧の調整が大変で、と、かつて共同研究をしていたTOTOの研究者がこぼしていたことを思い出す。技術は進化しているのだ。

操作画面 ボタン4つ
機内のウォシュレット操作画面 シンプルだ

2,LAXで見つけた楽しい自販機とALL GENDERトイレ

このところ、世界の自販機がものすごい進歩を遂げているのだが、LAXでも可愛いのがあった。これはカップケーキの自販機である。毎日焼きたて!なのだそうだ。箱詰めもしてくれるのか。女子たちが、カワイイ!と集まっていた。でも、甘そうだな。。かなり種類があるが、右側のデジタル画面から選ぶようだ。UDかどうかはわからなかったが、シニアも買っていたので視認性は良さそうだ。

カップケーキの自販機
カップケーキの自販機

隣は、ボトルサラダやラップの自販機だ。チーズやグアカモーレ(アボカドのディップ)なども売っている。冷蔵機能がついていて生鮮食品もOK、全面ガラスで一覧性があって、で、オーダーは横のデジタル画面から、という自販機が、このごろ増えてきた気がする。技術的に進化しているのだろう。だが、はて、これはUDなのだろうか?とも思う。試す時間がなかったのが残念だ。右側にあるサインは、CSUNで見たヘッドセット用ではなく、カトラリー(スプーンやフォーク)はここ!というものだった。いつか、自分のスマホと連動できればOKかもしれない。

サラダなどの瓶とオーダー画面
瓶詰のサラダ自販機
ラップサンドやチーズの写真
Wrapやグアカモーレも売っている

LAXなどの国際空港では、アクセシブルトイレは今では車いすマークではなく、「ALL Gender」のサインがメインになっている。空港のトイレは、客がトランクを持ち込めるようにみな個室が大きくて、手動式の車いすなら問題ないサイズであり、かつ、一般的なサイズのトイレの奥には、かなり大きめの個室もあって、そこへは電動車いすでもアクセスできる。そのため、アクセシブルトイレのユーザー層は、異性介助やLGBTQなど、より多様な人に広がっているのだ。

アクセシブルトイレの写真
アクセシブルトイレのサインはALL Gender  子連れ 車いす
ALL Genderのサイン
トイレのサインはALL GENDERという言葉が主流

まひのある人などが使えるように、ボタンはシンプルに大きめのプッシュ式で、ひじでも押せる。

ひじなどでも押せる大きめのボタン
シンプルに、押して開くようになっている

トイレの中はとても広い。いわゆるアクセシブルトイレは、車いすの方だけでなく、LGBTQの方、異性介助を必要とする方、大人用のおむつ替えシートを必要とする方のためでもある。赤ちゃんのおむつ替えシートは、男女どちら側にも存在するため、おむつ替えで車いすユーザーが待たされることはない。
これまで日本では、設置してもなかなか利用率が上がらないことから、おむつ替えシートやオストメイトなど、多機能にし、できるだけ多くの人に便利さを実感してもらうことで、設置数を増やしてきた経緯がある。だが、まちがUDになればなるほど、車いす・ベビーカー・オストメイトのユーザーも高齢者も、街でそれを使うようになり、結果として使いたいのに空いていない!ということが目立つようになってきたのだ。多機能化を、そろそろ見直す時期なのかもしれないと思う。

3, 成田空港のユニバーサルデザイン

成田空港は、この数年でものすごくきれいに、かつUDになった。トイレの清潔さはもちろんのことだが、多様なユーザーへの配慮に関して、ここまで肌理の細かい配慮をしている空港は、世界のどこにもないだろう。社長が、成田を世界一UDな空港にすると頑張っていらした成果だと思える。

これ以降は、帰国時に撮った写真であるが、デザインも実に美しい。日本的な桜をモチーフに、男女もわかりやすくなっている。日本は、特にサインのデザインが秀逸だと思う。

トイレの入り口のサイン
到着ロビーのトイレはデザインもサインも美しい

ベビールームはかなり広い。これなら車いすユーザーの親御さんや祖父母が一緒でもアクセシブルだ。

子連れの方向けスペースの案内
子連れの方向けのスペース 広い


ALL Genderの部屋もあり、異性介助の人にも使いやすい。ただ、日本人の高齢者には、All Genderという意味がわかりにくいかもしれないので、「介護が必要な方を優先してください」と追記してある。なかなか肌理の細かい部分である。

ALL GENDERスペースの案内
ALL GENDERのマーク

また、案内カウンターは、車いすアクセスを含め、UDである。インフォメーションの文字や?マークは、コントラストが明確で、遠くからでも見つけやすい。

案内所のサイン カウンター
インフォメーションはわかりやすい

カウンターの上には、発達・知的障害の方のための空港予習冊子「なりたくうこう」や、一見してわかりにくい内部障害の方のための「ヘルプストラップ」の案内、聞こえにくい人へ音をクリアに届けるスピーカーの「コミューン」が設置してある。

カウンターの上のさまざまなUD
さまざまなUDグッズが準備されている

また、テレビ電話で多言語対応を行う機器もあり、日本語、英語、中国語があった。手話はないかと聞いたところ、ここでは提供していないということだった。手話フォンがある場所もあるので、そちらで対応しているのかもしれない。また、成田のインフォメーションの担当者は、英語はもちろん手話を勉強されている方も多いので、安心である。車いすも貸し出している。

テレビ電話と貸し出し車いす
多言語の案内や貸し出し用車いす

成田空港には、交通系のナビゲーションシステムがあり、空港からの交通機関の情報がわかる案内板がある。これもQRコードでアクセスできるようになっている。

道路や交通状況を示すデジタルな案内板
交通案内のデジタルサイネージ QRで読める

また、車いすトイレの場所などを検索できる。搭乗券をスキャナーで読ませることができ、プリンターもついているので、搭乗口までのルート案内もできるのだろう。隣に音声で情報提示をしてくれる電話機も設置されているので、視覚障害者の方も使えると思われる。今回は時間がなく、見ただけであったが、次回はしっかり利用してみたいと思う。

搭乗案内やUDトイレが探せる
搭乗券をリーダーで読むと搭乗口まで案内が出るらしい

成田空港に帰ってきて、思う。CSUNは、確かに情報インフラをUDに、アクセシブルにするという点では世界の最先端を行っている。でも成田空港のように、情報を含めながら、ハードもソフトもサービスも、UDでありたいと願っている企業が、日本にも確かに存在する。国内の進んだUDを紹介することも、もっともっと必要だと思った。

今回も、お読み頂き、ありがとうございました。

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