見出し画像

知っているようで知らない「クミン」の世界|#44-45

「クミン」といえば、カレーを作るスパイスの3大要素と言っても過言ではないメインスパイス。
よく知っているようで知らないクミンを自由研究した結果を発表します。

\クミン解説回はこちらから聴けます/



基礎情報

・名称
英語クミン
ヒンディー語:ジーラ
タミル語:ジーラガム
日本語:馬芹(ウマゼリ)

・学名
Cuminum cyminum(クミニウム クミヌム)

・分類
「セリ科」「クミン属」一年草または二年草
※セリ科のスパイスやハーブ:コリアンダー(パクチー)、フェンネル、キャラウェイ、ディル、アニス、アジョワン、パセリ、セロリー、ミツバなど

・原産地
エジプトら辺(地中海沿岸東部、北アフリカ、アジア南西部)今でも大きく言うとその周辺地域で盛んに生産されている。インドとかトルコとかイランとか。離れた地域だとペルーとかも産地らしい。


・生育環境

クミンの生産国からして、緯度的には日本でも育てられそう。
高温すぎると成長が悪く、20~30℃が最適成長温度。夏が涼しい高冷地向き。

種子をまいてから1~2週間で発芽、1~2か月で花が付く、3~4か月で収穫できるそう。
花は小さくて白い(淡いピンク)草丈は30cmくらいなので、今年長男が自宅栽培する予定。


・香り

Wikipediaより引用

クミンは複合的な香りがしますよね。
いわゆるスパイシーな香りと、梅っぽい香り、体臭的な香りなど。

* 揮発成分:スパイスを普通に嗅いだ時の香り
* 精油成分:油に出ていく香り

揮発成分も精油成分の最大含有は「クミンアルデヒド」
このクミンアルデヒドがいわゆるスパイシーな香りの主役。

揮発成分には「ピネン」「リモネン」があり、「ピネン」は松ヤニの主成分で木の香り。これもきっとスパイスの香りの土台になっているはず。
「リモネン」は単体で嗅ぐとレモンみたいな香りで、これがクミンの梅っぽさに繋がってるのかもしれない。

精油成分で2番目に多く含まれる「テルピネン」
テルピネンの仲間たちは多くのスパイスに入っていて、レモンにも入ってるらしい。これもクミンの梅っぽい感じにつながるのかもしれない。


・クミンの歴史

世界で最も古い医学文献と呼ばれる、紀元前16世紀(紀元前1550年頃)の古代エジプトの医学書「エーベルス・パピルス」に記述が見つかっている。ざっくり5,500年前からクミンは使われていた!
血液を浄化して鎮静効果があるため、古代エジプトでは肺の疾患の治療に使われていた模様。

Wikipediaより引用

古代ギリシャ、古代ローマでは食べられていた記録が残っている。ローマ帝国の成立より前から西へ、ヨーロッパには伝わっていた。

インドには、紀元前6~3世紀にインドに持ち込まれて使われている。

クミンが大西洋を渡り、現代で、主にクミンを使うのはメキシコ・ブラジル。地中海周辺のヨーロッパ南部の国、スペインとポルトガルが持ち込んだため、中南米で使われている。
(イギリス、フランスが支配した北米ではあまり使われない。)

日本へは19世紀前半に日本に伝来したらしい。1800~1850年、つまり江戸時代末期。その後も、国内で生産されることはなく、すべて輸入に頼っている。


世界のクミン料理

・中南米(メキシコから南の国)
テクスメクス料理。肉料理、豆料理でよく使う。ケイジャン料理、カリブ料理でも。チリコンカン、タコス、アメリカ合衆国の南の方でもよく食べられる。

・アフリカ北部「マグレブ地方」(モロッコ、チュニジア、アルジェリア)
クスクス、タジン鍋、ハリッサ、が有名なエリア。クミンは主にミックススパイスとして使う。中東ほどクミンを際立たせたりはしないが、必ず食生活の中にいつもいる。シナモンとよく一緒に使われる。

・アフリカ南部
インドからの移民が多く。カレーを作る際にクミンが登場する。

・中東(エジプトから東にイスラム教国が続く。アフガニスタンまで)
羊肉を使ったケバブ、肉団子のコフタ、ひよこ豆とごまペーストのフムス、色んな料理にクミンがたくさん使われる。クミン天国。一つの料理に使うスパイスの種類が少ないので、クミンがよく分かる。

▼クミンを使ったエジプト料理が堪能できるお店はこちら


・南アジア(インド、パキスタン、ネパール、スリランカなど)
カレーを始め、野菜料理、いろんな場面で登場。やはりこのエリアで特徴的なのは、仕上げにテンパリングしたクミンをジャッとかける。単品としても、ミックススパイスとしても使う。

・中央アジア~モンゴル
羊肉をクミンを炒める料理が有名。羊とクミンで、何種類も料理がある。

・東南アジア
インド系、イスラム教徒系の人々が伝えたスパイス。
東南アジアの料理は、スパイス単品も使うが「カレーパウダー」と呼ばれるものをつかう。そこに必ずクミンがいる。タイのマッサマンカレー、マレーシア、ベトナム、ご当地カレーのどこにでもクミンはいるが、他国より使う量はぐっと減る。

クミンはエスニックを代表するスパイス

日本を極東として考えると、西から順に中南米、大西洋を渡ってアフリカ、中東、インドを含み南アジア、中国の中でも漢民族の土地ではないチベットやウィグル、モンゴルの地域、南は東南アジアまでで使われるクミン。

このエリアは、日本人が考える「エスニック料理」の国と同じなのでは?
中南米、アフリカ、中東、南アジア、東南アジアに当てはまらない場所、例えば、イタリア料理やフランス料理をエスニック料理とは言わない。中国は中華料理。アメリカ、オーストラリア、もエスニックとは言わない。

「クミン」はエスニックを代表するスパイスと言えるかもしれない。


経済学

クミンの輸出国
1位 インド(世界の生産量70%!)
2位 トルコ
3位 アラブ首長国連邦
4位 シリア
5位 アフガニスタン

2023年2月のトルコ、シリアが地震で大打撃を受けたのでクミンの値段は上がりそうな予感。

インドの生産量が凄いから影響なさそうに見えるものの、実はインドの生産量は前年比35%減!去年の時点でクミンの価格が高騰して前年比で1.5〜2倍になってる…!

これはなんでか、というと環境問題。
気候変動で水害が起きて、北のグジャラート州、ラジャスタン州とクミン生産で有名な2つが特に打撃を受け、国内の需要を満たすために輸出量を減らすことに。

で、その2つの州は水害による植物病が出ないように、殺菌剤と殺虫剤の使用量を増やしたところ、メイン取引先の中国に「基準値違反だ〜!」って言われて送り返されちゃった2022年。
これによってインドの中国への輸出は前年と比べて約三分の一以下になり、減薬したクミンじゃないと売れない。減産とダブルパンチで高騰したというわけ。


実験:クミンだけのカレーは美味しいのか?

実験用クミンカレーのレシピ

クミン(ホール) --- 小さじ1 
クミン(パウダー)--- 大さじ2

玉ねぎ --- 1個(300g)
生姜すりおろし --- 小さじ1
ニンニクすりおろし --- 小さじ1
トマトピューレ(6倍濃縮) --- 大さじ1

【 食べた感想 】
・梅の香りが際立つ(酸っぱいわけではない)。
・ホールで使うと梅感が際立つが、パウダーで使うと梅感はなくなる。
・クミンはかなり強めにテンパリングしてもいい。

オススメ書籍

クミン料理の発想と組み立て
スパイス調合家が提案する、個性ある使い方とレシピ
著者: 日沼 紀子


おたより募集中!

番組の感想や、あれってどうなってるの?など、なんでもお気軽にお寄せください。毎月抽選で5名様に番組ステッカーをお送りします。
📮 お便りフォーム


Podcast「カレー三兄弟のもぐもぐ自由研究」

カレーにまつわる事(食・歴史・カルチャー等)に対する気づきや疑問などを、楽しく研究して解決していく、という番組です。
[毎週水曜日 配信予定]


🕊 おもしろかった〜などの感想は「#カレー三兄弟」でtweetしてもらえれば、すぐに探しに行きます。

@curry3bros をタグ付けしてもOK!聴いてくれている人の感想が知りたいカレー三兄弟です。


[出演者]
長男|南場四呂右
次男|福岡裕介
三男|竹中直己(タケナカリー)
-------------------------
[制作]
ディレクター|ヨーコ・ビンダルー
編集・BGM制作|南場 四呂右
ジングル制作|老師
カバーアートデザイン|中屋 辰平
-------------------------
[提供]
CHANCE THE CURRY

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?