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【建築家の頭の断面図】要望が同じでも全く違うオーダーキッチンのコト(リノベ)

以前キッチンの要望がすごく似ているプロジェクトの話をしていきたいと思います。両方とも戸建て住宅のリノベーションで、年齢も建物規模もとても似ていたんですが・・・

ただ明らかに違うのが、インテリアの好みが全く正反対。
1つ目は「明るく優しい雰囲気のインテリア」が好きで、2つ目は「男性的で暗めのかっこいい雰囲気のインテリア」が好きでした。

くつろぎの時間、家族が集まり重要視する時間帯も、1つ目は「朝」と2つ目は「夜」と正反対でした。

ただキッチンの要望は非常に似ています。

  • 料理が好きでキッチンにいる時間が長く、居場所として計画したい

  • 子供たちと一緒に料理をしたい

  • キッチンだけである程度食事も完結したい

ということでした。

1つ目は木造、2つ目は鉄骨造と構造が違ったため、躯体の使い方や空間の広がりの演出は違うアプローチをしていますが、キッチンの要望からすると、料理をしっかりするならある程度勢いよく鍋をふったり、水栓との動線が最短でできる壁付けキッチンを設定。そして作業台兼簡単な食事ができるアイランド部を計画しました。


※過去の経験上、ホントに料理が好きな人は壁付けキッチンを好む傾向があるなって思います。これはたぶんコミュニケーションより料理を楽しむことを重視しているんじゃないかなぁって思います。ただ家全体での機能として、コミュニケーションの活性化を図ることも大切なので作業台や大きなダイニングテーブルを設置する人はかなり多いです。

①明るい柔らかな印象のキッチン

ネイビーとホワイトを基調にしたオーダーキッチン

非常に柔らかく、明るいシンプルなキッチンに仕上げました。
キッチンでこだわったポイントをお伝えすると、

  • レンジフードの存在感を無くす(吊り戸の中に隠す)

  • 色の配分は濃い色(ネイビー色)は腰高以下にして上部を白で統一させる

  • こまかいディテールにアクセントを入れてヌケ感を演出する

※ヌケ感のポイントはキッチン脚部、照明、水栓です。

(1-1)ヌケ感の「オーダー脚部」

キッチンの脚部をオーダーでデザインし、ヌケ感を演出

(1-2)ヌケ感の「ゴールド水栓」

DELTA社のタッチ水栓

現代的なモダンスタイルはカラーバリエーションによってモダン、コンテンポラリーミックス、そしてノスタルジーなミッドセンチュリーの世界へと導く。カタチを変えずに色を変えてデザインを寄せる。これがトレンド。

DELTA日本公式サイトより

(1-3)ヌケ感の「ペンダント照明」

ジェルバゾーニの照明

シリーズで使用しているラタン材の色合いが、インドネシアの地元の言語で「Buaya」と呼ばれ、それをクロコダイルと訳したことからCROCOというコレクション名の由来に。丈夫なラタン材で丁寧に編まれています。

ジェルバゾーニHPより

シンプルにつくるのは全体の空間や面積の多い部分で、細かいプロダクトにアクセントをつけると、個性を発揮できます。
あくまで「箱」はシンプルに・・・そしてヌケ感で何を選ぶかがインテリアデザインのセンスや経験になります。

②ブラックを基調とした強めな印象のキッチン

ブラック基調の男性的なカフェ風なキッチン

夜を重要視して、明るさを排除したいご要望があったため、ブラックを基調にサブウェイタイルでカジュアルさを表現したオーダーキッチンです。

ポイントとしては

  • サブウェイタイル(コゲチャ)の貼り方を少し工夫して単調さを排除

  • ブラックにムラ感を出しながら、床とタイルのトーンを合わせた

  • シルバーが似合うインダストリアル感を少しだけ演出した

※ヌケ感としてはタイルスツールです。

この事例はダイニングテーブルを無くしているので、実質このキッチンがダイニングでもあります。
全体的に色を入れていない理由は、料理が好きなクライアントのため、食器や料理の色が入ることでカラフルな空間を演出するためです。

※大切なことは「料理(食材)の色と食器を入れて完成する空間」ということを事前に伝えておくことです。そうすれば住み始めて様々な食器を集める楽しみ、バリエーション豊富な料理にチャレンジすることを楽しめるからです。

暮らすことの楽しみを残しておくのもインテリアデザインでは必要なことですよねぇ

(2-1)コゲチャのサブウェイタイル

コゲチャのサブウェイタイル(ベベル:TNコーポレーション)

(2-1)機能性を兼ね備えたハイスツールチェア

lapalmaのLEMチェア

このようにキッチンに関しては同じ要望でも、インテリアの好みによって大きく印象が変わります。またヌケ感も変わってきます。

設計事務所は比較的シンプルなデザインを好む建築家が多いですが、住むことを考えた時に、クライアントの個性をインテリアでしっかり発揮できたら、暮らすことにより楽しみが生まれるんじゃないかなぁって思います。

「キッチンは家具」であり住宅のインテリアにおいてはじゃないかなぁって思ってます。

CURIOUS design workersではさまざまなキッチンをデザインしています。それぞれ全く違う個性を発揮しているため、キッチンに興味のある方はHPのworksをご参考にしてください。

今回はここまで。
ありがとうございました。