見出し画像

無題

恐らく熱が少しあるのだ。

夜中に目が覚めた時、首から上だけやけに熱く感じた。
対照的に私の躰、手足は驚くほどに冷たかった。
冬が近づくと末端冷え性の私の手足は、
自分でも触りたくなくなるほど冷たい。

私の寝室には時計が無いので、枕元に置いてある腕時計をみた。

窓の外からは雨音が聞こえる。

革が有名なそのブランドの時計は、亡き父が20歳の誕生日と志望していたバレエ団合格のお祝いにプレゼントしてくれたものだ。

当時の私には身の丈に合っていない様な、つけると急に大人にならなければいけない様な気持ちになるもので、少しそわそわしたりした。

それは今も同じだ。
私はまだまだ全然大人になりきれず、未だにこの時計をつけると身が引き締まる思いがする。

人はそう簡単には変わらないのかもしれない。

私の末端冷え性も、夜中に目が醒める癖も。

やはり少し熱がありそうだ。

ぼーっと熱い頭を枕に戻した刹那

遠くにいる大切な人達の顔が浮かんで目頭が熱くなった。


#文章 #エッセイ #真夜中 #75

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?