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【番外☕】「第5章プラトニックな日々」を書き終えました

あなたとの1年2ヶ月の日々を
あなたを失った日々がいとも簡単に追い越す
わたしは見ないふりをする
あの三日月の日から
いくつの三日月を空に
迎えたのだろう
あなたをなくしてから
今月で1年半
来月2日には
1年と7ヶ月になるみたいだよ

わたしはいつも考える
なんのためにこれを書くのかと
それはやっぱり
あなたと一生
共に生きていくため
たいせつなことはけっして忘れないから
書かなくてもだいじょうぶだと
人は言う
されどわたしは書くことで
その日々を自分のものにしていく
ありがとうそこに立ち会ってくださって
鷺 行美

「第5章 プラトニックな日々」を書き終えました

第32話から第40話までの全9話に及ぶ長い章となりました。ほんとうはもう1話入れようかとか迷いながら、ここで一旦切りますね。

物語を「編む」ということ

私は書くにあたって章立てを予め決めていません。だいたいこの時期にはこのことを書くということは頭にありますが、書き進めながら、抜け落ちていることはないか丹念に思い巡らせながら、1話1話内容を決めて作っております。当然、書きながら思い出したことを書き入れて、予定とは違う内容になることもあります。

1章の分量を、スタート時には「1500字~2000字くらい」を目安にして書き始めましたが、だんだんと2000字を超すようになり、今はだいたい「2000~2400字くらい」になっております。内容の区切りの良いところで、だいたいこの文字数になるように意識し、どうにか毎回そうなっています。

どの時期に書こうか迷う事柄というのがあり、頭を悩ませます。出来事は順を追っているのですが、彼の家族や親戚のこと、彼の身の上話に関する部分がそれです。なるべく、マリがその事実を知った時期に書くようにしていますが、読者にとってわかりやすいようにと考えると難しいです。(第4章と第5章の間、彼が4クール目の入院から帰ってくる前に、「彼のルーツ~生い立ち~挫折も含めたこれまでの人生」をひとまとめに書いてしまう案もありました。)

ノンフィクションであっても、これが物語を「編む」という作業なんだと今さら思い当たり、行き当たりばったりではドン詰まるなぁと恐れをなしております。甘く考えておりました。

マサちゃんの恋人のこと

この章で触れた彼の弟マサちゃんのこと、私は彼や彼の親戚を通して聞いたことと、遺品整理を通して触れただけなので、どんな人生だったかなどと語ることはできないのですが、ここでマサちゃんの元恋人のことに少し触れます。

遺品整理をさせてもらう中で、彼女からの手紙がたくさん出てきました。すべては読みませんが、ちらっと読ませてもらうと、彼女の人となりと二人のしあわせな月日が心に迫り、私は思わず彼女にお手紙を書きたくなりました。マサちゃんにとってとても大切な人であったと感じたので、どんな理由でお別れしたにせよ、彼女にとってもこの日々は大切であたたかい思い出であると信じて。

手紙には、マサちゃんが亡くなったこと、それに次いでマサちゃんの兄が亡くなったこと、私はマサちゃんの兄の恋人であること、一家の遺品整理をしていて、もう10年も前のあなたの手紙を見つけたこと、それを見てマサちゃんの訃報をお伝えしたほうがいいような気がしたことなどを書きました。先方にはもしかするとご迷惑かもしれないけれど、何も返事がなくてもそれでよい、手紙を出すことが自分の役割だという気がしたのです。

手紙を出した数日後に、彼女のお母さんから私の携帯に電話がありました。マサちゃんの訃報に驚いたこと、娘も涙ぐんだこと、そして懐かしい思い出のことをお話しくださいました。母娘はマサちゃんに対してあたたかい気持ちを持ってくれていることが、お電話をいただけたことでも伝わってきました。

映画「コーヒーが冷めないうちに」

私は長いこと、彼との思い出を綴ることに意識を全振りしているけれど、そろそろ新しいことを入れないと精神が腐ってくるな、と感じ始めていたこの頃。夫と昨日、なんとなく観始めた2018年の映画「コーヒーが冷めないうちに」。そこにはなんと、亡くなった人に執着して今を生きられない、死んだように生きている人が映されていたのです。

(※ネタバレご注意)
そのうちの一人(と思われた)、幽霊になっている主人公の母親は、先立った夫に会いに過去に行ったまま、長居しすぎて戻れなくなったのだが、それを母親は望んでいたのではないか、と思われていました。私も、そりゃあ愛する人に先立たれたら当然それを望むよなと、痛々しいほどにその席にずっと座り続ける幽霊の彼女に自分を重ねて観ていました。ところが最後に、彼女が幽霊になった本当の理由が解き明かされるのですが、彼女は夫に会うために過去に行ったのではなく、遺してきた一人娘のことを案じて未来に行ったのでした。

「お母さん、私といて楽しかった?」
「私を生んでよかった?」
という娘からの問いかけも私の胸に迫り、ほんとうにいろいろと考えさせられました。

この映画は4つのお話から成り立っていますが、認知症の妻とその夫を演じる薬師丸ひろ子さんと松重豊さんの演技がほんとうに圧巻でした。数年前に一人で観た夫は、この夫婦の物語しか覚えていないほどでした。今回観たのも、この夫婦の場面だけを私にちょっと観せたかったのがきっかけでした。

このタイミングでこの映画を観せてくるのか、夫よ。驚かないけどね。たぶん、これが夫の役割なんでしょう。

※ヘッダー画像はAKISENさんの「クリームソーダ」のイラストを使わせていただきました。かわいくって元気が出ます🍒ありがとうございます*


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