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ツンデレカップルのプロポーズ


 会社が終わったあと女は男と待ち合わせした公園に来て夜桜を眺めていた。
その瞳からはとめどなく涙が流れ落ちている。
他には誰もいない。


しばらくすると男が遅れてやって来た。
「よっ待たせたな。…ん?おめ~また仕事でミスって泣いてんのかよ」
「うるさいわね。花粉症で涙が止まらないだけよ」
「嘘つけ。おめ~の汚ねえ泣き顔を見るとこっちまで泣きたくなるんだよ」
ふたりは幼稚園のころからの幼なじみである。
「だから違うって言ってるでしょ。勝手に決めつけないで」
「そうかい。ホレ、おめ~にこれやるよ」
そう言って男は指輪を差し出した。
「え?何よこれ?」
「指輪だよ。やっすいおもちゃにしようと思ったんだけどそれじゃおめ~ネットで悪口書きそうだし宝石店で一番安いの買ってきたぞ」
「何それ?まさかプロポーズじゃないでしょうね?」
「プロポーズなんて大層なもんじゃねえけどよ。おめ~昔からオレの傍にいるし、これからもずっとオレの傍で飯炊きでもしてりゃいいじゃん。おめ~を食わせるぐれ~の収入はあるしよ」
それを聞いて女は吹き出した。
「あはははは。あんたバカだねえ。一体どこの世にそんなプロポーズするヤツがいるのよ。あんたの安月給なんかたかが知れてるわ。むしろ私があんたを食わせてやるから専業主夫にでもなりなさいよ」
「おめ~本気なのか?」
「ええそうよ。せっかくだしその指輪は貰ってくけどね。あとで『おたからや』にでも売っ払おうかな。あんたはもっと金貯めていい指輪買いなさい!」
「くっそ~!○×△☆♯♭●□▲★※!」
「ははは。男ってこういう時、言語中枢麻痺してるから言い返せないでしょ!私にプロポーズするんだったらもっと立派な男になって出直してきなさい」
「このアマ~!ますます惚れちまうじゃねえか」
「バカ!」
「ああバカだよオレは。おめ~みて~なおてんばに惚れる物好きはオレぐれ~なもんだ」
「あんたバカだけど女を見る目だけはあるのね」
「あったりめ~だろ。だからオレと結婚してくれ…な」
「う~ん…仕方ないわね~。あんたが立派な男になるまで待ってたらおばあちゃんになりそうだし」
「そ、それじゃあ?」
「いいわよ結婚しても。ただし私の言う10ヶ条の掟は守ってもらいますからね。」
「へいへい」
「ホントは嫌だけど…」
「オレもホントは嫌なんだけどね…」
「あと指輪はもっと高いやつね」
「ちっ……分かったよ」
女はペロッと舌を出した。


※ついつい工藤新一よりになってしまいました💧

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