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インクルーシブデザインで雨の日をアップデート!「インクルーシブデザインワークショップ」体験記

こんにちは!全く目が見えないお姉さん、愛美テミスです。
 
夏です!そして月並みですが今年も熱いですね。そんな中、Withコロナで私も外出機会が増えてきました。
今までオンラインでしか交流がなかった方々とリアルで対面できたり、プチお食事会ができたり、イベントに参加したり。。。少しずつですが、かつての日常に近づきつつあることを実感している今日この頃です。
そんなこともあり、今回のコラムでは、最近参加した「インクルーシブデザインワークショップ体験会」についてのレポートをさせていただきます。

はじめに:インクルーシブデザインワークショップとは?

まず「インクルーシブデザイン」とは、これまで製品やサービスのユーザーとして想定されていなかった人々(対象外となっていた人々)を、企画・開発の初期段階から巻き込んで(Includeして)、一緒に考えていくデザイン手法を指しています。日本では、障害のある人や高齢者などをリードユーザーとして、「ともにデザインを作り上げていく課程を体験する場」を創出することが多く、視覚障害の私も今回はリードユーザーとして参加させていただきました。

テーマは「雨の日の外出をアップデートする」

多くの人が煩わしいと感じる「雨の日の外出を、どうしたら快適にできるのか?」を3つのグループに分かれ検討しました。私たち視覚障害のある当事者はリードユーザーとなり、各グループに配置されます。
 
会場に到着すると、テーブルの上にはすでにビニール傘に折り畳み傘、レインコートなどいくつも雨具が並んでいます。各グループでまずは自己紹介。そして各自が「雨」について、お困り事や雨のイメージなど思い思いに出し合います。そして、この後が私たちリードユーザーの活躍どころ。雨の日の外出時の持ち物や困りごとに工夫していることを具体的に把握してもらいます。たとえば、傘立ては自分の傘が判別できなくなるから傘立ては使わない、白杖と傘を持つから必ずリュックを使用する、傘があると顔付近の障害物は回避できる効果がある、レインコートは耳が塞がるから使いづらいなどなど、メンバーの疑問・質問に対し一つ一つ言葉や実演を交えて伝達していきます。

「雨」に関して、チームでのディスカッション

すると「百貨店の傘袋入れってそもそも使えないよね」とか「障害があってもなくても、困っていることの多くは同じことなんですね」とか「我々健常者が困っていることについては、障害のある人は、もっと困っている」などの声がどんどんと上がってきます。そういった“なぜ?”や“なるほど”といった気づきは、忘れないようにすべて付箋に書き留めておきます。グループワークも中盤に差し掛かり、雨具の便利、不便に対する解像度が上がってくると徐々にメンバーの会話は疑問・質問から「こうだと便利だよね…」と創作モードへ自然と突入していきます。そんなタイミングでファシリテーターから声がかかり、ワークショップは最終段階となる「ともに作る」プロトタイプ作成へと進んでいきました。

新しいアイデアを青天井で創造する楽しさ

ワークショップの締めくくりは成果発表です。
私たちは、気づきをもとに“あったらいいな”を形にしました。
グループごとにメンバーの属性はバラバラ、着眼点も異なります。出来上がったプロトタイプには、不思議な形のレインコートとか、小型乾燥機付きリュックサックとか、はたまた全身まるごと乾燥サービスとか。そこには創作に紐づく「なぜ?」とか「ちょっと失敗…」みたいなストーリーもありました。そこで互いの共通点や違いを発見し、また新たな気づきが湧いてきます。
発表会は盛り上がり、新たな視点も加わったところで、続けてプロトタイプをバージョンアップさせたいところですが残念、ここで終了時間となってしまいました。名残惜しい。。。

最後は、各グループによる発表
最後は、各グループによる発表

おわりに

インクルーシブデザインワークショップのおもしろさは、商品開発であれば既にある商品に機能をオンするではなく、これまで商品の対象者ではなかったユーザーを敢えて巻き込むことで全く新しい気づきが生まれるところです。また、商品開発のみならず、日常的に接点のない多様な人材が集まり、共創することでアンコンシャスバイアスを乗り越えていくプロセスも醍醐味です。体験会に参加して、改めてこうしたプロセスの向こうにこそ、イノベーションが生まれるのかもと感じました。
 
インクルーシブデザインと私たち障害のあるリードユーザーの間には親和性があると思いませんか?
皆さんも機会があれば、インクルーシブデザインワークショップをぜひ体験してくださいね♪

参考

特定非営利活動法人Collable 

インクルーシブデザインワークショップ│インクルーシブデザインスタジオ CULUMU

登壇者プロフィール

愛美テミス:産業カウンセラー/JPA認定カウンセラー
1973年生まれ。
視力がだんだん失われていった10代から30代にかけて感じた恐怖と、社会からの疎外感を忘れることができない。誰もが優しくつながる社会を理想に掲げ、現在ライフワークとしてブラインドのためのITサポートやピアカウンセラーとして活動をしている。さらに、晴眼者のITサポーター養成にも取り組んでいる。パラちゃんねるのライター兼WEBアクセシビリティも担当する。


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