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愛読書で自己紹介 行人 四季冬 転校生2

 本はあれも読まねばならぬこれも読まねばならぬと思ってはいるものの、10年以上前にブックオフなどで買った大量の本が1度も読まずに部屋のどこに埋まっています。
今じゃほぼお馴染みの作家の本しか読まずたまに変わったのを読むと15分程度で眠くなり。
今年こそは色々読みたいと10年前から毎年思ってはいるのですが…。

 閑話休題まず愛読書としてあげねばならぬ夏目漱石なのですが、有名な「こころ」、未完の大作「明暗」でもなくあえて「行人」(こうじん)を選びたいとおもいます。
主人公の二郎、学者で研究肌の兄の一郎、そしてその嫂(あによめ)直(なお)が話の中心となるのですがこの嫂が中々魅力的で。
兄の前では無口で畏まってるような感じなのですが弟の二郎とは前から知り合いだったこともありかなり蓮葉な態度をとります。
兄に暴力を振るわれた時も平然と微笑しているような強さも持った女性です。
そしてこの兄は到頭嫂が弟に惚れているのではないかと疑い弟に直の貞操を試すように頼み…。
しかしこの兄が疑っているのは嫂ばかりではありません。
この世のすべてを疑っているのです。
到頭気がおかしくなった兄は家族の頼みで親友のHさんと旅行に出掛けるのですが…。
自分自身過剰な自意識に苦しめられた時期があったので漱石の小説に出てくる神経質なインテリたちに共感してました。
人間の不幸の大部分は過剰な自意識からくるんだなぁと常々思っております。
この小説に出てくる嫂は漱石が実際に親しくして早世した兄の妻登世をモデルにしていると言われています。
実際に三角関係にあったかどうかはともかく小説の二郎は兄を気遣って実家暮らしだったのを下宿に引っ越したり、さりげなくお見合い話に乗ったりしてます。
しかし心の底では嫂に惚れているのではないかと思ってしまいます。
それほど嫂が魅力的に書かれていますので。
嫂は無論兄を愛しているには違いないのですが決定的に気が合わず、気安く喋れる二郎をからかったりしてそれで疑われたって構うもんかというな態度に見えます。
或いは今でいう小悪魔のような女で二郎をさりげなく惚れさせるように仕向けておいて不倫(当時は姦通罪がありました)したって構わない。切った張ったのドラマチックな展開をむしろ望んでいるかのように見えます。
「二郎さんこうなったらあの海へ二人で飛び込んじゃいましょうか」なんてことを平然として語りそうな女性です。
二郎はそれを察知し距離を置こうとしているかのようにみえます。
恐れる男と恐れない女。そんな風にも読める小説だとおもいます。


 2冊目は森博嗣の「四季 冬」です。
森博嗣のデビュー作傑作ミステリー「すべてはFになる」から続く話で天才プログラマー真賀田四季に焦点が当てられた四部作春夏秋冬の冬です。
私はアニメ「すべてはFになる」がきっかけでこのシリーズを読みはじめたのですが「四季 冬」は別格です。
圧倒的な天才性、おそらく日本の小説の登場人物の中で最大級の天才なのではないかとおもっています。
数学的、哲学的思索が多く私にとってまったく理解不能な内容なのですがだからこそ魅力的に感じます。
また主人公の犀川創平(国立N大学建築学科助教授、工学博士)は真賀田四季を理解しうるほどの圧倒的な頭脳の持ち主なのですが、自分の興味のないことのはまったくのポンコツぶりで恩師の娘が好意を持ってアプローチしてもまったく気づかなかったり、的はずれなジョークを言ったりとても人間味のある魅力的なキャラクターに描かれております。
シリーズの原点「すべてはFになる」は1996年に発表されたんですがコンピューターの進歩を見事に予言していて驚かされます。
同じ著者で「木嶋先生の静かな世界」という自伝的?な本もあるのですがこちらも我々の伺い知ることのできない研究者の世界を垣間見ることができて価値観が揺さぶられます。
研究に没頭する大学院生の青春が瑞々しく描かれています。(恋愛要素もあります)

3冊目は森真沙子の「真夜中の時間割ー転校生2ー」角川ホラー文庫です。
中学生の頃角川ホラー文庫(リングで有名)が出たばかりでたしかコンビニで売ってて買いました。
それから何年か置きにふとした拍子でこの本を見つけてその度に読んでいるのでまさしく愛読書であります。
前作転校生では女子高生が主人公だったのですが今度は新米女教師が主役で様々な事件に巻き込まれます。
やはり学園モノのホラーは面白く瑞々しい文体でリアルな学校生活が描かれています。
桜咲く弓道場で起きた惨劇。
パソコン通信にのめり込む少女の運命。
老美術教師の悲しい過去。
夜中の校舎で見た謎の人影。
女性音楽教師の抱えた悲劇の真相。
修学旅行の夜会で話された怪談。
そして最後の授業。
などが主な内容です。
第1話、美少年と新米女教師の淡い恋?みたいな描写もあってきゅんとさせられます。


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