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君は OFFICE CUE を知っているか           ~走れ ウポポイ 後編~

ウポポイの公式サイトに飛ぶ。
小一時間かけてやっと入場チケット二枚購入完了。


よし、あとは誰か一緒に行ってくれる人を探そう。
三男も夫も仕事だ。

唯一の友達に 日曜日ヒマ? とラインを送る。
「あさって?予定入ってるわ。」

そだよね。


いや、ぼっちでも行くぞ。
何人たりとも私を止めることはできない。
自分で運転して行く!


ところで


ウポポイってどやっていくんだ?



私ってやつは、カーナビの言うとおりに行けたためしがない。
同じところをぐるぐる回って、挙句にカーナビが嘘をついてる!とキレる。
住所だけなんてもっての外。
未だに札幌ではどこに何区があるのか解らない。
建物から出るとどっちに行けばいいのかわからなくなる。
そのくせ根拠のない自信のままに進んで迷子になる。

そんな私が行ったこともない白老のウポポイに
一人で行けるわけがない。

どうする家康 違う どうする私。


こうなったらもう次男にお願いするしかない。

不定休の仕事の彼に、最後の望みを託してラインをする。



次男くん、日曜日はお暇でしょうか?

「休みだよ。なんかあった?」


あのーウポポイいきませんか?

「ウポポイ?予約制じゃないの?」


もうチケット取ってまして。
11時からシゲちゃんともりのトークショーあるのです。


「そうなんだ。暇だしいいよー。」


まじですか!



神!あなたは神です!
ありがとうありがとう次男さま。いや神様。


じゃあ明後日、神様の家まで運転していきます。

「そこからは俺が運転するよ。かあちゃんには無理っしょ。」

ああ、母のことをよくわかっていらっしゃる次男さま。
よろしくお願いいたします。すべてお任せいたします。


九時開場に合わせた時間を約束しその日は就寝。

土曜日の朝、もう一回確認のためにウポポイのサイトを開いた。
そしたら


トークショーの整理券は先着132枚限定で9時半から配布いたします。

と書いてあるではないか。


えっと、これって
もしかして並ばないと手に入らないやつじゃね。

だとしたら、九時じゃダメだべさ。


やばいやばい。


焦って神様にラインを入れる。


整理券もらわなくちゃトークショー観れないんだって。
どうしよう。何時にいけばいいの?

「わかった。混むかもしれないから家を7時半にでよう。
かあちゃんそれまでにこっちにつくように頑張って運転しておいで」


はい神様。おっしゃる通りにいたします。



日曜日、7時半どころか6時半に神様の家についてしまった。
半笑いの彼の運転でウポポイに着いたのが8時前。
もうすでに30人くらい並んでいる。

待っている間に後ろに並んでいる方々の話しが聞こえてきた。

「なんかドキドキするね。りーだーとシゲが来てるなんて」


ああ お仲間!

そうだよねドキドキだよねって話しかけたかったけど
世の中ソーシャルディスタンス全盛。我慢した。

検温スペースを通り抜け、開場時間になった。


門の向こう側に、お出迎えの方々が並んでいるのが見えた。



あれは


シ、シゲちゃん!

もりー!


シゲがいる!と叫んで、思わず後ろの方と手を取り合ってしまった。
やばい ソーシャルディスタンスだった。

すみませんと謝ると
「大丈夫!私たちもそこ目当てです!」って

子ナックスの皆さんはやっぱりやさしい。


係りの方が拡声器で
「ソーシャルディスタンスを守って、立ち止まらず進んでください。」
と叫んでいる。

右足と右手が一緒に出てるんじゃないかってくらい緊張して
お出迎えの列の前へ歩いていく。


そこにはマスクしてたけど、
まぎれもない 生戸次重幸さま が降臨しておられた。
生森崎博之りーだーも。



興奮と感動とで手が震えて写真もろくに撮れず、まともに映ってたのはこれだけ。



ちっちゃっ
次男撮



「かあちゃん、俺、先に行ってるから!」

脳内がお花畑で羽が生えて空も飛べそうになってる私にそう言って、次男が走り出した。


そうだ!整理券だ!


並んでいる間に次男と場内地図みながら、配布場所までの最短の道を確認していた。が、もうそんなことは私の頭にはかけらも残っていない。
とにかく人が向かっている方向に駆け出した。


次男の姿はどこにもない。


走れ 私 

陸上部だったじゃないか自分。
全道大会も一回だけ出たじゃないか。
当時、競技人口がなまら少ないやり投げでだったけど。


走れる 

大丈夫

って思ったのはダッシュした10メートルくらい。
その後は焦る気持ちと裏腹に、全くスピードが上がらない。

しかも坂道だ。

整理券は一人一枚。

諦めたらそこで試合終了だ。頑張るんだ私。


足がもつれて転んで救急搬送される自分の姿がよぎる。



その時、前を走っていた女性が転んだ。
ものすごい勢いで、マンガみたいに前のめりで。

友達らしき方が駆け寄ろうとした時、彼女は言った。



「私はいいから、先に行って!!」


犯人追いかけてるバディの刑事ですか?



声をかけると大丈夫というので、私もまた走り出した。
しかし、息は上がっても足は上がらない。
苦しい。マスクいらねえ!

もうダメかと思ったその時、手を振る次男が見えた。


死ぬかと思った。ほんとに。


瀕死の状態の私の遥か遠くに、シゲちゃんともりが突然現れた。

もりがそばにあったワゴンカーを指さして
「みんな、焼き芋買うの?」って。


ああ遠い

彼はやっぱりやさしい。気遣いが半端ない。


死闘の末GETした23番の整理券を握りしめ会場へ行った。
ほぼ真ん中、最高の席だった。

トークショーが始まって最初よそ行きシゲちゃんだったけど、後半は47歳児のシゲが顔をのぞかせていた。
もりはあのままサービス精神の塊だった。


幸せな時間はあっという間に過ぎ、推しの姿を目に焼き付けてウポポイを後にした。



帰り道、次男のおすすめ

たらこ屋虎杖浜で遅いランチ。



甘エビ天丼セット

たらこが絶品。なのに天丼食べてる私。

そしてここにも推しが。


おにぎりあたためますか


東京の次女にたらこを送って、お土産を買って帰路についた。


「かあちゃん、乙女の目してたわ」
と、その日のファミリーラインで次男が報告してた。




命がけのダッシュのおかげで翌朝から三日間、
筋肉痛でまともに歩けなかったのは言うまでもないこと。



ここからエスカレートする私の推し活については、また今度。


                したっけ


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